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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
序章
13/125

第13話 乙女達の談合 その2 & 札幌事変


 幸助の部屋の窓を開け、ベランダに出る。スリッパが2つあったのでそれを履いて、2人は夜風に当たった。


 「察しの通り、私は人間じゃないわ。今日貴方が遭った竜、ワイバーンの上位存在みたいなものよ。人の姿に化けて現れる幻獣。それが私の正体。コースケは龍人なんて言い方してくれているけど、本質は龍そのものなのよ。」


 そう言って、セトラはジャージを脱いで、背中から翼を生やした。腕や背中にかけて、表皮に鱗のような線が規則的に入っている。決して刺青やメイクでは実現出来ないリアルさがあった。セトラは続ける。


 「コースケは《ベータ》って世界で、魔王を倒した英雄なのよ。でも、彼が魔王を倒す事をよしとする人間はほんの一部だったわ。あの世界の人々は、勇者が魔王を倒すって信じていたからね。だから、コースケは自分が魔王を倒したのにも関わらず、その勇者が成し遂げたって事にした。この真実を知っている者は一部の関係者のみ。務めを果たしたコースケは、この世界に帰還した、って感じよね、説明すると。」

 「・・・幸助君なら、やりそうですね。」

 「あら、意外と話分かるのね。」

 「だって彼は、そういう人間ですから。」

 「だから残酷な事実を教えてあげる。彼はもう人間じゃないわ。このままじゃ、彼に人並みの幸せは得られない。」

 「・・・どういう事ですか?」

 「彼は、無理し過ぎたの。度重なる身体強化、怪我。魔王を倒す為には手段を選ばなかった。だから、結果、彼は子供を作れなくなっちゃった。」

 「・・・・・・・え?」

 「まぁ性行為は出来るでしょうけど、それだけよ。子孫を残す機能が、もうあの身体には残っていない。それでも、彼と一緒にいたいって思えるかしら?」


 小春は、少し茫然とした。

 何を言っているのか分からなかったのだ。

 それは、犠牲にしては大き過ぎる気がして、恐ろしかったのだ。


 「・・・・・・それは・・・。」

 小春は、言葉が出ない。

 「それでも彼と一緒にいる覚悟を持っている女の子が、《ベータ》世界には結構いるのよ。」

 「・・・!!」

 「―――――だから酷な事を言うけど、もし人並みに結婚して、子供を産んで・・・って幸せに恵まれたいなら、手を引いてもらえるかしら?」


 ――――小春は、何故セトラがこうして話しかけてきたのか、ようやく理解した。

 これは覚悟を試しているのだ。何故なら、彼女は、彼を《ベータ》世界に連れて帰りたい。

 だから、こうして、覚悟を試すような事を言ってきた。邪魔な私の想いを絶つ為に。


 小春は、勇気を振り絞る。会えなくなるのはごめんだ。

 かつて中学時代に助けてくれたあの人への想いは、今となっても変わる事は無い。


 「・・・それでも、いいですよ。彼は私の恩人なので、何があろうと変わりません。」

 「・・・ふふっ。それならいいのよ。結局、選ぶのは彼なんだから。」


 こうして、幸助の知らないところで、女同士の争いも幕を上げた。


============================================


 ――――――これは幸助がまだ、帰ってくる前の話。場所は北海道・札幌。

 夜空に閃光が走った。それは一瞬の煌めきであった。燃え尽きながら堕ちる小惑星。

 それが山奥に墜落する。喧噪の走る夜に、厄災の轟音が鳴り響いた。

 何事かと人々は恐怖する。宇宙から飛来した火球がまさか消滅せずに着陸するなんて思わないだろう。

 ただ、その日は轟音が鳴っただけで終わる。

 人々はまた平穏な日常に戻る。あれは何だったのだ、と心にしこりを残しながら、当たり前の日常は続く。

 この出来事はニュースにもなった。観測台が映像を捉えており、その火球の大きさ・轟音が物議を醸した。本来なら、本当に墜落したなら衝撃波が発生し周りを巻き込んだ大災害になっていた可能性もあった。だが、それが起きていないのに轟音が鳴り響いたという矛盾が人々の様々な憶測を読んだ。


 札幌には次々と報道陣が現れた。町の人にインタビューをしたり、市長のちょっとした会見にこの質問を投げかけ、ニュース番組の話題として消費する為にこの報道を盛り上げた。そうして、世間を煽り、コメンテーターに関係の無いオカルトの専門家を呼ぶ事で視聴者に突っ込まれる構図を作るなど、色んな方面で話題を作る事で、視聴率を荒稼ぎしていった。

 こうして、これは瞬く間に全国が知るニュースとなった。

 やがて、騒ぎが大きくなった事で国も動く事になり、公的な機関が緊急で編成した、学者含む捜索隊も派遣された。

 だが、驚く事に、得られるモノは何も無かった。墜落したような跡も見つからず、全てが原因不明と片付ける他の無い、不甲斐なくもあり不気味でもある結果になった。


 一部の人々はこれに対して、「世間に公表できない秘密でもあったんだろ。」と、懐疑的な目を向けた。陰謀論に結び付け、国と宇宙人との関係が隠せなくなった!などと、支離滅裂な憶測がネットに広まり、信じやすい人たちから汚染されていった。


 そうして、このニュースはあっという間に消費され尽くし、忘れ去られていった。


 お祭り騒ぎに似た、狂騒。ただ一瞬の出来事であった。


 だが、人々は知らない。

 その裏で、矛盾なる異邦者が悪夢をまき散らしている事に。

 悪意を持った魔眼が、少しずつだが、札幌を狂気に塗り替えていった。


ありがとうございます!

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