表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

完全犯罪についての考察

作者: 髙橋朔也

※私は本作品を推理小説のネタとして利用してもらうのが本来の用途だと考えています。

 実際に完全犯罪が()()げられるのか、少し考察してみようと思って書きます。しかしこれから書いていくことは全て事実であり、現実で行わないでください。

 また、本作は殺人を推奨(すいしょう)するものではなく、あくまでも完全犯罪が成し遂げられるのかの考察です。もしここに書かれていることを利用して殺人を犯しても、私は責任を持ちません。



●殺し方

 さて。前置きが長くなりましたが、まずはどんな殺し方をするとバレにくいか考えてみましょう。

 被害者の悲鳴が周囲に聞こえるとバレるので、絞殺(こうさつ)刺殺(しさつ)などの力を必要とするようなのは現実的ではありません。睡眠薬などを使って寝ている間に殺すとしても、睡眠薬を購入したら店に記録が残ってしまいます。

 流血するような殺し方だと後始末が大変ですので、外傷がないような殺し方が良いです。

 一瞬で殺すには、毒物などが望ましいでしょう。しかし睡眠薬と同じく毒物を買うと店に記録が残ります。そこで、購入しても怪しまれないが毒物として使えるようなものがあります。サトウキビもその一つで、サトウキビに繁殖(はんしょく)したカビは神経毒を発生させ、体内に混入すると中枢(ちゅうすう)神経系に大ダメージを与えます。症状は脳浮腫(のうふしゅ)や頭痛、重度の痙攣(けいれん)などであり、最悪の場合は呼吸不全によって死に至ることもあります。

 そのサトウキビで中毒を引き起こす量は体重一キロ当たりにつき12.5ミリグラムのようで、成人の平均体重である71.8グラムの人物を殺すには約900グラム以上が必要になります。

 他に、ニコチンも猛毒ですが煙草を購入することで入手出来ます。推理小説でたびたび登場する猛毒である青酸カリよりもニコチンの毒性は強く、成人では二本から三本の煙草に含まれるニコチンの量で致死(ちし)量に(たっ)します。乳幼児では煙草一本に含まれるニコチンより少ない量で致死量です。

 ではなぜ喫煙(きつえん)者などが死なないのかというと、煙草に含まれるニコチンが一度に体内に吸収されるわけではないからです。なので、煙草数本からニコチンの部分だけを取り出して一度に摂取(せっしゅ)させれば、確実に死ぬでしょう。

 推理小説にたびたび登場するものでは、ガラスを粉末にして食べ物に混ぜて食べさせると胃壁にガラスの粉末が刺さって出血し、死なないまでも重傷になるというものもあります。

 もっと簡単なものだと、静脈(じょうみゃく)に空気を注射すると場合によっては死にます。この方法も推理小説ではよく使われています。江戸川乱歩はこの殺し方について、何の害もない空気を注射することによって命を(うば)うというところに、異様な恐ろしさが感じられると語っています。



●死体処理

 死体を消し去る、これが完全犯罪を成し遂げるためには重要です。かなり知っている人も多いですが、死体が発見されなければ警察は殺人事件として捜査をしません。つまり、完全犯罪をするには死体を永久に隠しておく必要があります。わざわざ密室殺人にするなど()骨頂(こっちょう)です。

 死体は地中に埋めて土に(かえ)したり、水に沈めるなどの方法は広く知られています。しかし死体を遠くの地に埋めに行ったり、水に沈めるために海や(みずうみ)に行く途中(とちゅう)にNシステムはありますから、もし死体が発見されれば容疑者として調べられる可能性は高いです。要はあまり遠出をしない死体処理方法が良いわけです。

 谷崎(たにざき)潤一郎(じゅんいちろう)の『白昼鬼語』のように薬物で死体を溶かすにしても、薬物の購入した記録が残ることは前述の通りで、死体を燃やしたとしても(にお)いが残ってしまいます。カラスなどに食べさせるという方法もありますが、食い散らかして人肉だとバレたら大騒ぎです。

 江戸川乱歩の『白昼夢』や小酒井(こさかい)不木(ふぼく)の『死体蝋燭(ろうそく)』のように死体をミイラのような死蝋(しろう)にするという方法は良いですね。死蝋とは死体が腐敗(ふはい)菌が繁殖しない条件下で、外気と長期間遮断(しゃだん)されて腐敗を(まぬが)れ、死体内部の脂肪が変性して死体全体が蝋状になったもので、死体が蝋になったわけです。死体を蝋燭(ろうそく)の代わりにすればバレにくくなります。

 楠田(くすだ)匡介(きょうすけ)の『人間詩集』のようにパルプに死体を混ぜて紙にするような方法は、一般人には難しいので現実味に欠けます。

 液体空気やドライアイスによって人間を凍らせてハンマーで叩いて粉々に割ってしまう、という方法を(きた)(ひろし)は短編に利用しています。

 江戸川乱歩の『地獄の道化師』のように死体に石膏(せっこう)()って石膏像に仕上げたり、死体に鍍金(めっき)をして銅像のようにする方法をジョン・ディクスン・カーやドロシー・L・セイヤーズは考え出しました。ギルバート・キース・チェスタートンの小説のように犯人が咄嗟(とっさ)に畑の中の案山子(かかし)に化けて警察の目を誤魔化(ごまか)す、という方法を死体を隠すのにも応用出来るかもしれません。

 死体を像にしたとして腐って異臭が放たれてはバレてしまいます。腐らせないためには塩漬けにするか、シリカゲルなどの乾燥(かんそう)剤を使うと良いでしょう。水分がないと腐らないのは、ミイラが良い例です。

 死体処理方法で異様なものは、ロード・ダンセニーの『二(びん)の調味料』のように死体を食べてしまうというものがあります。しかし、人肉はあまり美味しくはないでしょう。

 死体を解体する際は血が飛び散るのですが、(こお)らせれば解体しても血は飛び散りません。また、包丁一つでは解体するのに時間が掛かりすぎるので、山川直輝、朝基まさしの『マイホームヒーロー』のように死体を()込んで(やわ)らかくするなどの方法もあります。

 人は急に死ぬ時、糞尿(ふんにょう)を漏らします。なので死体処理を終えたあとは糞尿の始末も必要になるかもしれません。



●仕上げ

 死体処理が終わると、殺人現場となった場所を綺麗(きれい)にすることが大切です。警察はルミノール反応で血の有無(うむ)をを調べられますが、血を(ぬぐ)い去っておいて(そん)はありません。

 カーペットなどの布に血痕(けっこん)が付着すると洗い落とそうにも落ちにくいので、大根おろしを使います。大根おろしに含まれるジアスターゼが血液を分解するので血が落ちやすくなります。

 ジアスターゼは酸素に弱いのでおろしたばかりの大根を布などで包み、大根おろしを包んだ布でトントンと軽く叩きながら落としましょう。

 血が落とせて殺人現場だとわからなくなっても、まだ安心は出来ません。死体を完璧に処理しても家族や友人が捜索願を出してしまい警察に殺されたことがバレれば、完全犯罪は成立しません。『このミステリーがすごい!』大賞で隠し玉だった志駕(しが)(あきら)の『スマホを落としただけなのに』では、犯人が被害者のスマホを使って被害者になりすまして、家族や友人などと定期的に連絡を取り合うことで死んでいないと錯覚(さっかく)させていました。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 作家さんの名前は敬称略とさせていただいています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 登山に行き 突き落とし 不幸な事故として報告する のが何だかんだ言って一番殺人として立証するのが難しそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ