第18話 一緒にお風呂♡
「それじゃあ私は部屋に戻るわねー。後は皆で積もる話もあるみたいだし、失礼するわ。」
幸助母が食器を洗い終えると、リビングから去った。相変わらずアイナは幸助から離れなかった。
「―――――えー、次のニュースです。札幌市で現在、原因不明の病が発生しております。」
国営放送の報道番組で、興味深いニュースが流れてきた。
「・・・昨日だけで意識不明になった人が31人と、相次いでこのような事例が報告されています。町の人は――――――」
「え、何このニュース。」
幸助は驚いた。あの札幌市で妙な事が起きるものだなと思った。
「札幌か。あれ、幸助君は知らないんだっけ、隕石の話。」
小春がソファの隣に座りながら言う。
「知らない。何かあったの?」
「つい先日の事なんだけど、札幌上空に火球が落ちてきたの。で、地面に激突したみたいな大きい音があったんだけど、特に衝撃波とかも発生しなかったんだって。それで、捜索隊が派遣されたけど、何も見つからなかったって。」
「そんな事があったんだ。」
「そうそう。だから何かあるとは思ったけど、大変な事になってるね。」
「・・・まぁ熱中症とかもあるし、考えすぎか。」
幸助は、嫌な推測をした。
もしかすると、魔王軍の奴らがこの事態を引き起こしている可能性がある、と。
可能性は十分に考えられた。幸助がこの世界に帰って来てまもなく、ワイバーンが発生している。これは龍の最上位に君臨する魔王軍幹部・宵闇龍ゼノンによる仕業としか考えられないのだ。
ならば、他の生き残りの魔王軍の奴らが、札幌市を蝕み始めている可能性はかなり高い。
火球というのも怪しい。本当は炎を纏った龍の可能性もある。それなら全て説明がついてしまう。
実害が出始めている。もしそうなら、最悪だ。
「ねぇコースケー、一緒にお風呂入ろー?」
「それだけはやだ。」
アイナの約束を断った瞬間、幸助の頭に激痛が走った。
「・・・ぐっ!!いってぇ・・・。」
「ごめんコースケ!!大丈夫?痛かったよね?お風呂行こ?」
「・・・あーもう、分かった分かった・・・一緒に入ろう・・・。」
「いやいや、それは普通に許さねぇよ????」
お風呂場に向かう2人の前に、セトラが立ちはだかった。
「おいアイナ。年齢を考えろ。私も昔は、まだお前が子供だったから同伴を許した。だが、お前はもう大人だろう。コースケの力が無くても、お風呂にくらい入れる筈だ。」
「ハッ!!舐めないでよね!!私だって最近ようやく自分でパンティー履けるくらいには成長したわよ!!凄いでしょッ!!!!」
「何も凄くねーよ当たり前だし当然の事だろうがよ!!それによ、いい加減その魔術、解いてやれよ。」
「絶対やだ!!じゃないと絶対にコースケは言う事聞かないもん!!」
「16歳同士が風呂に入る行為が健全じゃねーだろうが。お互い性欲もあるんだし、一線越えかねないぞ。」
「それの何がいけないの?」
「あー、駄目だー、小春。話通じねぇ・・・。倫理観も壊滅してるわ・・・。」
セトラが口論に負けた。というより、勝負にすらなっていなかった。
まるで話が通じないのだ。セトラは、疲れたのか机に突っ伏した。
「早く早く!!あ、パンティーは創れるわよね?じゃあ一緒に入るわよ!!」
「・・・もう、分かったよ・・・。はいはい・・・。」
観念したように、幸助はアイナを連れて、お風呂場へと消えていった。
「・・・あの人は一体、何者なんです?」
小春はセトラに訊いた。余りに突然の事過ぎて、何が何だか分からなかったからだ。
「ん?言わなかったっけ?あいつがアンナ姫。コースケを改造しまくった張本人。」
「はぁ!?それ、どういう事ですか!?」
「んで、異世界転移を実現した稀代の天才。最後のアカシクの民・・・って言っても分かんねぇか。言うなれば、姫様でありながらコースケに改造を施したマッドサイエンティストだな。」
「・・・あの人が・・・。」
にわかには信じがたかった。まるで幼年期のような態度と性格だ。既定の枠に当てはめて考えるのが馬鹿らしくなる破天荒っぷりが狂気に満ちていて、今までに見た事のない人種過ぎた。
多分、あの人の近くにいると心が壊れるだろうな、と思ってしまった。
「まぁ見ての通り、コースケの事が大好きで、依存しているよ。だから、コースケに様々な束縛がある。その一つが、言う事を聞かないと頭痛を起こす魔術。」
「なっ・・・!!」
「さっき痛がってたでしょ?あれはそういう事。」
「・・・それはあまりにも、幸助君が可哀想なんじゃ・・・。」
「ほら、コースケもコースケで危ない所あるでしょ?後先考えず行動起こしたり・・・まぁ今はその部分もなりを潜めているけど、どっちも危ういんだよ。だから、完全に共依存だね、あれは。」
「・・・そうなんだ・・・。」
「コースケがこの世界に帰った時、あの姫様何したと思う?」
「・・・いや、分からないけど・・・。」
「自殺しようとしたんだ。コースケがこっちの世界でやった方法と同じように。」
「・・・・・・それは、結構、凄いですね・・・。」
「まぁ、あいつらは病気だよ。私から見ても常人じゃない。パズルのピースがうまくハマり過ぎていて、抜け出せないんだ。まぁ、お互いもう大人だし、そろそろ落ち着いてくると思うけど・・・。」
その時、お風呂場から悲鳴が聞こえてきた。何事かと思い立ち上がるが、セトラが目の前に立ち、制止する。
「あれは多分、コースケがまた言う事を聞かなかっただけだ。風呂に入るといっつもアンナ姫は無理難題を頼むからな。それで頭痛が起きているだけ。」
「無理難題・・・?」
「身体を隅々まで洗いなさいとか、秘部を触りなさい、とか。コースケも性欲が無い訳じゃないから地獄だろうね。だって、あんな可愛い子が迫ってくるなんて、普通は絶対嬉しい筈でしょ?」
ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
断末魔の叫び声が聞こえた。これ何も知らない状態だと絶対勘違いするやつだ。
可哀想の域を越えて、もはや特殊なプレイの一種なんじゃないかと思えてきた。
声が大き過ぎて、幸助のお母さんに聞こえていないか不安になった程だ。
―――――そして、5分後。
アイナ姫は何事も無かったかのようにお風呂から上がった。ジャージ姿でリビングに戻ってくる、その後ろから、滅茶苦茶にやつれた幸助が付いてくる。ゆっくりと肩を落としながら、ふらふらと千鳥足でアイナの後ろをついてきた。
「ふぅ~、城のお風呂に比べれば超ちっちゃいけど、密着する分には最高だったわ!ねぇコ~~~~~スケ♪」
「・・・・・・うん、そうだなぁ・・・・・・。」
「大丈夫!?」
小春が幸助の元へ駆け寄った。
「大丈夫、このくらいへっちゃら。慣れてる慣れてる。」
「ジムで追い込んだ後より余程こたえてるじゃない・・・。」
「・・・あっちではこれが毎日だった。全く持って問題ない。・・・よし、治った。」
幸助は震えながら立ち上がった。だが、すぐにふらついて、壁にもたれかかった。
「あ、そういえば貴方が小春ちゃんね。幸助から聞いてたわ。」
頭のおかしい姫様が、小春に話しかけた。
「そうですけど、でも、ちょっとこれはやり過ぎです!幸助君が可哀想です!!」
「・・・あらあら、そうかしら?」
「貴方が本当に彼の事を大切に思うのなら、彼を苦しめちゃ駄目でしょ!!」
「大丈夫、今日だけよ、小春ちゃん。そこまで分別のつかない女じゃなくってよ。」
急に、話し方が凛々しくなった。先程までバブバブ言ってたとは思えない、理知的な風格が生まれた。一気に、姫様としての威厳が増した。
「いや、ちょっとお仕置きしたかっただけなのよ。コースケったら酷いんだから。3年越しのちょっとした復讐をしたかっただけなのよ。」
「・・・え、そうなんですか?」
「だってコースケったら、何も言わずに私を置いて帰っていったのよ?で、気付いた時にはもう遅くて、全てが終わっていた。何年も一緒に過ごして、苦楽を共にしてきた筈なのに、別れの言葉一つなかった。色々考えたわ、あれだけ無理させてたし、本当は、嫌われてたんじゃないかとか。だから、今日に至るまでのこの3年間は、本当に地獄だった。
だから、さっきのでスッキリした。私と同じだけの苦しみは与えたつもりだから、もう変な事はしないわ。まぁ、まだムカつくから魔術を解くつもりは無いけど。」
「・・・解くつもり無いなら絶対今後もやるでしょ。」
「あんまりおちょくるのはやめとくわ。大丈夫、本当よ?私はほら、自分を客観的に見ても精神的に未熟で欲しがりさんだから、こらえきれずに赤ちゃんになったりはすると思うけど安心して。もういきなり性的な行為を強要したりはしないから。」
「冷静な顔してよくそんな事が言えますね。客観的に分かるなら自制していく方向にもっていって下さいよ。」
「という訳で、コースケ、命令よ。今から5分後に私をお姫様だっこした後に部屋まで案内して、私と一緒に寝るのよ。分かった?」
幸助は、不思議そうな表情を浮かべる。
「5分後?今すぐじゃなくてか?」
「貴方さっき寝る前にマルチビタミンだかを飲むって言ってたでしょ。ちゃんと寝る前の歯磨きも諸々済ませてから、だっこして頂戴。私も歯磨きする時間が欲しいの。」
「・・・え、歯磨き一人で出来るようになったのかアイナ!!成長したな!!」
幸助が大声で自分の事のように喜んでいた。
「パンツも自分で履けるし、歯磨きも出来るようになった!!3年間でとんでもなく成長したなぁ!!俺、嬉しいよ!!!!」幸助は大粒の涙を流した。感涙している。
「ふふっ、当然よ。さ、ビタミン摂ってらっしゃい。」
「分かった!!次は自分の力でブラ着けられるようになるまで特訓だな!!」
「あらあら、話してたら5分過ぎちゃうわよ、急ぎましょ。」
「よっしゃ!!急ぐぜ!!」
なんだかんだ、長年一緒にいるだけあって、この2人はとても仲が良かった。
――――――と同時に、やっぱりこいつら馬鹿なんじゃないかと、小春は思うのであった。
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