出陣式
「どうですかアリアさん。カッコいい?」
「おぉ、めっちゃいいじゃん!」
出陣式当日の朝。
準備を終えたミルとクリスを出迎えたアリアは感嘆の溜息を吐いた。
室内には他に男装したフランシスカとアルト、そしてタマモが居る。全員ミルとクリスの装備に目を奪われている。
今日のミルの装備は、いつもの布のみでできたドレス型装備と違い、各所を金属で補強されたドレスアーマーだ。
銀色の下地に青色の紋章が刻まれたそれは、清楚かつ可憐でありながら荘厳さも合わせ持ち、まさに聖鎧と呼ぶに相応しい。
そして何より目を引くのは背中だ。純白の大きな翼が一対、ミルの背中に生えていた。
青と銀の鎧と純白の翼を纏った銀髪紅眼の美少女は、ミルの超絶美貌を見慣れたアルトとフランシスカさえ、思わず膝をつきそうになるほど神々しい。
クリスも普段の簡素な神官服とは違い、金と真紅の刺繍が美しい豪華な祭服。立派な主教帽といつもの知識神シエルの眼鏡が、クリスの鋭利な美貌をより一層引き立て、近寄りがたい程の威厳を醸し出している。
「うんうん! これなら十分箔が付くよ。バッチグー!」
「でしょー! 某戦乙女ゲーのコラボ装備なんだけど、見た目が気に入ってスキン化してたんです」
「でもそれ顔丸見えだけどいいの? 目立ちたくないならフルフェイスの冑でも被ったら?」
元々ミルの人見知りのせいで断られそうになっていた出陣式での出演。
普段の自分と分からないように演出をすると言っていたのに、顔出して大丈夫? とアリアが首を傾げると、ミルは「ちっちっちっ」と妙にイラッっとする仕草と顔で指を左右に動かし、インベントリから一つの仮面を取り出した。
「アリアリさん、それは可愛くないよ! だからそんな時はコレ!」
「それは……オペラマスク?」
ミルが取り出したのは両目だけを隠すタイプの白い簡素な仮面。オペラで怪人が被っているようなタイプの怪人の仮面だ。
それをミルはスチャっと装備し、片腕を腰に回し、もう片手の手の平で顔を覆うように構えた。
「これで解決! もう誰も私とは分からない!!!」
…
……
………
「ばっちり! 絶対バレないよ!」
たっぷりと時間を置いてから、いい笑顔でサムズアップするアリア。
アルトとフランシスカが「え!?」という顔をするが、褒められたミルは気付く事も無く満足げに頷いた。
「本人が納得したんならいいじゃない」と小声でアルト達に言い、何か面白そうだから放っておくことにしたアリアはクリスに向きなおった。
「クリスもなんか凄いよ。教皇より教皇っぽい」
「俺は逆にスキンを外しただけで、いつもの装備なんだがな」
肩を竦めるクリス。
彼の一張羅こと【聖アルテナの法衣】は、実はこんなに煌びやかで荘厳な見た目なのだ。神事の祭服としてデザインされたこの装備は、性能はいいのだが逆に煌びやかすぎて普段着にするには視界に煩い。だから、地味な神官服スキンで隠されていた。
ちなみに、アダムヘルのランクアップ時にミルのゲロまみれになったのもこの装備だ。当時生活魔法が使えなかったクリスが心で泣きながら必死に手洗いしたのが、限界値まで強化している影響か洗って干したらクリーニングに出したようにシワもシミもニオイも残らず綺麗になった。かなり乱暴にゴシゴシ洗ったが、並みの鎧より物理防御が高い布の耐久力は予想以上だ。
「ちなみに私の下は【女帝ヴィクトリアのドレス】です。翼はアクセサリ枠」
「へぇ。その翼は飛べるの?」
「【空転脚】使えば疑似的に飛べますけど、効果は落下速度がふんわり落ちるようになる程度ですね。風を受ければ横移動は出来ますけど、自分で移動や上昇は出来ません」
「微妙に使えるような使えないような。いやまぁ落下ダメージ減るなら需要はある、かな?」
「ところがどっこい。【闇ポタ】全盛期に、唯一ひも無しバンジーの対抗策だったので高騰しました。アンチバンジー勢と、普通に紐無しバンジーを楽しむエンジョイバンジー勢と、見た目が良いから欲しい勢でインフレした結果、お値段なんと1Gリールに」
「十億の翼……」
「個数限定の課金ルレのレアでしたしねー。まぁ私は当てたんですけど」
ドヤ顔するミルだが、当時は天井など無かったルレ黎明期。心と生活費を削りながら回し続けた苦い思い出である。
もうこんなクソルレ回さねぇ! と叫んだ次の月には、バイト給料日即日課金でうきうきとルレを回すミルの姿が。
ゲーム内でリソースを搾取する廃人は、悲しいかなリアルで搾取される側なのだった。
「私の場合、この装備と魔法の巻物の風魔法で疑似空中戦して攻城戦で無双してました」
「当時空中機動出来るスキルも装備もない中で、前線に突っ込んで風魔法で相手を牽制しつつ余波で高速移動の辻斬り俺TUEEEした結果、付いた二つ名が【暴風の戦乙女】。ちなみにギルドの会計に経費が掛かり過ぎると攻城戦五回目くらいで止められてたな」
「予算の半分をスクロールで溶かしたのは反省しています。だからその後に実装した【空転脚】を鍛えて似たような事出来るようになるまで、空中戦は封印したでしょ」
「何か良く分かんないけど、無茶苦茶してたのは良く分かったよ」
少数ながら戦場を荒らしまわった悪名高きギルド、【正面突破】。どいつもこいつも一癖も二癖もある奇人変人の集まりだったが、だからこそ一芸に秀で、嵌れば止められないほどの突破力を持っていた。
その最先鋒である金銀兄妹がミルとクリスだった事を薄くなった記憶の中で再びほんのりと思い出し、アリアは笑った。
そういえば、今日の銀と青の戦乙女と金と赤の教皇姿の二人は、セットのようによく似あう。
「金銀兄妹……いや今は金銀夫婦か。金銀夫婦のお手並み拝見と行こうかな」
■◇■◇■◇■
首都リネージュ上空。
ミルは戦乙女の装備で空中をぴょんぴょんしながら出番を待っていた。
ちなみに何故空中で停止しないかというと、ミルが空中機動に使っている【空転脚】というスキル、実は足場として実体化する時間が0.5秒しかないからだ。なので、空中に居続けようとするとずっとぴょんぴょんしなければいけない。
傍から見ればちょっと間抜けな姿だが、これが出来るのは総ユーザー数一千万とも言われるAAOの中ですら、空中機動に特化した一部廃人だけだったりする。
というのも、この【空転脚】というスキル、レベルMAXにしてようやく発動から足場生成までの時間がほぼ0秒となるのだが、それまでは発動にタイムラグが生じる。タイムラグはLv1の段階で5秒。それからLvを1上げるごとに0.5秒ずつ短くなりLv10が最大だ。そして足場のサイズは10cmx10cmと小さい。
スキルレベルを上げるためには、空中で落下中に5秒先の着地点を予測して発動し、0.5秒しか出現しない10cm四方の足場を踏まなければならないのだ。しかもこのスキル、両足が地面についていない状態でしか発動できず、発動中に体のどこかが地面に着くとキャンセルされてしまう。そして、ちゃんと足場を踏めないと熟練度が上がらない。
つまり、スキルレベルを上げようと思うと5秒以上落下出来る高さから落ちて、ピンポイントで足場を踏むということを続けなければならないのだ。
ちなみに、5秒以上落下できる高さというのは、ミルの体重で約高度100mである。足場を足の裏で踏めれば、どんなに速度が出ていようがダメージを受けないという温情はあるが、足の裏以外に当たると普通にダメージを貰う。付け加えると、5秒落下した時の時速は空気抵抗があっても120km/hを超えるので、当時の極VITでも即死した。そのダメージがどのくらいかというと、今のクリスでも階段で足を踏み外し脛を強打した時くらいの痛みを受けるレベルである。
……むしろ分かり難くなった。クリスさん硬すぎ。
この【空転脚】を教えてくれるNPCである、タラップ高地の仙人の居る場所の近くに、訓練用のリスポン地点を完備した高さ300mの巨大な滝があった。
巨大な滝なら、滝つぼに落ちれば失敗しても大丈夫じゃね? と思ったプレイヤーが数多くチャレンジしたのだが、精密すぎる物理演算が300mの落下と空気抵抗に耐える水を許容しなかったので、それなりの水量があっても普通に空中で霧散してしまい滝つぼは浅く、落ちたら当然のように死んだ。滝つぼの周りは侵入不可フィールドに設定されていたあたり、運営の悪意が垣間見える。
リアルすぎるヴィジュアルが売りのAAOでの転落死は普通に怖く、その難易度からも【空転脚】のレベルアップを試した人間の悉くは初期の段階で挫折したのだった。その場所、風光明媚で観光に持って来いな【白尾の滝】は、今でも自殺の名所として不名誉な語り継がれ方をしている。
当時ミルは、その滝を使わずにクリスの闇ポタ紐無しバンジーでその訓練をした。最初は天使の羽を装備してやってみたが、野外の為に上空の風で落下地点が定まらず全く成功しなかったので、ガチの紐無しバンジーで訓練をしたのだ。
三回に二回は地面のシミになる相棒を、人が来ない事を理由に選んだ野外のリスポン地点に出現した瞬間、作業のように闇ポタするクリス。愛どころか慈悲すらない二人の共同作業であった。
それにしても、目測でしか上空地点を指定できない紐無しバンジーポタで、高度や風の向きが毎回変わるのにも関わらず、三回に一回は成功させていたミルの空間把握力と状況判断力は当時から異常だった。
元々ミルは、リアルでもその二つが抜群に優れていた。球技でもすれば活躍できそうな才能だったのだが、生憎とリアルで体格に恵まれず、しかも乱視と近視が酷く眼鏡が手放せなかったので、運動神経はそこそこ良かったのだが生かす機会が無かったのだ。活躍したのは遠距離ゴミ入れとハエ叩きくらいだった。地味すぎる。
しかしそれが、VRMMOという環境で開花した。思い通り以上に動く体とぼやけもブレもしない視界、動体視力は並みだったがそれを補う思考速度加速。システム的に大剣二刀流が出来ないという枷を、何とかしようとした執念。それらが噛み合い、空間把握と状況判断とQAの極致ともいえるミル独自の戦闘スタイル、【不可視の剣界】へと至ったのだ。
そんなミルですら、デッド数は優に三桁に達した。一般人だとまず心が折れるのも分かるだろう。
しかしそれでも、十数回のレベルダウンと引き換えに、ミルは新しい翼を手に入れたのだった。
過去のクリスとの甘酸っぱい(?)思い出を思い出してニヨニヨしながらミルがぴょんぴょんしていると、中央通りを練り歩いていやってきた騎士団と兵士たちが、第二内壁の正門前にぞくぞくと集まってくきた。
第二内壁は貴族街と平民を別つ立派な壁だ。
首都リネージュは、王城から見て第一内壁内側に王宮があり王族が暮らし、その周りに上級貴族の住まいがある。そして第二内壁から第一外壁までが中級と下級貴族、第一外壁から第二外壁までが富裕層の平民、第二外壁から第三外壁までが平民と続き、第三外壁の外に貧民区やスラムが存在する。
内壁と外壁の違いは建国時に作られた壁かそれ以降に増築されたかだ。アルレッシオ聖王国の首都は、大陸一の国力を有するだけあって人口が多い。だが、それも元を辿ればアリアが興した国であり、歴史は最も新しく、昔は人口も少なかった。だが、次第に人口が増えるにつれ内壁だけでは人々を収容できなくなり、外壁が作られるようになる。
第三外壁は完成しておらず現在も五分の一ほど建築中で、国家事業として多くの労働者の飯のタネになっている。
今いる第二内壁北門の外側には、巨大な空間が存在している。
祭りや式典、闘技大会など様々なイベントで貴族平民両方が使うことの出来る多目的スペースだが、今回はそこが出陣式のメインイベントの会場である。
内壁内にある騎士団の詰め所と、外壁内にある軍の基地から町中を練り歩いて来た兵たちが、一同に会する。
【隠密】スキルで身を隠しながら、それなりの高度で跳ねているにもかかわらず、兵と、それの周りを埋める数倍の民衆が視界を埋め尽くした。
「僕、今からアレの前に出なきゃいけないの……」
お腹を押さえるミル。緊張のあまりまた腹痛を感じているらしい。だが残念な事に高度500mにトイレは無かった。
「はは、人がゴミのようだ……」
いつもの軽口にも元気がない。話をして緊張を解してくれる相棒も、演出の為に後で合流する事になっているから今はいない。
「うぅぅ。何とか人目を逸らせないかなぁ」
派手に登場して士気を上げる事が目的なのに、本末転倒な事を言うミル。
生憎の曇天の空を見上げて、まるで今の僕の心の様だと思う。今にも泣きだしそうな感じが特に。
その時、下からわぁと歓声が響いた。
千里眼で見てみると、どうやら聖王アルバートが凱旋門に似た正門の上、テラスのように飛び出したお立ち台に登場したらしい。
アルバートがサッと手を振ると歓声がピタリと止み、静寂が下りる。ミルはヘタレている聖王を何度か見ているのであまり実感はないが、この世界でトップクラスの畏怖と尊敬を集める威厳のある王だ。その統率力はすさまじい。
風魔法で増幅された声がこちらまで微かに聞こえてくる。
全部は聞こえないが、打ち合わせでは聖王自ら大暴走の説明と対策が話されているはずである。そして、それが終わると今回の対大暴走討伐軍の総大将をするアルトと、その友人としてフランの紹介が行われる。
実質的な総大将は近衛騎士団長と第一師団長を兼任するブルクハルトであるが、こういった場合に王族で成人した者がいると、その者が務めるのが慣例だそうだ。居なければ国王が自ら出陣する事もあるらしい。アリアが最前線で戦う者だった名残か、それとも能力主義でレベル上げが推奨されるお国柄故か。
フランシスカを紹介するのは全体への顔見せだ。
男装のフランシスカは線の細い少年に見える。それがいきなり王太子であるアルトの周りに侍るのだから、快く思わない者も出てくるだろう。
フランシスカは昨日の貴族の代表者達によるレベリングにも参加しており、ミルと共に……いや、貴族達+アルトと共にミルと戦い一緒にボコボコにされた。
プライドをへし折られて地面に転がる貴族達と違い、ボロボロになりながらもアルトの次にミルに相対する時間が長かったにも関わらず、最後まで立っていたフランシスカは既に彼らには一目置かれる存在になっていた。
フランシスカの魔法と回復に助けられた者も多く、同じ戦場に立ったという一種の仲間意識と友情のような物まで生まれ、レベリングの後に養子縁組の申し入れが何件か有ったほどだった。
しかし、上層部に顔が売れても下の者は分からない。
だからこそ、アルトとフランシスカが親友で、かつ王族からも認められた実力者だという事を大々的に示し、フランシスカの後ろに王族が控えている事を内外に示した。そして、そうする事によりフランシスカ自身を囲い込む意味合いも当然含まれている。
フランシスカの身の安全と囲い込みを同時に行う。彼女の知らないところで、着々と外堀は埋められていた。
朝、フランシスカと別れる際に相変わらず『二束三文の命』と空虚な笑いで悟りを開いていたフランシスカだが大丈夫だろうか。ミルとクリスの出番は彼女の演出から始まるのだが。
千里眼に映るフランシスカが天に向かって魔杖を掲げる。
それと同時に、空に七色に輝く光球が無数に瞬いた。
フランシスカの本気の本気。獣王ターニャに撃とうとしたモノより更に多い、【極光の嵐】|with【姦しの魔杖】《の三乗》×7.
夜空に見える星は大体二千個と言われているが、フランシスカによって白昼に出現した星はその十倍近い物量を持って、大観衆の度肝を抜いた。曇りだからこそ、その迫力と美しさが際立つ。
ところで、黒髪黒目に黒い軍服とマントで姦しの魔杖を持ったフランシスカって、めっちゃ魔王っぽいんだけど、勇者の側近が魔王ってどうなの? とミルは現実逃避気味に思った。
そして、その星屑は予定された手筈通り、空中のミルに殺到し、光が弾けた。
クリス謹製の防御結界の中で、ミルその光を眺める。物量が凄まじいとはいえ、【極光の嵐】は所詮威力の落ちた初級魔法。クリスが無意識に気合を入れて張った、完全にオーバースペックの【七芒防御結界】は小動もせず、その全てを受け止め、ミルの髪の毛一本にすらダメージを負わせる事は無かった。
相変わらずいい仕事をするクリスの魔法に、たとえ恋愛感情が無くとも自分を大切にしてくれている事を感じて、ミルの緊張は不思議と収まった。
この光が収まったら、自分の出番だ。さぁ、覚悟を決めよう。
■◇■◇■◇■
その光の狂乱は、首都の何処からでも見ることが出来た。
出陣式を観覧に来た民衆も、そうでない人々も、一様にぽかんと口を開けて空を見上げる。
そして空を見上げていた全ての人々が、光が収まったのち、そこに純白の翼を背負いし戦乙女を目撃した。
翼を広げ、光臨を纏ってゆっくりと天から降りてくる天使。
その姿は余りにも神々しく、天人の降臨を疑っていた者達にすら、新たなる天人の出現を確信させるに足る光景だった。
天使の手に出現する、白く輝くひと振りの大剣。
天使が身の丈を超えるそれを一閃させると、今にも泣きだしそうだった曇天に一直線の切れ目が走り、光が降り注いだ。
その奇跡を、全ての者が目撃し、目に焼き付けた。
中には感涙に咽び、神に祈るがごとく膝を付いて手を組む者もいた。
世界の命運を掛けて戦う者達を送り出す、出陣式という晴れ舞台。
その門出が、今にも泣きだしそうな曇天であることに、神ならざる身で天候はどうにもならぬと諦めながらも、不安に感じていた者達も多かった。
その雲を、天使は一刀の下に切り裂いたのだ。
人々にはそれが、未来への不安を切り裂き、希望を切り開く道しるべに見えた。
天使が、門の上に降り立った。
そして手に持つ大剣を足元に突き立てる。
その時、まばゆい光が見る者の目を焼いた。
しかし、目が眩んだのも一瞬。すぐに再び天使を見れば、その背後に大きな人影。
天使と近しく寄り添うその姿は、この者もまた天人であるのだと、無言のままに全ての者に知らしめる。
荘厳な祭服を纏ったその人物は、黄金に輝く美しい祭杖でひと打ち、地面を打ち鳴らした。
途端、地面を埋め尽くす巨大で精緻な魔法陣。
驚く大衆に、祭服の人物の言葉が風に乗って届く。
―――求めよ、さすれば与えよう。
―――この世界の者達が試練に打ち勝てるだけの、力を、知恵を。
―――故に、我らは天より降りた。
―――この世界を守り育むべきは汝らである。
―――此度我らは手を貸し与えるが、乗り越えるのは汝らの力である。
―――我らが与えれば、汝らは必ず試練を乗り越えられよう。
―――願わくば、試練を乗り越えた上で、汝らが我らに頼る事無く、己が足で立ち未来を繋げん事を。
―――では行こう。汝らの戦場に。汝らと共に。
最後に二人の天人が声を重ね、共に剣と杖を天に掲げると、その先端が光を放つ。
そして、次の瞬間。七万五千の大軍団は、その姿を忽然と広場から消失させた。
これで三章【首都リネージュ】は閉幕し、四章【前線基地】へ移ります。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
しばらく書き溜め期間に入りますので、続きは気長にお待ちください。
合間にぽつぽつ閑話を小出ししてから、本編開始する予定です。
感想あまり返せていませんが、全て目を通して元気を頂いています。ありがとうございます。
また、誤字修正も感謝しかありません。とても助かります。重ねてありがとうございます。
最後に、面白いと思って貰えたら、ブクマ・評価・感想などしてもらえると、とても励みになります。よろしくお願いします。




