登場人物紹介・設定など
【登場人物紹介】
■主要人物
〇ヘカテー(ヴィオラ)
本作の主人公。
領主の居城であるフェルトロイムト城へ下級のメイドとして奉公に出ていたが、城の塔に幽閉中だった次男ヨハンに食事を届ける際、ひと悶着あってヨハン付きのメイドとなる。
商人の娘だが、高い教養がある、容姿もこの国の一般的なものとは違うなど、その出自は謎が多く、本人もよくわかっていない。
父親から本名は家族以外に話してはいけないといわれており、もとはヴィオラという通名で過ごしていたが、ヨハンから新たに『ヘカテー』という名をもらった。
基本的にはおっとりとした性格。少々ぼーっとしたところがあり、気づくと思索にふけってしまうタイプ。しかし、かなり地頭は良く、ここぞというときに意外な行動力を見せることもある。
長い黒髪に黒い目、蒼白な肌が特徴的な童顔の美少女。物語スタート時点で14歳。
〇ヨハン=アルブレヒト・フォン・イェーガー
帝国選帝侯のひとつである、イェーガー方伯の次男だが、人や動物を切り裂きたがる癖により、父によって北の塔に幽閉されている。それを知る者たちからは『塔の悪魔』と呼ばれ恐れられている。
実は、切り裂くこと自体を楽しんでいたわけではなく、医療の知識を得るために解剖を繰り返していた。
また、明晰な頭脳を認められ、イェーガー方伯が前に出られないような工作活動、及びそれを実行する隠密の管理を請け負っている。
極端に冷徹で合理的というだけで、積極的な残虐性があるわけではない。
グレーがかった髪とオリーブ色の瞳が特徴の華奢な青年。物語スタート時点で18歳。
〇ヤープ
刑吏(=処刑人であり、皮革加工を行う皮剥人を兼ねる)の息子であり、本人も皮剥人として仕事をしている。名誉を持たない賤民の子。
『頭巾のおっちゃん』によって無料で原革が手に入るという合図を知らされ、それ以来解剖後の動物の死体を引き取っている。
貧しい身なりの小生意気な少年。明るめの茶髪に同じ色の瞳、10~12歳くらい。
〇オイレ
ヨハン配下の隠密の一人で、オイレとは梟の意。
諜報や陽動などの情報戦を得意とし、表の職業では『歯抜き師』という、歯科治療を行う大道芸人をしている。
医療従事者であることから、ヘカテーがやってくる前からヨハンの解剖に協力していた。
本当は引き締まった体格だが、大道芸を行う際には太った体型を装い、派手な衣装で化粧を施している。赤毛に琥珀色の瞳、30手前くらい。
いつも飄々として、妙に間延びした独特の話し方をするが、ヨハンの前ではしっかりと落ち着いた受け答えをしている。
〇ケーター
ヨハン配下の隠密の一人で、ケーターとは駄犬の意。荒事を専門とする武闘派。
工作活動中に敵陣営と接触したり、ヘカテーの部屋に『トリストラントは死んだ』というメモを投げ込んだりと不審な動きがあったことから裏切りが疑われており、塔の地階に拘束されている。
トリストラントについて何か知っている様子。挑発的な言動が目立つが、元からそういう性格なのか、わざとそうしているのかは不明。
暗めの茶髪にこげ茶色の瞳、柄が悪く攻撃的な雰囲気。30代半ばくらい。
■フェルトロイムト城の人々
〇イェーガー方伯アルブレヒト
ヨハンの父。帝国諸侯で選帝侯のひとつである方伯の地位を持つ現当主。
ヨハンを塔に幽閉した張本人だが、自分が表に出られないような裏の仕事をヨハンに頼むかわりに、塔内では自由な行動を黙認している。
ヘカテーを含む使用人や庶民からは『ご領主様』と呼ばれている。
※今は名前だけですがそのうち登場します。
〇ヴォルフ
使用人の最高位であり、領地運営に関する仕事を請け負う家令の地位にある初老の男性。
厳格だが、部下のことをよく気遣っており、素行の良くないヨハンのお付きになったヘカテーのことを心配していた。
白髪混じりの金髪にブルーグレーの瞳、紳士的な印象。40代半ばくらい。
〇クラウス
使用人のまとめ役である執事で、イェーガー方伯とヨハンの橋渡しをしている。
誰に対しても丁寧な接し方と顔の良さでメイドたちに人気があるが、目が笑っていないため、ヘカテーは苦手に思っている。油断ならないところのある人物。
栗毛に黄色味の強いベージュの瞳、柔和で中性的な整った顔立ち。30代後半くらいだがもっと若く見える。
〇ズザンナ
家政婦長。厳格を通り越して高圧的なところのある初老の女性。本人としては悪気があるわけではない。
〇ベルンハルト・フォン・イェーガー
ヨハンの兄。
※今は名前だけですがそのうち登場します。
〇ゾフィー・フォン・イェーガー
ヨハンの姉。物語開始時点ですでに病没、享年12歳。仲の良かった彼女の死が、ヨハンが医学を志すきっかけとなった。
■ヨハンの隠密
〇ラッテ
ラッテとは溝鼠の意。
※今は名前だけですがそのうち登場します。
〇シュピネ
シュピネとは蜘蛛の意。
※今は名前だけですがそのうち登場します。
■街の人々
〇トリストラント
娘を溺愛するヘカテーの父。商人だが、高い教養をもち、所作も美しく、またそれらを娘にも教えた。
ヘカテーが生まれる前の過去は謎に包まれており、ヘカテーに教えた知識の中には帝国の知識ではないものも多い。本人曰く、東方から来た遍歴商人の家であり、レーレハウゼンに定住したのは彼の代からだという。
塔で過ごすヘカテーのもとに『トリストラントは死んだ』というメモが届いており、現在消息不明。
ヘカテーと同じく黒髪・黒目、非常に上品でミステリアスな印象。40歳くらい。
〇マルタ
ヘカテー親子の近隣住民。ちゃきちゃきとした雰囲気の中年の女性で、面倒見がよい。
〇カール
トリストラントの知人であることを自称し、父の死の連絡を受けて実家を見に行ったヘカテーを襲撃。密かに護衛していたオイレによって返り討ちに会い死亡した。近隣住民であることやカールという名前も自称にすぎないため、正体は不明。
【その他補足】
■舞台設定について
〇帝国
ヘカテーやヨハンが住む国。別の世界線の神聖ローマ帝国。現在で言うドイツ・オーストリア・チェコ・イタリア周辺という広大な国土を誇るが、各地の領邦化が進んでおり、統一された国家というより、地方国家の集合体的な側面が強い。
〇イェーガー方伯領
イェーガー方伯の治める、帝国の北方にある広大な領地。国境が近いため貿易が盛ん。
〇レーレハウゼン
この物語の主な舞台となる、イェーガー方伯領の中心地。商業が発展している賑やかな街。
〇フェルトロイムト城
イェーガー方伯の居城。レーレハウゼンに位置し、その美しさから『フェルトロイムト(夢見るような)城』と名付けられた。
南北2つの塔を持ち、ヨハンは北の塔に幽閉されている。塔と別に後年作られた居館があり、方伯や他の家族はこちらで過ごしている。また、使用人の多くは別棟の使用人棟に寝泊まりしている。
■登場人物の服装について
舞台のモデルにした時代背景から、基本的にはいわゆるロマネスク様式を参考にしています。
〇ヘカテー
服装は踝丈のチュニックワンピース。塔に来てからは侍女のお古なので、庶民にしては上質なものを着ている。
髪の毛は長く、仕事中はおさげにして、休みの時はそのまま垂らしている。
〇ヨハン /ヴォルフ / クラウス
毛織物製の上質な長いチュニックと長い脚衣を合わせ、髪の毛は肩ぐらいまで伸ばしている。
〇ヤープ / オイレ(平時) / ケーター / ラッテ
服装は同じくチュニックに脚衣だが、チュニックの丈は短くシンプルなデザイン。身体を動かすときなどはチュニックの裾をベルトに挟み込んでたくし上げる。
ヤープはボロボロで汚れも多い状態。
〇オイレ(大道芸時)
ブリオーというドレッシーなチュニックにマントルを着用。
※立場を考えれば本来ヨハンもブリオーですが、合理主義の彼は好まないと思われるため、執事たちに合わせました。




