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冒険者ギルドと職業


「それではギルドカードに魔力の登録を致しますので、こちらのプレートに魔力を通してください。流す魔力は少量で結構です。余剰分の魔力は光に変換されて消費され、必要量以上を流しても魔力の無駄になりますので、最初は少量ずつ流し、ギルドカードが軽く光ったらそこで止めて下さい」


 完全に受付が事務的になった受付嬢アーシャからトランプサイズの金属プレートを受け取る。

 プレートは名前とギルドランク、Gptギルドポイントそして発行支店名のみが入った、非常に簡素な見た目だ。

 なんとなく嫌な予感がしたクリスは、出来る限り魔力を絞って通すが……鈍色(にびいろ)のギルドカードは、二人が魔力を通すと目もくらむような閃光を発し。


「目があ! 目があ!!」


 未だに二人に注目していた周りの冒険者とギルド員の目に大ダメージを与えて収束する。


「……少しずつ流すようにと説明したはずですが」

「……すまない。加減を間違えたようだ」


 運よくまばたきをしていたおかげでダメージを最小限に抑えることができたアーシャと、持ち前の自然回復力で瞬時に網膜を回復させるクリスとミル。

 実は先ほどかけた【安息(リラックス)】の自己回復力向上効果もアーシャの目へのダメージ回復に一役かっているが、アーシャ本人はもちろんクリスすら気付かなかった。


「はぁ……たまにいるんですよね。そうやって無駄に光らせて自己主張したがる新人さん」

「いや、そんなつもりはなかったんだが……」

「デコトラ好きなヤンキーみたいね」

「お前はちょっと黙ってようか」


 どうでもいい上に通じるはずのない感想を述べるミルに、どっと疲れるクリス。

 アーシャの反応が既婚者と分かったとたんに冷たくなったのも胸に刺さる。

 そんな三人の後ろで、仕事をしていたおかげでダメージの少なかった青年と年配のギルド員がひそひそと。


「すっげぇ光りましたね。ギルドカードってあんなに光るもんですっけ?」

「うーむ……前に酒場でAランクの大魔導士ハイウィザードが酔った勢いで光らせていたが、あんなに光ってなかった気がするな。並みの魔術士マジシャンでは全力で流しても目潰しになるほど光らんよ」

「ほー。少なくとも超一流の悪ふざけ程度の魔力はあるって事ですか」

「そうだな……あー直視しとらんかったのにまだ目がチカチカするわい。まぁ期待の新人といったところだな」

「気にかけときましょう」


 といった会話をして地味に二人の評価が上がっていた。


「これで新規登録は完了です。これでギルドカードにお二人の魔力が登録されましたので、このカードが身分証として機能します。

 冒険者ギルドだけでなく、外壁の門を通る際や、冒険者割りのある宿屋や食堂などでも身分証として使えます。

 紛失した場合は再発行に手数料がかかりますので、大切に保管してください」


冒険者割りというものはゲーム時には無かったが、学割みたいなものだろうと判断し流すクリス。実際似たような物である。


「続いて冒険者ギルドをご利用いただくにあたっての注意事項に移らせていいただきますが、よろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「まず、お二人とも新規登録ですので、Fランクからのスタートになります。一般的に駆出しとされるランクで、新規登録者は王族貴族であろうとスラム出身者であろうと平等にこのランクから始めるようギルド規定にありますので例外はありません」

「それでは王族貴族から文句がでるんじゃないのか?」

「冒険者ギルドは国家に属さない独立組織ですので、国家内での地位や権力によって実力に合わないランクを与えることはギルドの信用に関わります。よって例外はありません」

「……ほんとうに?国家に属さないといっても、その国で営業するならそんな権力者の顔をつぶすようなことを国が許すとは思えないんだが」


 ゲーム内では一部のイベントを除いてシステム的に公平な冒険者ギルドだが、これが現実なら運営するにあたって色々としがらみや国際問題的なものが出てくるのは当然である。

 現実ならゲームのような公平なシステムというのは無理と確信するクリスに、アーシャは数瞬沈黙すると。


「……少なくともアルレッシオ聖王国では、建国王であるアリア様が元冒険者であり、そういったもろもろを乗り越えて建国された経緯がありますので、王族や貴族もそれに従うべし、といった風潮があるため、冒険者ギルドは理想的な独立組織として機能しております。それに嘘偽りはございません」


 そっと目をそらしながら、しかし後半は自慢げに言うアーシャに、他国ではそうでもないんだろうなと察するクリス。


「説明に戻ります。Fランクの主な仕事ですが、基本的に町の中での軽作業や配達です。採取依頼や討伐依頼は最低でもEランクから、護衛依頼や都市間の配達依頼はDランクからとなります。

 Cランク以上になりますと、一人前の冒険者と見なされ報酬の高い高難易度の依頼が増え、ダンジョンに入ることもできるようになりますので、冒険者によってはダンジョンでの収入で生活をしている方もいらっしゃいます。

 また、まだ先の話にはなりますが、多数の人命や国家の存亡に関わる緊急依頼に関して、Cランク以上は参加の義務がありますのでご注意ください」

「無視したらどうなるんだ?」

「基本的にそういった強制依頼は高い報酬が用意されていますので、無視する冒険者はほとんどおりません。

 ただ、明らかに故意に不参加をした場合は、適性なしとしてランクの降格処分が行われます。

 また、一度降格処分をされますとペナルティが付きますので、再度同ランクに上がるのは一回目以上に困難になります」

「すでに依頼を受けている場合は?」

「よほど緊急性の高い依頼以外は、緊急依頼のほうが優先度が上になりますので、一時的な依頼の停止や期間の延長を冒険者ギルド側で依頼者に交渉いたします。

 緊急依頼参加のための依頼の延長や一時停止で、冒険者側に不利益が生じることはありませんので安心ください。」


 クリスの質問によどみなく答えるアーシャ。

 普段は駆出し()ランクの新人相手に緊急依頼の説明などしないのだが、話の流れと場の雰囲気でそこまで説明してしまった。

 15歳で冒険者ギルドへ就職し、雑用から受付業務に移ってまだ半年程度だが、そんな綿毛も抜けきらないようなひよっこでも察せるほど、二人の実力はダダ漏れなのである。


「続きまして、ギルドランクの昇格条件に関して説明させていただきます。

 冒険者ギルドの掲示依頼には、難易度に応じてGpt(ギルドポイント)が設定されています。このGpt(ギルドポイント)は依頼を達成すると加算され、失敗すると減算されます。どのランクでも+10Gptからスタートし、ランクごとに設定されている必要Gptを溜めることが昇格条件の一つとなります。

 Gptは依頼の該当ランクの難易度ごとに設定されていますので、ランクが高いほどGptが高いということはありません。例えば、Fランクの配達依頼などは大抵1Gptですが、Cランクの討伐依頼で難易度の低いものも1Gptです。あくまで該当ランク内での難易度に対してGptが設定されますので、最高難易度でも10Gptを超えることはほとんどありません」


 該当ランクで10Gptを超えるような高難易度の依頼は次のランクに回されるから当然と言えば当然である。

 例外として、拘束時間が著しく長い依頼などは10Gpt以上つく場合がある。長期間の護衛依頼や、超遠距離への配達がそれに該当する。と説明が続いた。


「なるほど、昇格に必要なGptはどのくらいなんだ?」

「FからEのランク昇格に100Gpt、EからDのランク昇格に200Gpt、DからCのランク昇格に300Gpt、といった具合に増えていきます。

 また、FからEランクの昇格はGptさえ溜まれば自動的に行われますが、Eランク以上の昇格には昇格試験があり、Gptが溜まっても昇格試験に合格しなければ昇格できません」


 余談だが、Cランク以上の昇格試験はかなりの難易度を誇り、必要Gptを満たしても昇格試験に合格できず同じランクでくすぶっている冒険者はかなり多い。

 どこの世界でも上に行けるのはごく一部なのだ。


「降格については?」

「どのランクでも依頼を失敗すると、その依頼分のGptがマイナスされ、0Gptになると降格になります。

 Fランクの場合は補習を受けるだけで、また+10Gptからのスタートですが、Eランク以上で降格しますと、一ランク下の必要昇格Gptの半分から再スタートになりますので、かなりの回り道になります。ただしその場合は、一度昇格試験に合格していますので、再試験はありません。Gptさえ貯めれば昇格できます」

「Eランクから降格するとFランクの50Gptからスタート、CランクからだとDランクの150Gptからってことか」

「その通りです。ただし、先ほど説明しました適性無でのランク降格では、Gptが+10からのスタートとなり、さらに再昇格に必要な昇格Gptが2倍になります」

「だいぶ厳しい条件が付くんだな」

「Cランク以上の冒険者は、冒険者ギルドの顔でもあります。それ相応の節度と対応が求められます。そして、一般の冒険者の通常の()()()()()()()()は、よほど身の丈に合わない依頼を連続で受けない限りなりませんので安心してください」


 余程の考え無しでない限り、降格が見えてきたら無難な依頼をして安全マージンを取るので当然と言えば当然である。

 その余程・・が少ないなりにそれなりの数いるのが、冒険者という職業でもあるのだが。


「依頼失敗の降格は?適性無しの降格と依頼失敗の降格以外もあるのか?」

「普段の素行が著しく悪かったり、他の冒険者や冒険者ギルドに重大な損害を与えた場合などは、ペナルティとしてGptのマイナスが行われることがあります。むしろ降格理由として一番多いのはこちらですね、残念なことですが……度が過ぎるとギルドからの追放処分もあり得ますので、くれぐれも注意して下さい」


 血の気が多い者が多く、誰でもなれる冒険者に付きまとう弊害と言える。

 そうやって追放された者たちが、アンダーグラウンドな闇ギルドに所属したりするのだ。


「ここまでで、何か質問はありますか?」

「いや無い。続けてくれ」

「では、次に依頼を受ける手順について説明いたします。

 基本的に、掲示板に張られている依頼書をあちらの受付カウンターへギルドカードと一緒に提出して貰うだけです。薬の精製や特殊な建築現場など、特殊スキルがいる依頼は受付カウンターで受諾可能かどうか確認いたします。常時出ている討伐依頼や採取依頼、複数人または数パーティで応募可能な依頼などは、複数枚依頼書が重ねて張ってありますので、一番上の一枚だけ取るようにしてください」

「必要なスキルを持っていない者が依頼書を持ってきた場合は、どうやって判断するんだ?」

「特殊スキルのいる依頼は、【判別のオーブ】と言われるマジックアイテムによって判断します。

 あっ、これはあくまでも必要な特殊スキルやステータスを持っているかどうかを、成否のみで判断するマジックアイテムなので、それによってスキル構成などの個人情報が分かるわけではありません。ご安心ください」


 ゲームではなかった要素に顔を曇らせるクリスに、個人情報を気にしたと勘違いして付け加えるように補足するアーシャ。

 ゲーム時は、依頼に必要なスキルを持っていない場合、そもそもシステム的に受けられないようになっていたので、このようなマジックアイテムは必要なかったのだ。

 ゲームが現実になり、冒険者ギルドを人間が運営し、ステータスやスキルを外部から見れない場合はそういったマジックアイテムの需要が生まれ、開発されるのも頷ける。必要は発明の母である。

 また、思いのほか個人情報の取り扱いに慎重なのも、日本などとは比べ物にならないほど死が身近にある世界で、己の情報を秘匿するのは当然だからである。情報とは冒険者にとって生命線なのだ。


「依頼の掲示されている掲示ボードはランクごとに分かれています。入口から見て手前からF・E・D・C・B・Aの順で並んでいますので、ご自分の受けることができるランクを間違えないようにお願いします。

 また、あまりオススメは出来ませんが、ご自分のランクの上下1ランクの依頼は受けることができます。その際、報酬は変わりませんが、一つ上のランクの依頼のGptは倍に、一つ下のランクの依頼のGptは小数点切り捨てで半分になります。1ランク下の1Gptの依頼ですと、成功してもGptは得られませんのでご注意ください」

「Sランクの依頼ボードが無いようだが?」

「最高ランクの依頼などそうそう出てくるものでもありませんし、出てきたとしてもほぼ確実に指名依頼で出されますので、専用の掲示ボードは設置しておりません」

「オススメできない、というのは?」

「上のランクですと、単純に実力に見合わず危険が大きいからです。一人前になりかけのE~Dランク冒険者にありがちですが、自身の実力を過信し無茶をするケースが多く見受けられます。

 ギルド側としましては、依頼の受諾については完全に自己責任ですので、規則にのっとった依頼の受諾申請は否定いたしません。しかしながら、依頼失敗するだけならばともかく、無理をして死亡したり、再起不能の怪我を負い冒険者を続けられなくなれば、ギルド側としても人材の損失ですので、オススメしておりません。

 下のランクの場合は、上のランクの冒険者が該当ランクの冒険者の仕事を奪ってしまう事を防ぐためです。こちらは逆に安定志向の冒険者にありがちですが、ランクが上がっても今まで受けてきたような危険の少ない下のランクの仕事ばかりしていては、当人の実力が付きませんし、それによって下のランクの依頼が枯渇し、下のランクの冒険者が上のランクの依頼に背伸びをせざるを得ない状況になるというのも、ギルド側からすれば人材の損失に繋がります。

 そのため、自分の該当ランク外の依頼を失敗した場合は、上下どちらもGptのマイナスが二倍になりますので、冷静に自分の実力と依頼内容を検討したうえで、依頼を受けて頂きますようお願いします」


 最高ランクがSということに疑問を覚えたが、考えてみればSSランクが出来たのが3年前の【神々の箱庭】アップデートの時であったし、SSSランクに至っては半年前の【裏世界(ディープワールド)】アップデートであったことを思えば、それ以前の世界情勢としては納得できた。

 ちなみに二人は、SSランクにしてもSSSランクにしても溜まりに溜まっていたGptで即日昇格している。

 SSSランク昇格でリセットされたGptも、こちらに来る前ですでに5桁に届こうかというほど溜まっていたことを考えれば、どれほど廃人か分かるというものだ。

 上下ランクの依頼を受けるにあたっての仕様もゲーム通りだったが、ギルドがオススメしない理由が気になったので聞いてみたが納得できる理由だったので、特に問題はない。


「ここまでで、何か疑問や質問はありますか?」

「いや大丈夫だ。続けてくれ」

「畏まりました。続いて職業ジョブの説明に移りますが、お二人は既に何かしらの職業ジョブについていらっしゃるようにお見受けしますが、職業ジョブについての説明は必要ですか?」

「念のため頼む」

「畏まりました。基本的に職業ジョブはある程度経験を積むことで自然につくことのできる一次職と、その職を極めることでつくことのできる上位職があります。

 近接武器を使う戦闘の経験を積めば戦士や盗賊シーフの一次職につけ、魔法を習得していけば魔術士マジシャン精霊術士エレメンタリストにつくことができます。

 基本的に戦闘職と言われるのは前衛の戦士・盗賊、中衛の射手アーチャー精霊術士エレメンタリスト、後衛の魔術士マジシャンと僧侶の6種類です。

 また戦闘職以外にも、商人や鍛冶師なとの非戦闘系の職業も多くあります。全ての職業をここで説明すると時間がかかり過ぎますので職業の詳しい内容や習得方法を知りたい場合は、専用の相談窓口をお訪ねください」


職業ジョブの仕様もゲーム時と違いはないようだ。


職業ジョブにつきますと、ついているジョブ固有のスキルを覚えることができます。スキルには習得すれば常に発動し続けるパッシブスキルと、スキルを使用することで発動するアクティブスキルがあります。

代表的なパッシブスキルですと、戦士の【片手剣修練】、盗賊の【罠探知】、魔術士の【魔力増強】あたりが有名ですね。

アクションスキルの方は、戦士の【強撃スマッシュ】、魔術士の【火の矢ファイアロー】などがあります」

「スキルの習得条件は?」

「これも経験を積めば自然と習得できます。戦士で片手剣を使い続ければ片手剣修練が習得でき、大剣を使い続ければ大剣修練が習得できます。魔術士マジシャンの場合は先輩に弟子入りしてスキルを教えてもらうか、独学で魔力修練からですね。スキルがなければパーティも組めませんし」

「戦士の職業で魔力修練するとどうなるんだ?」

魔術士マジシャンのスキルが発動するころには、魔術士マジシャンの職業に変わっていますね」

「戦士で習得したスキルを魔術士マジックユーザーで使うことは?」

「使用できます。上位ランクの冒険者には、戦士でありながら魔法を使ったり、近接戦闘が出来る魔術師なども珍しくありません」


なるほど。まるで知っていることを再確認している様を装いながら、クリスは神妙な顔で一雫の冷や汗を流した。

というのも、ゲーム時は一度職業を決定したら、ステータス画面で職業ジョブを変更するまで、その職業用の装備しか装備できず、スキルも同様にその職業の物しか習得できなかったからだ。

AAOアルトアルカディアオンラインの仕様で、Lv100毎にセカンドジョブ、サードジョブと職業(ジョブ)を増やしていくことが出来るのだが、増やした職業(ジョブ)はLv1からのスタートで、その職にあったステータスで再育成しないといけないのだ。

 経験値は、ファーストジョブしていても自動的に同じだけセカンドジョブに入るので育成は楽なのだが、ステータス画面で職業ジョブを変更するだけで同じキャラで前衛から後衛まで幅広く対応できるため、その分その職業で出来ることは限定されていた。


 しかし、この世界では別の職業ジョブのスキルも問題なく使えるらしい。

 考えてみれば、ゲームのように枠にはまった育成など現実では不可能であるし、現実の戦士だって弓を使うことは出来ただろう。そこにあるのは得意か不得意かということだけである。

 ということは、こちらの人間はゲームで言う前衛や後衛の概念に囚われない、かなりトリッキーな動きをしてくると思っていいい。

 ステータス画面が開けないため、職業ジョブを変更できない今の二人には、いくらLvが隔絶しているといってもこちらの世界の人間に油断できないと言うことだ。

 気を引き締めるクリスに、アーシャから更なる爆弾が投下された。


「伝説の初代聖王アリア様などは、聖騎士クルセイダーでありながら、上級攻撃魔法や上級神聖魔法なども使いこなしたと伝承が残っています」


 あれ、ちょっと待て、ちょっと待て!

 同じプレイヤー(アリアリさん)がやっていた!?

 と言うことは、()()()()()()()()()()!?

 

驚愕の事実に愕然とするクリス。

もし、自分たちにもできるのならチートというレベルではない。

 これはまず門で貰った【アリアリの書|(クリス命名)】を熟読してから冒険者ギルドに来るべきだったと後悔するが、時すでに遅し。

 冒険者ギルドの利用方法の細々《こまごま》した注意点の説明に移ったアーシャの話を聞き流しながら、鉄仮面ポーカーフェイスを維持する。

今日だけでかなり顔面筋の頑丈さ(VIT)も上がった気がするクリスだった。





「すまん。待たせたお二人さん」

「あぁギースか、そっちの準備は終わったのか?」

「おう。個室を取って用意してある。そっちはどうだ?」


 そんな時ようやく手続きが終わったらしく、ギースが現れた。

 そろそろ顔面筋が微笑のまま釣りそうになっていたクリスは、これ幸いとアーシャの方を見る。


「大まかな説明は終わりましたので大丈夫です。最後に一つだけ。

 冒険者ギルドへようこそ。お二人の冒険に幸多からんことを」

 

 にっこりと魅力的な笑顔で言うアーシャ。


「ありがとう。これからよろしく頼むよ」


 それにクリスも作り笑いでない笑顔で答え、冒険者登録を完了した。





「……シャ?……アーシャ?……アーシャ!」

「……っは!?」


 クリスとミルが受付を離れて、個室に消えるのを茫然と見ていたアーシャは隣の同僚の声に我に返った。


「どうしたのよ、ぼーっとして?」

「……あの笑顔ヤバイわ。ヤバすぎるわ」


 完全にクリスの笑顔に当てられて、頬を染めるアーシャ。


「しっかりしなさいな。相手は既婚者よ?横恋慕なんて不祥事やらかさないでね」

「別に貴族とかお金持ちなら奥さん一人って事ないじゃない! あの笑顔を向けてもらえるなら側室でも妾でも愛人でもなんでもいい気がするわ! 私頑張る! 頑張るよ!!」

「……あーこれダメなやつだ」


 ぐっと拳を握り、間違った方向に決意を固めるアーシャに、ため息しか出ない同僚だった。




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[一言] 続きが楽しみで5センチくらい浮いて待ってます。
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