第20話 女勇者レーヴ
弓道場から出て、アイナを背中に乗せる。異世界ではこれが基本的な2人の姿だった。
姫様を疲れさせたくないし、同時に筋トレにもなるという思いから、こうしていつもおんぶしていたのだ。あの時は姫様も若かったので何にも思わなかったが、今はというと胸の柔らかな暴力に晒されているので、妙な気持ちになった。
女として意識しているという自覚が芽生えてしまい、恥ずかしいのだ。
「・・・はぁ。これじゃ何も異世界と変わらないな・・・。」幸助は呟く。
「変わらなくていいじゃない。私はこのままがいいわ。」
「それならいいけど・・・。なんか、完全に休まる事って、無いんだな。次は魔王軍の残党がこの世界にやってきているというのも、変な話だ。」
「そりゃあ、コースケに恨みを持つ魔族は腐る程いるでしょ。」
「・・・で、聞いていいか?姫様。」
「アイナでいいわよ。何?」
「セトラが小春の面倒を見て、俺が家路に着くように強制された。普段なら何も言わないのに…。何か、隠してないか?」
「・・・・・・ひゅーひゅー・・・。」
アイナは下手な口笛を吹き始めた。あっ、こいつ絶対何か隠してる。
「・・・それに気になっていたんだ。セトラがやって来た次の日にアイナはやってきた。この順番に違和感を覚えていた。アイナの性格上、真っ先にこちらへやってくる筈だ。だが、そうしなかった。理由は何だ?」
「それは別に嘘でも何でもないわよ。ただ単に、私が分別のつく大人になったからこそ、不老に近いセトラを実験的に送り込んだだけ。え、何を疑っているのよ?」
「異世界に転移出来ると知れば、まず黙っていない人物に一人心当たりがある。今までの法則を考えるとしたら、異世界からの転移は一日に一人。本来、俺を座標に転移すればいいのだとしたら、時間関係なく一気にこの場に現れるという事も出来た筈。だから、俺の仮説では、この世界の一日あたり、一人しか来れないって予想だ。」
「・・・・・・。」
「と、考えるとだ。今日の不自然なお前達2人の様子を見るに、今日誰かやってくるんじゃないか、と思うんだ。それも、この順番も予め決められていて、予定通りになっている。違うか?」
「・・・・・・黙秘します。」
「それ言ってるのと同じだからな。」
「・・・・・・しょうがないでしょ。だって、魔王のいない世界で、あの異世界で最強なのは、あいつなんだから・・・。」
「・・・・・・あー、成程ね。で、どうなんだ?今も俺を殺したがっているのか?」
「分からないわ。修行して更に静かになっていたもの。」
「うっわ会いたくねぇ・・・・・・・・・・。」
幸助は、前日から嫌な予測を立てていた。
幸助が完全にお役目を奪ってしまった、かつてのライバルである女勇者・レーヴが、やって来るのではないかというものだ。
幸助は、彼女と会うのだけは避けたかった。単純に怖いのだ。
何故かと言えば、要するに、はっちゃめちゃにクソ強いのだ。正直な所、勇者なだけあって、普通に魔王と戦っても勝っていたんじゃないかと思える程、ヤバいのだ。
繰り出す技がどれも規格外であり、まともに喰らえば身体が四散する威力をもっている。
彼女は人々の祈りや加護によって強化されている選ばれし人間。本来は完全な英雄となる筈だった存在なのだ。
それが、3年間も山籠もりで修行しているのだ。今頃どんな化物になっているのか分からない。
「・・・コースケ。もしこの戦いが終わったら、結婚しようね・・・。」
「おう生きて帰ってこれたらな・・・って、妙なフラグ立てんじゃねぇ・・・。本当に死ぬかもしれないじゃん・・・。」
「冗談よ。流石にあの子もそこまではしないとは思うわ。ただ、言いたい事は山ほどあるでしょうね。まぁこの件に関しては、コースケが100:0で悪いんだからちゃんと言う事聞いてあげなさいよ。じゃないとまた酷い頭痛に悩まされる事になるわよ。」
「・・・・・・はぁ、嫌だなぁ・・・。」
足取りが重くなる。きっついマジで。帰りたい・・・帰ってるんだけど、嫌な予感がする。
絶対、昨日の伊藤達みたいに、家の前で待ち伏せしてるパターンじゃん。
ていうか、それ以外考えられないじゃん・・・。
マジでイベント戦闘であってくれ。このままじゃ多分負ける。というか、ゲームでよくある負けイベントでいいから生きて帰らせてくれ。もう、早く終わってくれ。
―――――そうして、嫌な予感はピッタリ的中した。
家の前に、勇者姿の時と全く同じ彼女がいた。遠くから見たらコスプレしているようにしか見えないが、近くで見たら所々が傷だらけで、ボロくなっている。沢山の実践を踏んできた証拠が装備に現れていた。
希望の象徴だけあって、扇情的でありながら機能美に優れた鎧だ。
だが、違和感があった。とても3年の月日が経っているとは思えない容姿だった。
まるで、最後に会った時と全く変化が見当たらない。
「・・・は?3年経っている筈だろ・・・?今17歳の筈だろ?」幸助は小声で言う。
「・・・コースケ。それはレディに対してあまりにも失礼じゃないかしら・・・。」
「いや、だってアイナはこんなにも色々と成長しているのに!!あいつ・・・。」
「・・・いや、そういう人もいるから。早熟だったんでしょ。」
「・・・・・・これは、全面的に俺が悪いな。」
「そうね、デリカシーが無い。誰もが私みたいに巨乳になれるって訳でもないのよ。」
「俺の発言より今の発言の方がよっぽどタチ悪いぞ。」
「―――――――全部、聞こえてます。」
ピシャリと女勇者レーヴは突っ込んだ。周りに緊張が走る。
「・・・・・・なんか、ごめんな。貧乳とか言って。」幸助はすぐに謝った。
「そんな事は聞こえてきませんでしたが?」レーヴは青筋を立てる。
「・・・いや、正直、他にも謝りたい事はある。でも、そんなのじゃお前の心は収まらないよな。」
「分かっているじゃないですか。」
女勇者レーヴは、不敵に笑った。人々の祈りが生み出した戦闘狂の本性が現れる。
「でも、ここは俺の家だ。家族も住んでいる。だから」
「《テレポート》。」
―――――レーヴがそう呟くと、一瞬で周りの景色が変わった。
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