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グレア大司教


~~~ 同時刻 アリア教会アダムヘル支部にて ~~~


(まこと)か!?」

「はっ。ほぼ間違いないかと」


 門番の引継ぎを済ませたラウディは、アダムヘルのアリア教会にて、アダムヘル周辺のアリア教のトップである大司教の地位に就く老人、グレア大司教にミル達の事を報告していた。

 ミル達と別れてから移動も含めて30分ほどで、多忙な最高責任者と面会が叶ったのは、ミル達の存在がそれだけアリア教会で重要だということだろう。


「アリア様の御降臨から早三百余年、やっと我らの真の目的を果たせるときが来たか」


「はい。しかしお判りでしょうが、そのアリア様御自(おんみずか)ら天人様であろうとも安易に信用するなと聖典に残されておいでです。まずは行動を見守るべきかと」

「みなまで言わずとも分かっておる、悪しき者であったなら、早々に手を打たねばならぬが、お主から見た天人様方の印象はどうであった?」


 癖のある白髪と白髭を長く伸ばした、普段は好々爺然とした笑顔を絶やさないグレア大司教が、眼光鋭くラウディを見る。

 その普段とは全く違う様子に、改めて事の重大性と、アリア教会の枢機卿に次ぐ地位に就くこの老人の本質を見て、下手な報告は出来ぬとことさら気を引き締めながら「個人的な意見ですが」と前置きしたうえでラウディは自身の印象を語った。


「まずは見た目ですが、お二人とも天人様と言われれば10人が10人納得するであろう見目麗しさとカリスマ性を備えているように伺えました」

「ふむ。アリア様も非常に神々しくお美しかったと伝承に残っておる。だが、アリア様の聖典に天人様方が皆そのような容姿ではなかったとの記載がある。天人様によっては亜人やモンスターの姿の方もいたようであるし、姿は当てにならぬな」

「はい、ですので可能性の底上げにはなりますまいが、天人様らしいと言えばこれ以上ないほどらしい(・・・)見た目でありました」

「なるほどのぅ。話した印象はどうじゃった?」

「少なくとも、腹芸の類が得意には見えませんでしたな、こちら(・・・)に来て情報が足りないにしても、もう少しやりようがあると思います」

「頭はあまりよろしくない、と?」

「いえ、頭の回転は並み以上かと、ただスレて(・・・)いないといいますか、他人に対しての警戒心や猜疑心が足りないといいますか……」

「世間慣れしていないといったところか」

「はい、クリスタール様の方は年齢相応か多少低いかと、ミルノワール様はほぼ会話らしい会話がありませんでしたので、分かりかねます」


 実年齢21歳のクリスといえど、大学も卒業していない若造の心理など四十も半ばを過ぎた中年にはお見通しだった。

 また、この世界では15歳で成人とされ社会経験を積むので、21歳とはいえ社会経験のない学生が見た目より幼く見られるのは、あるいみ仕方ないと言える。


「強さの方はどうであった?お主が挑んで勝てそうか?」

「私程度では物差しの尺度が違いすぎて測りきれませぬ」

「それほどのモノか。お主が挑んだとしてどの程度対抗できそうだ?」

「……あくまで予想ですが、3秒持たぬかと」


 ラウディの言葉に絶句するグレア。


聖騎士団ホーリーナイツ序列5位のお主がか!?」

「はい。正確には、防御力だけなら聖騎士団ホーリーナイツ随一と自負する私が、フル装備で防御に徹して3秒です。それも耐えきれるかどうか……それほどの差を感じました」

「……流石は天人様であるのぅ。アリア様が御降臨された時代の人々もこのような気分だったのかもしれぬ」

「アリア様の御力でこの世界の人々も相当に強くなったと思いますが、天人様は桁が違いまする」


 しばし瞑目めいもくしたのち、最も重要な質問をグレアはした。 


「第一印象で構わん。お主から見た性質たちを応えよ。ぜんなるか、ならざるか」

「善でありましょう」

「分かった。ではこのことはわしからアリア教会の上層部と聖王国王族のみに知らせておく。天人様方には護衛を付け、動向を見守るように。性質が善なる者でも道を違えることはある、気づかれぬように導かねばな。お主たち聖騎士団(ホーリーナイツ)内でも一部を除いて口外法度である、徹底させよ」 

「はっ!!」


 時を置かず返事を返すラウディだがその顔には困惑が残り、思わず疑問が口を滑る。


「……しかし私の第一印象のみで、そこまで決めてよろしいのですか?」


 あっさりと今後の方針を決めるグレア大司教に、仕えるべき主に対する疑問は不敬と知りつつ、ラウディは戸惑いを隠せない。


「構わぬさ。お主の人を見る目はかっておる。聖騎士団ホーリーナイツ第三部隊隊長にして【守人(ガーディアン)】ラウディ=ガーランドよ」

「過分の信頼、有難き幸せに御座います」


 主の言葉に胸を逸らし、気持ちを引き締めて真剣な顔に戻ったラウディが報告を続ける。


「すでに護衛にはエリーナを付けております。エマかミリアに伝達役として随時報告を上げさせましょう」

「承知した。儂も折を見て接触し、実際に人柄を確認したいのだが、うまく会えぬだろうか?」

「アリア様の聖典には、おそらく天人様は冒険者ギルドで冒険者として活動するであろうとの事。別れ際に冒険者ギルドの場所を伝えましたが、礼を言われただけでしたので、おそらく向かったのではないかと思います。しばらくは様子を見て、ある程度名前が売れた時に指名依頼として何かしらの依頼を出せばよろしいかと」

「うーむ……ここまで聞こえるほど名前が売れるまで接触できぬか? 早めに会っておきたいのじゃが」


 不満げなグレア大司教に苦笑するラウディ。

 なんだかんだで、おそらくこの方も早く天人様に会いたいのだろうと察せられたのだ。


「相手は天人様ですよ。すぐに頭角を現しましょう」

「お主だけ天人様に会いおって……羨ましい」

「こればかりは役得でございます」


 不満顔でポロリと本音をこぼした主に、いい笑顔で答えるラウディだった。





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