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第九話 王国魔法師長

「やあ、初めまして。元気そうで何よりだ」


 鉄格子の前に立ったのは、赤い髪を腰のあたりまでのばした背の高い女性だった。鼻が高く、整った綺麗な顔立ちをしている。


「お姉さん誰?」


「おっと。そうだね、まずは自己紹介をしておこうか。あたしはシュミナ。シュミナ・シュテインだ。よろしくね、ミナツちゃん」


「私の名前……」


「アリアから聞いたんだよ。あの子から、君が王城に行って三日も経つのに帰って来ないと相談されてね。こうして様子を見に来たってわけだ」


「アリアちゃんの知り合いなんですか?」


「うん、友達だよ」


 シュミナさんはそう言うと、鉄格子の前に置いてあった椅子に腰かけ長い足を組んだ。綺麗な素足がふとももまであらわになる。この国の人は地上で日の光を浴びないだけあって、みんなかなり色白だ。


「実はあたしにはもう一つ目的があってね。アリアちゃんからの頼み事は、君が元気なのを確認できたから終わり。次はあたし個人の目的を果たさせてもらうよ」


「目的って?」


「ミナツ、マレビトである君を知ることだ」


 私を知る……?


 どういうことだろう。首をかしげていると、シュミナさんは教えてくれる。


「あたしはこの国で魔法師長という役職に就いているんだ。簡単に言えば魔法が得意な連中のトップなわけだけど、あたしの専攻は歴史学やマレビト学でね。君もあたしの研究対象ってわけ。君がどんな子で、前の世界でどんな生活をしていたのか、そしてこの世界で何を成すのか。それを知りたいのさ」


「そう言われてもなぁ」


 私は普通の女子高生だったわけで、知ったところで面白くも何ともないと思うけど。研究対象って言われても困る。


「ま、そう気構えないでいいよ。もちろん、一方的に質問攻めしようってわけじゃない。君とは良い関係を築きたいからね」


「じゃあ、私の質問にも幾つか答えてくれる? 具体的には空の飛び方が知りたいんだけど」


「空の飛び方? それくらいなら構わないよ。先に答えようか」


 そういうと、シュティさんは白衣のポケットに手を突っ込んで何かを手に取る。そしてそれを私に向かってほいっと投げ渡してきた。


「うわっ、とと……」


 何とか落とさずにキャッチしたそれを見ると、赤い半透明の綺麗な石だった。


 すごい、ルビーみたいでめっちゃ綺麗。


「それは飛空石という石だ。握りしめて魔力を込めると、込めた分だけ体が宙に浮く作用を持っている」


「へぇー。さすが異世界」


 早速、右手に握りしめてイメージしてみる。すると、私の体内から沸き上がった光の粒子が右手に集まって、飛空石を通って赤く細かな粒子になって私を包み込んだ。


 そしてふわりと、体が宙を浮く。


「驚いた……。君は魔力が使えるのかい?」


「魔力が何かいまいちわからないけど、体の中にあったりそこら辺を浮いてたりする光の粒子のことだよね? それなら見えるし、ある程度は自由に扱えるよ」


 この三日、起きている間はずっとそれで遊んでいたのだ。光の粒子の扱いには随分となれた。今じゃ光の粒子を使って、空中に文字や絵を書いたりもできるようになっている。


 にしても、この光の粒子が魔力なのか。私の体の中にもあるんだけど、この世界特有のものじゃないのかな……?


「魔力が見える……⁉ ははは、どうやら君は今までには居ないタイプのマレビトみたいだね。俄然、君に興味が湧いてきたよ」


「そりゃどうも……っとと。これ、バランスとるの難しいね。これもうちょっと魔力込めたら安定するかな」


「あ、それ以上は」


「へっ? ……痛ったぁっ⁉ ッ~~‼」


 天井に頭を打った。その衝撃で飛空石を落としてしまって、今度は落下して思いっきり尻餅をついた。痛い……。割れた、絶対にお尻割れたぁ……!


「大丈夫かい?」


「お尻が二つに割れました……」


「そりゃ元々だ。何事もなさそうで何よりだよ」


 シユティさんは口元に手を当ててクスクスと笑う。むぅ……。


「でも、空の飛び方が知りたいって初めにそれを聞くんだね。普通はいつになったら牢屋から出れるのか、とか。あたしもそういったことを聞かれると思ってきたわけだけど」


「聞いたところでそれって意味あるの?」


 少なくとも、お姫様やシンヤさんの態度を見ていたら数日程度で開放させてもらえるとは考えにくい。最悪、私が死ぬかこの国が亡びるかまで牢屋に閉じ込めているつもりかもしれない。


 そうなってくると、いつ開放されるのかを考えるのではなくて、いつ脱獄するかを考えなくちゃいけなくなる。


 脱獄の方法には、ある程度検討はつけてあるから。


「意味、か。ないかもしれないね。魔力が見えて、操ることができるとしたら、君は近い内に魔法も使えるようになるだろう。そうなればこんな鉄格子なんてどうとでもなる」


「そういうこと」


 魔法の正体が光の粒子であることは、シャワーの時に確認済みだ。実際に、光の粒子を使って水や火を出すことには成功した。見張りにばれないよう、こっそりとだけど。


 その気になればいつでも出られる。私にはこの世界でやりたいことがあるから、いつまでもこんなところには居られない。


「この飛空石、もらっていい? 高価なものだったら返すけど」


「構わないよ。この国は元々、飛空石の鉱脈だったらしい。掘ればいくらでも出てくるから、価値も低い。身に着けていると魔力に反応して勝手に体が浮いてしまうから、宝石としての価値もないからね」


「ありがとう。おかげで夢が叶いそうだよ」


「夢……?」


「私、空をどこまでも自由に飛んでみたいんだよね」


next→第十話「私の夢は」

2020:10/28更新予定

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