恐怖の先に在る飯
正に地獄。
少しも目を離さず集中して見ている相手が、気づいたら真横に居て剣の腹でぶん殴られ続けるという終わりの見えない恐怖。
圧倒的実力差に幾度も吹き飛び、地を這い、時には血反吐を吐きながらも、何度でも立ち上がり挑み続ける五人の姿に、いつしか見ている人々は言葉を失っていた。
あの人の姿を模った【白い悪魔】に、どうしてこうも立ち向かえるのか。
自分たちは恐怖に身がすくみ、腰が抜け、動く事すらできないというのに。
また一回、剣士の少年が吹き飛んだ。
近くに居るだけで気が狂いそうな殺気をまき散らし、白い悪魔は前進する。
それを遮る様にもう一人の剣士の女が割って入った。
その女も鎧袖一触と大剣の一振りで弾け飛ぶ。
そこに飛来する矢と魔法の猛襲。
しかしそれすら白い悪魔は全て切り裂き、その衣装の端を焦がす事すら許さない。
剣士の少年が復帰し、再び悪魔と対峙する。吹き飛ぶ。
剣士の女が道を阻む。転がされる。
魔法を放つ。かき消される。
剣士二人が同時に切り込む。二人纏めて弾き飛ばされる。
中衛を飛び越えて悪魔が後衛に迫る。
回復職の女と魔術師の少女が二人掛かりで初撃を防いだ。
弓職の女と挟撃。三人纏めて吹き飛ばされた。
剣士の二人が四度復帰し切り結ぶ。
何度も、何度も。
見ている方も永遠と思えるほど。
やっている方はそれ以上に。
もう止めてくれ。
もう立たないでくれ。
騎士団隊員は思った。
もう無理だと、次倒れたら立てないだろうと。諦めてしまえとさえ思った。
だが目の前の少年少女は立ち上がる。
吹き飛び、膝をつき、血を吐こうとも。
次の瞬間には立ち上がり、悪魔に立ち向かっていく。
ある冒険者は思った。
何が彼らをそうさせるのか、これ程の殺気に晒され、打ちのめされズタボロになっても、なぜ何度も起ち上がれるのかと。
分からない、目を背けたくなるような惨状に、だが彼らの誰も目を逸らせず、食い入るように見つめ続けた。
そこでふと、別の冒険者が気付く。
段々と、肉を打ち、骨を砕く生々しい音が、減ってきていることに。
剣と剣がぶつかる金属音が、次第に増えてきていることに。
剣士の少年が吹き飛ぶ。だが転がること無く着地すると、すぐに悪魔と切り結ぶ。
剣士の女が弾け飛ぶ。だがすぐに魔法が飛来し悪魔を足止めする。
だんだんと白い悪魔は足を止める事が多くなり、そこに更に魔法が集中した。
白い悪魔は避ける。全ての魔法を、飛来する弓を、剣士の斬撃を。
だが、今までのように魔法がかき消えるようなことは、次第に無くなっていた。
未だ悪魔は一撃貰う事すら許していない。
だが少しずつ、確実に、それはただの蹂躙から戦闘と呼べるものに変わりつつあった。
――― 頑張れ
気付けば、最前列で見ていた冒険者の一人はそう思った。
――― 頑張れ、頑張れ
気付けば、見ている者全てが思っていた。
膨大な殺気に萎えていた足に力が入る。
押しつぶされるような圧力に抗うように、いつしか彼らは立ち上がっていた。
冷え切った体に、熱い血潮が戻ってくる。
――― 頑張れ、頑張れ、頑張れ!
胸を掻き毟りたくなるほどの熱く激しい衝動。
何度地を這っても、挫けず、諦めず、立ち上がる少年少女の姿が、彼らにも立ち上がる勇気を与えていた。
黄金に輝く剣を持つその存在に、彼らは見たのだ。
心に勇気を持つ者。他者に勇気を与える者。そうそれ即ち―――【勇者】の姿を。
永遠に続くかと思われた戦いの終わりは、唐突だった。
「ハアアアアアアアアアア!!!」
魔法を避けたミルに、裂帛の気合を乗せたアルトの剣が迫る。
今やハッキリと輝く黄金の剣が、狙い過たずミルに迫り、ミルは不完全な体勢のまま迎撃した。
――― キンッ
澄んだ音。交錯する両者。
舞った銀線が朝日を反射し、キラキラと陽光を乱反射させながら、二人の丁度中間に突き刺さった。
膝を付くアルト。悠然と振り向くミル。
アルトの手の中の長剣は、見事に中ごろから折れ、その切っ先を地面に埋めていた。
つかの間、静寂がその場を支配する。
誰一人動く事が出来ず、何一つ言葉を発する事をせず、明らかな決着を迎えたその光景を見つめた。
最初に動いたのは、ミル。
突き刺さったアルトの長剣の切っ先を拾い上げると、くるりとクリスに振り向いた。
「あわわわ、ど、どどどうしようクリス。アルトの剣、折っちゃった!」
え? っと思う周りの冒険者と騎士団達。
【白い悪魔】は、先ほどまでの圧倒的強者としての自信を纏う姿でなく、悪戯を見つかった子供のように動揺していた。殺気をまき散らしながら。
めっちゃアワアワしていた。膨大な殺気をまき散らしながら、めっちゃアワアワしていた。
切っ先を持った手もプルプル振るえている。
「え? あ、あぁ、取り合えずごめんなさいしなさい」
「そ、そうね」
何気に模擬戦に見入っていたクリスが我に返り、そうアドバイスすると、ミルは未だに片膝を付いたままのアルトにてとてとと近づく、殺気をまき散らしながら。
周りの人間は息を飲んだ。どう見ても止めを刺すつもりとしか思えない殺気だったからだ。
「ごめんなさい」
しかし、周りの予想を裏切りペコリと素直に頭を下げるミル。殺気をまき散らしながら。
そんなミルに周りは更に混乱した。
あれ、殺気ってなんだっけ?
「あ、はい別にそれは構いません。寿命だったのでしょう」
普通に答えるアルト、流石にこの殺気にも慣れた様だ。
ミルがアルトの手を引いて立たせると、他の面子も集まってきた。
今度は勘違いでなくちゃんと“終わった”のだと分かり、エリーナ達やフランシスカの顔にも安堵が浮かんでいる。
和気藹々と談笑し、反省会など始める一同を呆然と見つめる周りの面々。未だに殺気は続いている。
あれ? これって殺気だっけ? むしろ殺気ってどんなのだっけ? と冒険者と騎士団が殺気のゲシュタルト崩壊に混乱していると、パンパンと大きな拍手が起こった。アリストだ。
「いやぁいいモノを見せて貰いました。強者同士の模擬戦はそれだけで参考になりますね。ところでミルさん、そろそろその殺気を納めてくれませんか? 従者の者達を起こさないといけないので」
「あ、すいませんスキル切り忘れてました」
あ、やっぱりこれって殺気であってたのか。と周りの人間が崩壊した“殺気”の意味を辞書に再登録していると、ミルの雰囲気が悪鬼羅刹たる【白い悪魔】からただの超絶美少女に変化した。
「騎士団の諸君は気絶している従者達を起こしてきてください。回復が必要なものはクリスさんの下へ運ぶように。いいですねクリスさん?」
「構わんよ。というかレベルの低い者にはあの殺気はきつかったか。ミル、お前が考え無しに【狂戦士化】なんか使うから一般人が迷惑してるじゃねぇか。ちゃんと皆さんに謝っておくんだぞ」
「あっ……はい、ごめんなさい」
クリスに怒られて珍しく素直に反省し、しゅんとするミル。一般人もいることをすっかり忘れていたらしい。
そこに一般人が当てられて気絶するほどの殺気を垂れ流す【白い悪魔】の面影は、欠片も無かった。
ここに来てようやく、冒険者と騎士団達はあの殺気が何かしらのスキル効果である事を理解し、体から力を抜くことが出来た。
弛緩する空気の中、一人神妙な面持ちのアルトが声を発する。
「アリスト様、申し訳ありません。僕が未熟なせいで、貴方から頂いた剣を折ってしまいました」
近づいて来たアリストに、アルトは深々と頭を下げた。
「あぁいいよ、元々もう体に合わなくなって来ていただろう。その剣もここまで使われて本望だっただろうさ。むしろミルさんの大剣とよくあそこまで打ち合えていた」
アルトの手の中にある半ばから折れた剣を見つめ、労うようにそうアリストは言った。
アルトの剣は【勇者】のスキルである【光の剣】により強化され、何とかここまで持っていたといっていい。刀身にしても柄にしてもガタが来ていて、打ち直しても再生できるか微妙なほど痛んでいた。
ちなみにエリーナの剣はそれほど痛んでいない。これは彼女が突き主体の戦法だったことと、防御が間に合わずミルの攻撃をほとんど剣で受けられなかったからだ。もし受けられていればエリーナの剣の方が先に音を上げていただろう。
「あれ、アリストさんとアルトって知り合いだったんですか? というか、頂いたって……」
「あぁ、アルトと私は遠縁にあたる。その剣も私が彼の十歳の誕生日に渡したものだ」
恐る恐る聞いたミルに、アリストが答えた。
実際に血が繋がっている訳ではないのだが、説明が面倒なのでそういう事にした。
それを聞いたミルは、顔を青くしてクリスに向き直る。
「どどど、どうしようクリス。何か思い入れのある大事な武器壊しちゃったっぽいっ! 何か代わりになるような武器ないかしら!?」
「いや、代わりになる武器渡してどうこうの問題じゃないだろ、思い出はプライスレスだぞ」
「あわわわ……どうしよ、どうしよ!?」
アルトの大事なものを壊してしまったと分かり、ミルはクリスに泣きついたが、スッパリと見捨てられて涙目が加速した。今にも零れ落ちそうである。
「いえ、剣が折れたのは僕の未熟のせいです。ミルさんが気に病むことではありません」
「うん、どちらかと言えばアルトが急激に強くなって剣の方が耐えられなかったのだろうね。ここがこの剣の限界だったという事だろう」
泣きそうなミルにそうフォローするアルトとアリストだが、折れた剣を見る悲し気な二人の視線が、ミルの心に突き刺さった。
「くりすぅ~……」
「……ああもう! わーったよ!」
ぽろぽろと涙を流しながら、神官服に縋り付いてくるミルに、とうとうクリスにも折れた。
ミルの頭をポンポンと叩いてクリスがそう言うと、ミルの顔がパァーと輝く。
「アルト、その折れた剣、俺に預けてくれないか。いい感じの素材が揃ったら打ち直して返してやる。それまではコレを使ってくれ、昔俺が使っていた物だが、性能的には今のお前に丁度いいはずだ」
クリスは腰にミルを引っ付けたままアルトに歩み寄ると、インベントリから一振りの剣を取り出した。
それは幅広の両刃の長剣で、所々に金細工の意匠が有るものの全体的に武骨な、質実剛健といった一振りであった。
「いや、しかし……」
差し出された剣に逡巡するアルト。
思わずアリストに視線を向けると、彼は頷いて見せた。
「貰っておきなさい。まだ護衛任務は半日残っているわけだし、武器が無ければどうしようもないでしょう。それに、君がCランクになったら新しく渡すつもりだったけれど、先ほどの訓練を見ていると君に合った剣を用意出来そうにない。僕からは何か別の物を送ろう」
アリストが知っているころから、ここ数日で見違えるように強くなったアルトに、アリストは本心からそう言った。
全く持って、短期間でこれほど強くなられては市販品で見合う武器など無いし、素材から集めるとしてもいくら顔が広く実力もあるアリストでも短期間では無理な話だ。
アリストの言葉に後押しされ、アルトはクリスからズシリと重い長剣を受け取り、逆に持っていた折れた剣をクリスに渡した。
「そいつの名は【王剣カリバーン】。今までの長剣より重量はあるだろうが、今のお前ならすぐに慣れるだろう」
“王剣”という名にピクリと反応するアルト。全くこの人はどこまで自分の素性を察しているのかと苦笑した。こんな大勢の目と耳のある場で聞くわけにもいかないので、黙っていたが。
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、使わせてもらいます」
王剣カリバーンを腰に佩いたアルトに、満足げに頷くクリスとその腰に引っ付いてほっとするミル。ここだけ見ればとても夫婦とは思えず、仲の良い兄妹にしか見えない。そんな二人に周りの人間も微笑まずにはいられなかった。
「うんうん。話がまとまって良かったよ。ところで、君たちは朝食はまだだよね。今日もご一緒させて貰っていいかな?」
「いいんじゃね。だよなミル?」
「はい……あ」
「ん?」
返事をしたミルの目に留まる物があった。
ミルはクリスの腰から離れ、てとてととCランク冒険者の方へ歩み寄る。
慌てたのは突然歩み寄られたCランク冒険者達だ。
先ほどからころころと表情を変えるミルに大分毒気を抜かれていたが、元はと言えばこの少女の殺気で腰を抜かしたのだ、警戒しない訳がない。
ミルは硬直するCランク冒険者達の目の前に来ると、彼らの足元をジッと見つめガバっと頭を下げた。
「あの、ごめんなさい!」
「へっ!?」
困惑する彼らがミルの視線を追えば、そこにはぶち撒けられた彼らの朝食の残骸が。
「私のせいで、朝ご飯をダメにしてしまったのですよね」
「あ、いや、別にお前さんのせいという訳じゃ……」
真正面から謝られ、しどろもどろになるCランクのおっちゃん。
実際彼らは野次馬で見学していた訳だし、落としたのも根性が足りていなかっただけなのだが、緊張して言葉が出なかった。
「良かったら、皆さんも一緒に食べませんか? ダメにしてしまった朝食のお詫びをさせて下さい」
ミルのまさかの提案に、戸惑うCランク冒険者達。
ミルとしてはイチャモン付けられる前にささっと謝罪と賠償を行って面倒事を避けたいだけである。
普段のミルならば、イカツイおっさんに自ら近づく事も、ましてや食事に誘うなどという事もしないだろうが、久々の対人戦に満足していい感じに賢者モードになり、優しい気持ちになっていた。今なら知らない人と食事を囲んでも大丈夫な気がする。
そんな事とは知らないCランク冒険者たちは、アリストの方へ助けを求める視線を向けた。
「彼女がそれが良いというのならいいんじゃないかな、作るのはミル君だし、ミル君のご飯はとても美味しいよ。よければ騎士団や他の冒険者達も呼んでいいかな? 今日の昼には首都に到着するし、これが最後の食事になるから皆で親睦を深めよう」
「いいですよ」
『ぃよっしゃーーーーー!!!』
「!?」
アリストの言葉にミルが頷くと、騎士団から歓声が上がった。どうやら彼らは団長のラウディからミルの手料理の美味しさを聞いていたらしい。ミルの手料理が食べられると、先ほどまで殺気にドン引きしていたことも忘れて大はしゃぎだ。
Cランク冒険者達も、自分たちだけでないのなら、と渋々了承した。
こうして、ミルの殺気に恐怖と危機感を感じていた一同の緊張を解きほぐそうというアリストの咄嗟の一計は、皆に受け入れられたのだった。
■◇■◇■◇■
「なんじゃこりゃウメェ!」
「味付けが絶妙だ。ただの野菜とハムとチーズのサンドイッチなのに」
「ホントホント! 作る人が違うだけでこんなに味が変わるのか!」
ミルの作ったサンドイッチをバクバクと美味しそうに食べていく冒険者たちに、ミルも嬉しそうに微笑んだ。
今日の朝食のメニューは、冒険者も言っているように野菜とハムとチーズのサンドイッチだ。
結局百人を超える人数の朝食を作ることになったミルは、持ち寄られた食材に大量のパンがあったことから、手早く作れるサンドイッチを選択した。
野菜を切ってハムとチーズをパンに挟むだけなのだが、そこはミルの料理スキルのなせる業で、触れただけで食材のランクが2つは上がり、これまたスキルで出るスパイスで自動的に完璧な味付けをされるので、信じられないような美味しさのサンドイッチが出来上がっていた。
大きめのパンにたっぷりと野菜とハムとチーズが挟まったボリューミーなサンドイッチなのだが、女性冒険者でも二つ、男性だと三つ、四つぺろりと平らげていく。
お代わりを貰いに行くとミルが輝く様な笑顔で迎えてくれるので、食欲にも一層拍車がかかった。
自分の料理を皆が美味しそうに食べてくれるのがとても嬉しいらしい。
そんなミルを警戒するような者はすでにおらず、昨日あれだけ警戒していたAランク冒険者達でさえ、いそいそとお代わりを貰いに行っている。
そんな様子を微笑ましそうに見ていたクリスに、グレアが声を掛けた。
「ところでクリス殿、この依頼が終わった後は、どういったご予定かな?」
「ん? あまり決めてないが……」
ニコニコと好々爺然としたグレアの様子に、しかし何かしらの作為的なものを感じたクリスは言葉を濁した。
「ほほう。ではまずは観光がてら、儂と一緒に我々の本拠地たるアリア教会本部に来てみてはいかがかな? 貴殿ほどの回復魔法の達人ならば、我々も学ぶべきところが多い、是非に本部の者達にも貴殿を紹介したいのじゃが」
大暴走に向けて一刻も早く天人二人と話し合いたいグレア。可及的速やかに二人にアリア様の墓参りを終わらせて貰いたいという魂胆が透けて見える。
「いや、依頼達成報告もあるし、まずは冒険者ギルドに寄りたい。宿も探さないといけないし―――」
「いや、達成報告はアーシャ君がやってくれるよ。これは冒険者ギルド直の依頼でもあるから見届け人は私でいい、遠慮なく行ってきなさい」
渋るクリスに被せるてアリストが言う。明らかにグレアへの援護射撃だ。
「いや、宿―――」
「ギルド直営の宿屋なら僕の名前で押さえておくよ。安心して行っておいで」
「教会にも宿舎はあるからそちらでもよいぞ。其方らには世話になったからのう」
「……はぁ。分かった分かった、そういう事ならご一緒させて貰うよ」
ニコニコと露骨に畳みかけてくる二人に、クリスは折れた。この男意外と押しに弱い。
勿論、押せ押せの二人に悪意を感じなかったというのもあるのだが。
「「イエーイ」」
「……ほんと仲いいなアンタら」
嬉しそうにハイタッチするおっさんと爺さんに、ぼやくクリス。
どっちも渋キャラなんだからそういう軽いノリは止めてほしい。
どうもこっちの情報が色々と筒抜けっぽいなぁ、監視でもされてたか。と、ようやく気付いたクリスは、げんなりしてミルの方を見た。
監視されるのはいい気分ではないが、アリアと同郷の自分たちは向こうにとってそれだけ重要なのだろうという事も分かる。
またアリストとグレアが非常に友好的というのも、げんなりしつつもクリスが腹を立てない要因でもあった。
ミルは冒険者と騎士団相手に、くるくると忙しそうに料理を作っている。
それはとても楽しそうで、クリスは色々と悩むのが馬鹿らしくなってきた。
ま、なるようになるだろ。とクリスは開き直り、そのままミルを見つめ続ける。
その口元はいつの間にか、また緩んでいた。




