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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
序章
12/125

第12話 乙女達の談合 その1


 「え―――――っと、申し訳にくいんだけど・・・今日泊める子が、一人増えました。」


 ・・・何ていえばいいのか分からなかったから、こう説明するしかないのだった。

 ワイバーンの事を言ってもお母さんは信じないだろうし、小春にも説明がとにかく難しい。いきなり異世界で知り合った相棒です!なんて言っても、誰も信じて聞かないだろう・・・。


 「・・・髪、赤いわね・・・youtuberの人?」


 母親から想定外のツッコミと、意図していなかった事を指摘された。

 そうだ。異世界では色んな髪の色の人がいても当たり前として受け入れられていたが、日本ではまだ東京とか都会でしか見ないような眼と髪の色だった。失念、うっかりしていた。

 紅い眼も髪も《変身》で変えてもらうように言うべきだった・・・。


 「もうそれでいいよ、お母さん・・・。」

 「今日久しぶりの学校だったのに、なんか色々起きてるわね。本当事件が絶えないわねぇ。私の心臓持つかしら。・・・まぁ全然いいけど。」

 「許してくれるなら助かります。」


 それまで横で黙っていたセトラが、口を開いた。


 「本当にありがとうございます。幸助君に先程助けていただきまして、本当に感謝してもしきれません。私、セトラと言います。少しの間、お世話になります。」


 こくりと、頭を下げたのだった。あれこんな奴だったっけ・・・?と幸助は思った。


 「あら、いいのよぉ!!可愛い子が2人もウチに泊るなんて嬉しいわよ~!!ご飯食べる?」

 「いえ、お気に召さらず。」

 「いいのよ気にしなくて。」

 「・・・それでは、頂きます。」


 うわぁ日本人特有の駆け引きも完璧だぁ・・・。一回断っておく事で遠慮しているように見せる事で、その人の奥ゆかしさを演出する感じ。いつもなら、「おぉ、あざーっす!」位のテンションとノリなのに・・・。あれこいつ本当にあのセトラなのか?


 そして、セトラが黙って食べ始めた所で、小春に耳打ちされた。


 「え何あの人!?あんな奇麗な人、この町にいた!?」

 幸助も小声で返す。

 「大丈夫、俺の仲間。」

 「事情を説明してよ!もう今日色んな事が起き過ぎて訳わかんないから!!」

 「後で説明する。」


 そうやってコソコソ話をしていると、それを見た幸助母がニコニコしながら言った。


 「あんた達、仲良いわね~。」


 「べ、別にそんなんじゃないから!!」

 「べ、別にそんなんじゃないです!!」

 2人同時に言った。



 ・・・・・・という訳で、俺の部屋に女の子2人が泊まる事になった。

 何でだ。幸助は、理解不能だった。寝れる訳ないじゃん。無理だって!


 「え~、いいじゃん、あっちの世界ではよく一緒に寝てたし~!一緒の布団で寝よ?」

 「いいから、しっ。小春が起きるだろ・・・。」

 「あぁ・・・この傷、懐かしいわぁ・・・。私のつけた傷が、こんなにも深く入って・・・。」

 「ひゅえっ。乳首触んなバカ!!」


 そう言って、セトラが布団で寝ている幸助の服を下げて、胸に残る傷を撫でた。手つきがやけにいやらしい。


 「・・・ちょやめろって。マジで小春が起きる。」


 今幸助の部屋には、布団が3つ並んでいた。上から見て左に小春、真ん中に幸助、右にセトラが横になっている状態だ。小春は色々と疲れて先に寝てしまったので、起きている2人がこそこそ話していた。


 「今日はいっぱい喋りましょ。いっぱい話したい事があるの。」

 「お前、やっぱり性格変わってねぇか・・・?」

 「3年ぶりのコースケだもん。本当に嬉しいのよ?もう2度と会えないと思ったから。」

 「・・・そりゃ本当に、申し訳ない事をしたと思っている。今まで出会った人にも、迷惑を掛けたよ。どうなんだ、あっちの世界は。3年で何か変わったりした?」

 「まぁ、いざ話そうと思ったら、何処から話せばいいか分からないわね。」


 セトラが寝そべって、何かを思い出そうとするように天井を見上げながら呟く。

 子供の頃に、天井に貼ったプラネタリウムのシールが僅かに光る。


 「・・・んーじゃ、あの女勇者はどうなった?俺が魔王倒した勲章、全部かっさらってる筈だろ?実は、ちょっとだけ悪い事したな、と思っているんだ。」

 「でも暫くして、あの女勇者は行方不明になったわよ。」

 「・・・は?」

 「手柄を横取りした気分になったのかしらね。山に籠るといって、それっきり音沙汰無しよ。多分だけど、あいつの事だから見つけた魔王軍の残党を片っ端から殺しまくっているんじゃないかしら。まぁ、これも言うなれば、誰かさんのせいかもね。」

 「・・・・・・まぁ、それに関しては全く罪悪感は無いな。あんな戦闘狂2度と関わりたくねーわ・・・。」

 「私もそれは全面的に同意するわ。普通に嫌いだし。」

 「もしあいつがこの世界に来たら、俺の事真っ先に殺しに来そうだなぁ。ぶっちゃけ、魔王軍のどのやつらより、あの女の方がこえーよ。」


 俺達の仲間内で、話題が無い時はよく女勇者の悪口で盛り上がる節があった。

 魔王軍に対抗する象徴として選ばれた、人間という枠組みから逸脱の戦士という特別感、その身に掛かる重責、希望。そのどれもが造物みたいで気味が悪かったのだ。魔王を倒すには、別にお前のような、特別な存在じゃなくてもいい。そう思ったからこそ、あの女勇者に魔王を倒させる訳にはいかなかったのかもしれない。

 しかし、俺は確実に女勇者の恨みを買っているのは事実。

 もし、異世界からこちらの世界への転移が当たり前になってしまったら、真っ先に女勇者は俺を殺しに来るだろう。あー、そんな日が来ない事を祈るしか無いな・・・。


 「・・・ていうか、思い返すだけでも、異世界はマジでまともな人いなかったなぁ・・・。」

 「・・・それを幸助が言うのはおかしいわよ。貴方が一番変よ。」

 「それ一番傷つく言葉かも。・・・で、どうするんだ、セトラ。本題に入るけど、何故この世界にやってきたんだ?本当に、俺に会いたいだけでやってきたのか?」


 そう言うと、セトラは言葉に詰まった。

 静寂が訪れる。やはり図星か。何か理由があるに違いない。そう思ったのだ。


 「・・・やっぱり、分かっていたのね。本当に、コースケは直感が働くわね。じゃあ、ハッキリと言わせてもらうわ、コースケ。貴方の言う異世界、私達の居た世界、《ベータ》に帰ってこない?」

 「・・・それは・・・・・・無理だろ。お母さんや小春とも、また離れなくちゃいけないって事だろ?それに、魔王軍の事も気がかりだ。まずはそれを解決しないと。」

 「分かってる。いずれよ、いずれ。選択肢の一つに入れてほしいの。その為に、限定的に、自由に行き来出来るように、お姫様が頑張っている。要は、ベータを拠点にするって事よ。何もこの世界の全てを捨てる訳じゃない。」

 「・・・・・・一度、皆を裏切って捨てたのに?」

 「捨てた訳じゃないわ。使命を果たしたのよ。でもね、貴方を待っている人がベータにはいっぱいいるの。それは忘れないでほしいのよ。」

 「・・・そうだな・・・・・・。」


 幸助は身体にある問題を抱えていた。それは、異世界に長く居過ぎた事と、度重なる身体強化の為の改造により、ある一種の《不老》に近い状態になっていた。異世界で《転生者》として活動している時は、半分人間で半分精霊のような存在だったので歳は取らなくなっていたのだが、元の世界に戻る際にも身体の特性をそのまま引き継いでしまっているので、年齢が止まっている可能性があるのだ。

 異世界にも、長命種と呼ばれる人間族が存在した。エルフや龍人がそれに当てはまるが、幸助もそちら側の存在に近くなっている。訳あって、身体に龍の因子を取り込んでいる。それが作用すれば、セトラのように悠久を生きる存在になっている可能性もある。

 もしそうなれば、現代で生きるにしても、いずれは皆、先に死ぬ。

 孤独は免れない。だから、セトラはこうして誘ってきているのだ。


 「・・・まぁ、いずれはそうなるかもしれない。でも、この高校生活くらいは何とか無事に過ごしてみたい。もう逃げ出したくないんだ・・・。」

 「それなら、私も高校生になってみようかしらね。同じ学校とやらに通いたいわ。」

 「はははっ。何言ってんだセトラ。戸籍も無いのになれる訳無いだろ?」


 乾いた笑い声を出す幸助。だが彼はまだ知らない。

 後に、よく知っている人間が自分のクラスに、どんどん転校生としてやってくる事を。


 「・・・・・・言ってスッキリしたわ。てっきり、本当に私達の事捨てたと思ってたから。」

 「そんな訳無いだろ。俺、明日も朝早いんだ。寝させて。」

 「はいはい。じゃあ、おやすみ。」


 そうして、2人は眠りについた。


 ―――――だが、眠りについていなかった人間がこの部屋に1人。


 小春は、寝たフリをしながら、会話の一部始終を全て、聞いていた。


 小春は、眠りについた幸助の横顔をじっと見つめる。

 会話の全てがとてもじゃないが、信じられるような内容では無かった。余りにも現実味の無い、異世界の話。自分の知っている幸助の人物像が、どんどんかけ離れていくような感覚に襲われた。

 彼は、何も孤独なんかじゃなくなっている。《ベータ》とやらの世界にいっぱいの仲間を作ってきたらしい。伊藤に虐められていた時のような幸助はもはや何処にもいない。


 あんな話を聞いて、眠れる訳が無い。頭の中がこんがらがっている。


 「――――やっと幸助も寝たわね。狸寝入りはよくないんじゃないかしら、小春?」


 声の主に、小春は身体をビクッとさせた。セトラと呼ばれる女性が、私に話しかけている。


 「・・・バレましたか。」


 観念して、小春は身を起こす。時計は午前2時を回っている。

 「少し、ガールズトークでもしないかしら?」


 セトラが妖艶に微笑む。この世の人間とは思えない美しさだった。

 カーテンから漏れる月の光が、セトラの美貌を更に艶めかしく際立たせている。


 小春は、静かに頷いた。


ありがとうございます!!

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