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第十六話 対抗手段

「あ、れ……?」


 気が付くと、私は牢屋の中にいた。見慣れた天井、見慣れた鉄格子、見慣れた手足の枷と鎖。そして、鉄格子の向こうから私を見下ろすシュミナさんたち。


「いったたたた……」


 体を起こそうとした直後、頭に激痛が走った。なにこれ、めっちゃ頭痛い。割れちゃいそう。


「おはよう、ミナツ。すぐに動かない方がいい。君は魔力切れを起こして倒れていたからね。しばらくは安静にしていないと」


「魔力切れ? なにそれ……?」


「魔力の使い過ぎで起こる不調のことさ。頭痛や吐き気、倦怠感を伴って魔力が回復するまでは苦しむことになる」


「うへぇ……」


 痛む頭を押さえながらどうにか起き上がって、壁に背中を預ける。


 シュミナさんの隣にはお姫様とアレクさん、シンヤさんといういつもの面々が勢ぞろいしていた。いったいどうしたんだろう?


「さて、ミナツよ。弁明があるなら先に聞いておこうと思うんじゃが」


「弁明?」


「貴様が謁見の間を破壊したことに対する弁明だ! よもや誤魔化せるなどと思っていないだろうな⁉」


 私が首を傾げると、シンヤさんがすごい剣幕で捲し立てた。


 謁見の間を破壊って、


「私、そんなことしたっけ?」


 どうも記憶が曖昧だ。魔術式を試してみようと、謁見の間で魔法を使ったところまでは憶えてるんだけど……。


「貴様っ……!」


「落ち着け、シンヤ。ミナツさんは魔力切れを起こしている。記憶が曖昧になっているのかもしれない」


「だが、こいつは謁見の間に大穴をあけたんだぞ⁉ それを憶えていないで済ませられるものか!」


「それはまぁ、そうなんだが……」


 アレクさんは困った顔をして頭を掻いた。


 大穴って……。駄目だ、頭が痛くてボーっとする。思考が上手くまとまらない。


「実際に見せた方が早いじゃろ。シュミナよ、ミナリーを牢屋から出してやるのじゃ」


「あまり無理はさせられないよ?」


「わかっておる」


 お姫様の命令で、シュミナさんが鉄格子を開けてくれる。手足の枷も解かれて、私はシュミナさんとアレクさんに支えられて何とか立ち上がった。


 倦怠感で体が重い。一歩進むごとに脳が揺さぶられて激痛が走る。


 そんな状態の私を、お姫様たちは半ば強引に謁見の間まで引きずるように連れて行った。


 そうして謁見の間に入った私を出迎えたのは、


「え…………?」


 謁見の間の壁にでかでかと開いた、巨大な穴だった。


 直径は、たぶん十メートルくらい。深さに至ってはその倍は軽く超えていそうに見える。床は泥水まみれで、穴が開いた面の壁には端まで亀裂が走っていた。


「なに、これ……」


「我々が大きな音に気付いて駆けつけた時にはもうこの状態だった。そして君がこの部屋の中で倒れていた。魔力切れを起こした状態でね」


「状況証拠がはっきりしている。これが貴様の仕業だということは火を見るより明らかだ!」

「確かに、私は魔法を使ったけど……」


 魔術式を媒介させた魔法って、こんなにも強力なものなの……?


「ミナツ、君の傍にはこの本が落ちていた」


 シュミナさんはある一冊の本を私に見せてくる。それは私が魔術式の参考として持ってきた本だ。


「君はこの本に書かれている魔術式を、再現したんだね?」


「……うん。〈水槍――トリシューラ〉。まさか、ここまでの威力だとは思わなかったけど」


「いったい、どうやって術式魔法を再現したんだい?」


「どうって、魔力で魔術式を書いて――」


「そうか、その手があったのか‼」


「うわっ⁉」


 シュミナさんがいきなり大声を上げるものだからビックリしてしまった。


「魔力で直接描いてしまうのか、それは盲点だった。そもそも、魔力が見える人間が居なかったからね。道理で誰も、術式魔法を再現できないはずだ!」


「術式魔法?」


「魔術式を用いた魔法のことさ。何なら、〈魔術〉とでも言っていいかもしれないね。とにかく、これは大発見だ!」


 シュミナさんは興奮が抑えきれない様子で、顔を高揚させて話している。


 そんな様子が気に入らないのがシンヤさんだ。


「騒ぐな、シュミナ! 後にしろ! 今はこのマレビトの処遇を決めるのが先だ!」


「処遇? ああ、そうだね! どの爵位を与えるか考えるべきだ!」


「ああ、処刑か追放かを今すぐ…………爵位だと? 貴様、ふざけているのか?」


「ふざけているのはシンヤの方だろう? 処刑か追放? 馬鹿を言わないでくれ」


 何だか、互いに噛み合わない会話をしている。シュミナさんは「いいかい?」と諭すような口調でシンヤさんに言う。


「もう一度言うが、これは大発見だ。見てみなよ、あの大穴を。魔術式を使えば魔法を覚えたてのミナツでも、あれだけの威力の魔法が使える。それがどういうことか、わからない君じゃないはずだ」


「…………まさか、ドラゴンに対抗できるのか」


「そう! まさにあたしが言いたかったのはそれさ! 術式魔法なら、ドラゴンの鱗を超えてダメージが与えられる。何なら討伐することすら可能かもしれない! 我々はようやく、ドラゴンに対抗する手段を手に入れようとしているんだよ‼」



next→第十六話


2020:11月中に更新予定

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