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偽物

作者: 下月優紘

初めて書いた小説です。至らない点やお見苦しい点があるかと思いますが、ぜひ読んで頂けたら幸いです。

高校3年の夏。俺と美海が付き合い始めて2年と少し経った頃。夜の公園で、俺らは進路について話していた。

「私達、別れよう。東京へ行って。」

「俺は行かないよ。ここに居ても写真は撮れる。俺にとってはカメラと美海、どっちも大切なんだ。」

「私ね、蒼の撮る写真が好き。写真を撮ってる時の輝いてる蒼が好きだよ。蒼の撮った写真を沢山の人に見てもらいたいの。その為にも、行って。蒼が一人前になったらまた迎えに来てよ。」

そう言って美海は俺の大好きな笑顔を見せた。


「___ッ。またあの夢か。」

神島蒼(かみしま あお)30歳。俺の仕事はフォトグラファー。俺には12年間忘れられない人がいる。その人の名前は、米野美海(よねの みう)。地元を出て12年、1度も会っていない。連絡も取っていなかった。この12年有名になる事だけを考えて頑張ってきた。そしてやっと、美海に会っても恥ずかしくないくらいになれた。今日、美海に会って伝えるんだ。「結婚して欲しい」と__。


「久しぶり、蒼」

「久しぶり、美海」

そこから美海と沢山の話をした。今は美海も東京にいること、編集者として働いていること。ふと話が途切れた。俺は意を決してその言葉を口にした。

「美海、結婚してほしい。」

美海は泣きそうな、困ったような顔で微笑んだ。

「覚えて、たんだ。」

「当たり前だろ。」

「東京へ行ってから1度も連絡くれなかったから、私の事なんて忘れたと思ってた。」

「そんなわけない。美海に見合うようになるまでは連絡を取らないと決めていたんだ」

「もっと、早く聞きたかったな...。私ね、旦那さんがいるの。」

頭を殴られたような気分だった。

「旦那...さん?」

「ごめんね。私は連絡無しに12年も待てなかった。でも、これからも応援してるから。」

そこから何を話したのか覚えていない。気が付いたら家にいた。美海は話し方も笑い方も、あの頃と変わっていなかった。左手の薬指に指輪をしていること以外、何も。俺は何の為にここまでやってきたんだろう。変なプライドなんか持たずに連絡の1つくらい、したら良かった。最初から待つつもりは無かったと、あの言葉は偽物だと言ってくれたらどんなに良かっただろう。これからもきっと、俺は写真のように鮮やかに幾度となく美海を思い出し、そして沢山後悔するんだろう。そんなことを考えながら、俺は浅い浅い眠りについた。

読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

拙い文章ではありますが、感想など聞かせていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  読ませていただきました。  鉄は熱い内に打てと言いますが、やっぱり、気持ちは言葉や、行動で示さないとなあと思いました。  自分はそう思っていても、相手には伝わってなかったり、伝わっていた…
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