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5章 金剛石の飴の能力者

 松子を倒した後も、美人を狙った殺人事件は止まなかった。しかも、その殺人事件の被害者は全員肉を剥がれているのである。

 被害者が血を抜かれていたためヴァンパイア連続殺人事件と呼ばれていたが、被害者が肉を剥がれる様になったため、その殺人事件は猟奇的美人連続殺人事件と呼ばれるようになった。


「ヴァンパイア連続殺人事件の犯人が松子ちゃんだったなんて驚いたなぁ」

「しかし、松子が死んでも、美人連続殺人事件は止まらない。それに井森ちゃんを殺したのは松子じゃなく美人連続殺人事件の犯人だ」

「井森ちゃんを殺した真犯人はいったい誰なんだろうなぁ」


 冬彦三はため息をついた。土路男は冬彦三を励まそうとする。


「でも松子ちゃんを倒したおかげで、ヴァンパイア連続殺人事件の被害者がこれ以上増えなくて良かったじゃないか」

「人が立ち入らない荒地におびき出されて、首を絞められて殺されているという同じ手口だったからてっきり同じ犯人だと思ったんだがなぁ」

「それにしても、自分の髪の毛で首を絞められて殺されるなんて井森ちゃんも気の毒だよなぁ」


 土路男は井森の殺害方法に憐みの念を述べた。土路男のその言葉に、冬彦三はハッっとした。


「なぜ君がそんな事を知っているんだ!それは僕しか知らない情報だぞ!」


 確かに井森の首には井森の髪の毛が巻き付けてあった。

 しかし、冬彦三は井森の首から髪の毛を解き、井森の髪の毛を形見として取っている。そのため、井森を殺した凶器を知っているのは冬彦三と犯人だけである。


「まさか…ドロちゃん…君が美人連続殺人事件の犯人だったのか!」

「い、いや…」


 冬彦三は真犯人が土路男だった事に内心酷くショックを受けていた。しかし、その衝撃を押さえて土路男を問いただした。

 土路男はしどろもどろだ。土路男は全身に鳥肌が立っており、明らかに目が泳いでいた。


「オラじゃない…オラじゃない……」

「とぼけるなんて往生際がわるいぞ!」

「オラは関係ない!オラは関係ない!」

「じゃあなぜ僕以外犯人しか知らない井森ちゃんを殺害した凶器を知っていたんだ!」


 冬彦三は真犯人の正体は衝撃だったものの、落ち込んではいなかった。松子に続いて2回目だからである。

 冬彦三は慣れた様子で土路男に凄んだ。


「ひゃーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!」


 土路男は突然、狂ったような笑い声を挙げた。まるで笑いダケを食べたかのようなバカ笑いである。

 冬彦三は土路男の突然の豹変に仰天した。土路男は壊れたテープレコーダーのように笑い続けた。


「そうだ、オラが美人連続殺人事件の犯人だ…」


 土路男はついに開き直った。土路男はついに自分が犯人である事を認めたのだ。

 土路男は笑い上戸のようにヘラヘラ笑い続けている。冬彦三はそんな土路男を一喝した。


「ドロちゃん!なぜこんな酷い事をしたんだ!」

「喰った」

「え?」

「え?」


 双方驚いた。冬彦三は土路男の言っている意味が理解できなかった。一方で土路男は冬彦三が自分の話を理解できない事に驚いた。

 土路男は改めて丁寧に説明しなおした。


「食べる為に殺したのさ。人間の肉をどうしても食べてみたくなってな。どうせ食べるなら美女の肉が美味しそうだと思ったから美女だけを狙ったんだ」

「気は確かか?!」

「もちろんさ!美女の人肉は美味でな。病みつきになったよ。一度食べてみたら止められなくなった」


 冬彦三は度肝を抜かれた。今まで倒してきた殺人鬼たちの動機の中でも最も狂気に満ちた動機だった。

 土路は美女を豚や鶏などの家畜と同じ目線で見ていたのである。


「まさか本当に食べる為だけに井森ちゃんを殺したというのか!?」

「アイツのお肉は柔らかくって美味しかったぜぇ…まだ冷凍保存して残っているからオメーも喰ってみっか?」

「ふ、ふ、ふざけるな!!」


 冬彦三の怒りは火山が噴火して水蒸気爆発でも起こしたように限界突破した。

 しかし、土路男はまだヘラヘラと笑っている。


「美女の人肉ほど美味な物はないぜ」

「人間の所業とは思えんな!」

「オラは神なり」

「お前のどこが神なんだ!」

「今に分かる」


 土路男は自信満々である。冬彦三を倒す自信があるのである。土路男はかなり図に乗っていた。

 土路男はまるでイタズラっ子が武勇伝を語るかの如く得意げに喋る。


「オラは人喰い神だ!」

「井森ちゃんの仇は僕がとる!覚悟しやがれ~!!!」


 冬彦三は戦闘形態に変身した。しかし、ここでは戦わない。

 二人は戦いの場を廃村になった廃墟の街に移動した。二人ともまだ冷静である。関係ない人を巻き込まないで済む場所で戦う事にしたのだ。

 こうして誰も巻き込まぬ場所で、二人の大激突が始まった。


「松子はオメーの漫画を読んでいなかったんだったな。だからオメーが超越能力者ハイパーエスパーである事も知らなった

 だが、オラは違うぞ!オメーが超越能力者ハイパーエスパーである事もオメーの能力も全て知っているぞ!」


 これが土路男の余裕の訳である。土路男は飛び上がった。土路男は飛行能力があるのである。

 冬彦三は土路男のすぐそばに瞬間移動した。冬彦三は口から炎を噴いた。

 しかし、土路男は目にも見えぬ高速飛行で回避した。土路男の能力は超高速飛行なのである。


「ほぉ!漫画に描いていなかった能力も使えるのだな」

「当たり前だ!あれから何年経っていると思っているんだ!」

「オラは金剛石の飴の能力者!オラは風神だ!北朝鮮で手に入れた飴の力を思い知れ!」


 そう。土路男は朝鮮旅行で金剛石の飴を手に入れていたのであった。

 土路男は凄まじい爆音とともに音速を遥かに超えた超高速飛行を繰り返した。

 冬彦三は瞬間移動で対抗するが全く追いつけない。土路は高速飛行で廃墟の街中を飛び回った。


「オメーの彼女は今まで食べたお肉の中でも一番美味しかったぜ。食の大会てぇけぇがあったら間違いなく特賞だ」


 土路男は冬彦三を挑発した。冬彦三は念力で無数の鉄球を操り飛ばした。

 しかし、超高速飛行の轟音による衝撃波で鉄球は全て弾き飛ばされてしまった。


「本当は松子も喰う予定だったんだが、先にオメーに殺されちまったから喰い損ねた。食べ物の恨みは恐ろしいぞ」


 土路男は超高速飛行をしながらも空気の刃を飛ばし冬彦三を攻撃した。

 物凄いスピードで、瞬間移動をしなければ冬彦三でもよけ切れなかった。

 冬彦三は念力で雷雲を作ろうとするが、土路男の猛速風で雲が消し飛ばされてしまった。


「そうだ。オメーは男だから食べる気はしねえが、オメーの肉もはぎ取ってオメーの彼女の肉と一緒に冷凍して並べてやらぁ!どうだオラって優しいだろう?」


 土路男は冬彦三をさらに挑発し続けた。冬彦三の攻撃は当たらないが、冬彦三に攻撃を当てる事も難しい。

 だから、冬彦三を挑発して気を散らさせて、隙を作ろうという作戦なのだ。土路男は意外にも戦略家なのだ。


「オメーの彼女が悪いんだぞ!最初に喰ったオメーの彼女があまりにも美味しかったから美女を喰うのが止められなくなった。井森が美味しすぎたせいで他の美女たちも喰われることになった。オメーの彼女のせいで他の美女たちも殺される事になったのだ!」


 その言葉に冬彦三は激昂し、口から業火の渦を放った。空中を舞う土路男は炎の渦に囲われた。その様はまるで地獄の業火だ。


「井森ちゃんに地獄で詫びろー!!」

「やなこった!」


 土路男はロケット花火をジェット噴射にしたかのような超高速スピンをし、猛速風で猛炎の渦を蹴散らした。

 そして、土路男も反撃を開始した。土路男は念力で辺り一帯の石を操り飛ばした。土路男の金剛石の飴の超越能力も開花しており、念力も使えるのだ。


「何があっても井森を守ってやれと忠告しておいただろう!なのに結局井森を守れなかったんだから情けない話だ!約束通り、ぶっ殺されて、オメーも大人しく彼女の肉と共に冷凍されな!」


 しかし、冬彦三は冷静だった。冬彦三は瞬間移動で石の乱攻を回避した。瞬間移動の移動先は遠く離れた自宅だ。

 土路男を倒す秘策を練っていたのだ。

 冬彦三は再び瞬間移動し、土路男の前に現れた。しかし、冬彦三はすぐに瞬間移動し、消えてしまった。


「なにぃ!?」


 土路男の目には爆弾が目に入った。気が付いた時にはもう遅かった。


 ドガーーーーン゛!!!!


 冬彦三は再び瞬間移動で現れた。


「どこに逃げようとも街ごと爆破してしまえば関係ない。東京タワーを吹き飛ばせるほどの爆弾を超越能力で強化すれば街一つドカンだ

 街ごと吹きとばしてしまえばどこに逃げようとも一緒だ

 保険として爆弾を自宅に用意していたのは正解だった。松子の時は使わずに済んだが、まさかこんなものを本当に使う羽目になるとは」


 冬彦三は勝ち誇ったように独り言を呟いていた。しかし、冬彦三の目には仁王立ちする土路男の姿が飛び込んできた。


「そんなバカな!?あの大爆発に巻き込まれても死ななかったというのか!?」


 土路男は大ダメージを受けながらもしっかり立っていた。まだ戦えるくらいの体力は残されていたのだ。


「そんなバカな!」


 冬彦三は元気そうな土路男の姿に驚く。しかし、土路男の様子がおかしい!

 土路男が大切にしていた頭のてっぺんのたった3本しかない髪の毛が全て抜け落ちてしまっていたのだった。


「オラの髪があああああああああああああああ!!!!」


 土路男は倒れてしてしまった。冬彦三は急いで土路男の元に瞬間移動した。


「トドメだ!」


 しかし、土路男は既に息絶えていた。髪の毛が抜けてしまったショック死である。


「まさかこんな最期とはお前らしい死にざまだったな」


 冬彦三は土路男の死を確認すると、安堵して地面に腰を下ろした。


「これでようやく…」


 冬彦三は恋人殺しの復讐をついに果たしたのであった。

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