当選詐欺には気をつけろと息子には言われていた
わし、81歳今家族に囲まれ旅だとうとしている
『いい人生じゃったよ』
わしはかすれかけ元気もないがはっきりとした気持ちで声を出した
その声に反応し孫、息子、娘が静かに見守る
『親父...若いうちに俺のこと産んだりもして苦労かけたな...』
息子が『しくしく』と悲しげな音を出しながら言った
わしまで悲しくなってくる
『最後ぐらいわらえや。』
『お前がずっと泣いてちゃ先にいった母ちゃんに合わせる顔がねぇ』
わしは息子に最後だと思いこの言葉を伝えるとふいに
体が軽くなり意識が少し遠のいていく
『そうだよな...親父、母ちゃんにもよろしくな。』
息子、娘、孫は涙でひきつった顔のまま笑った
『あぁ...』
そのまま目を閉じた視界は黒から白に変わり
体が宙に浮いていくのを感じた
わしが生きた世界、思い残すことはない
ふと目が開きまわりを見渡す
体が思うようにうごく
人の気配はしない
物はまわりにない
『おめでとうございます!
あなたは今回異世界への生まれ変わりが抽選で当選いたしました!』
いきなり現れた男性のような声の、少し背の高いのっぺらぼうな
人型のなにかが目の前にたった
『すまぬがわし、当選詐欺には気をつけろと息子に言われててなぁ...』
『そんなんじゃありませんよ!私は神です。信じてください』
自分を『神』と自称するなにかが、やや急ぎ気味で
わしに異世界への生まれ変わりを進めてきた
『といってもの、赤ん坊からまた一からとなるとのぉ...めんどくさいというかなんというか...』
わしは81年人間やっておる、子供のころに悔いなどもなく
むしろもう一度といわれるとめんどうくさくなる
『わかりました!青年として転生してさしあげましょう』
神はもうどうとでもなれと言う風に要求をのんで?きた
『向こうはいいですよ、現世と違い悪い人もいない差別もない、みな優しい人格の持ち主ですとも』
神は少し声を高くし陽気に素早く話した
わしもここまでいいように言われると興味もわいてくる
『...わかった。そこまで言うのならわしも興味がわいてくる、行ってみよう』
『ありがとうございます!こちらにも助かります!』
神はかすれかけの声で嬉しそうに言う
『最低限の金銭、装備はあらかじめ用意しておきます
すぐ、転送いたしますので目をつむってください』
わしは指示通り目をつむった
あたりがまばゆく光輝く、星空が見えたかと思うとまた暗く、白く
目が悪くなりそうな点滅を繰り返した。
意識が遠のいて行く
....
目が覚めると森の少し広々と空いた広場のようなところにいた
そらも雲一つない晴天で風が現世と違い
キレイでおいしい
体も自由に動く
若返ったようだ
そのままこの世界にきた感動を感じてぼーとしているとやけに
人の声が耳に入ってき
『!....』
女性が数人の男に囲まれ身に着けている服などを剥がれていく
その声や抵抗を無視した男たちの身勝手な動作は
やさしさのかけらも感じない
わしは思った
わし、死後にして初詐欺にあったかもしれない