最終章 旅立ち
冬彦三は世界を放浪する旅に出る事を決めた。他にも超越能力者がいるかも知れないからである。さらに、冬彦三は世界中を旅する事で、自分を高めようという気持ちもあった。他の禁呪の飴やその能力を得た者を探しながらも、自由気ままに旅を続けた。
冬彦三の思った通り、他の超越能力者と曹禺した。彼もやはり連続殺人犯である。
「不和九!なぜこんな真似をしたんだ!」
冬彦三は地獄の底にいる鬼のような剣幕で不和に凄んだ。不和は地獄へ死者を誘う小悪魔のようなあざ笑い顔で答えた。
「因果応報だ。彼らは僕を散々コケにしていたからね」
「いじめられた復讐という事か?」
「そうだよ」
不和は冬彦三を指さし、迫真の笑みで即答した。不和の迫力に冬彦三も負けじと威圧するように不和を問いただした。
「だが、被害者の中にはお前と関わり合いのない人間も多数いたぞ!」
「確かに。関りはない。だが、みな会った事はあった」
不和は冬彦三の疑問に顔芸のような笑みでハイテンションで答えた。
「僕とすれ違った時に『臭い』だの『キモイ』だの言った奴らやたまたま同じ店やバスに居合わせただけなのに僕を侮辱する会話をしたり、あざ笑ったりした奴らにも制裁を下してやった」
「マジで!?」
冬彦三は出目金のように目を飛び出して驚いた。因果応報というにはあまりにも薄い殺害動機である。不和はその反応をみて楽しそうに補足した。
「僕の鋼玉の飴で得た能力はサーチ能力でね。僕を少しでも馬鹿にした者を過去の記憶から的確にサーチし、現在の居場所までサーチする事ができた。おかげで僕を一度でも馬鹿にした者たちを全員殺す事ができた」
「そんな軽い動機で人の命を奪ったというのか!」
「人を傷つけるような発言をする方が悪い!そうは思わないか?」
不和は落ち着いた表情になり、冬彦三を諭すような語調で語りかけた。冬彦三は一理あるとは思った。
「確かに心無い発言をする人間は許せない。初対面の人間に己の好き嫌いの感情だけで人を平気で傷つけるような発言をするような人間は性格が悪いと言わざるを得ない。だが、性格が悪いだけで殺すなんて許されるわけがない!」
冬彦三は日本の天子からの国書を読んだ煬帝の如く激怒した。それに刺激されたのか、不和も怒り狂ったように怒鳴り返した。
「僕のプライドは宇宙一高い!僕のプライドの高さは宇宙一だ!僕のプライドを少しでも傷つけた者は誰であっても許さない!!」
そう。不和はプライドが非常に高いのだ。元々高かったプライドは、鋼玉の飴の能力を得た事でさらにエスカレートしたのだ。そして不和は宇宙一のプライドを自称するようになった。彼のプライドを少しでも傷つけた者は生かしておけない。それが彼を連続殺人に駆り立てた動機である。
「僕を少しでもバカにしたものには制裁を与える!」
「今度は僕がお前に制裁を与える!」
冬彦三は戦闘形態になり不和と交戦した。冬彦三は瞬間移動を駆使し、不和に攻撃を試みる。しかし、不和のサーチ能力で、尽く瞬間移動の場所を見抜かれてしまう。
それでも冬彦三は諦めない。大蛇の如く執念深く食らいつく。
「僕は超越能力を悪用する者を絶対に許さない!!!」
「ほざけええええええええ!!!」
こうして冬彦三は能力を悪用する超越能力者たちと次々と戦いながら旅を続けた。
「僕の冒険は終わらない。これからも旅を続け超越能力を人の為に使う!」
冬彦三は人々の為に邁進した。冬彦三の冒険はまだまだ始まったばかりだ。
冬彦三はこれからも冒険を続けるだろう。その命がある限り…。