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今日もママの声が聞こえる

作者: 遥 一良

 私のママは優しい。私を叱りつけることはあまりない。それというのも、怒られる前にお片付けをすることが身に付いているから。


「あなたはいいこね。見たことを素直に覚えて、言われる前に済ませるなんて、私の子ども時代とは大違い」


「そうなの?」


「うん、私はお片付けが嫌だったの」


「そうだったんだ」


 ママから怒られたことは少なかった私だけれど、ひとつだけ、怒られたことがあった。今思えば、ママの声が聞きたくてやったのかもしれない。それくらい、ママの声はとても優しかったから。


「こらっ、揚げたての唐揚げをひょいひょいとお口に入れているのはだあれ?」


「ご、ごめんなさ~い」


 夕食前にいつも、油でお肉を揚げるママの後ろ姿を見るのが大好きだった。何故か、そんなときに限って甘えたくなった。


「もう~! ご飯が食べられなくなるよ?」


「だってすごい美味しいもん。ママの唐揚げ」


「全く、しょうがないなあ」


 口では私を叱りつけているけれど、その声はすごく優しくてママが揚げ物をするたびに、優しく叱る声が聞きたい気持ちが私のつまみ食いに味をしめさせたかもしれない。


 私が大人になり、一人暮らしをするようになってからママの後ろ姿や叱る声を聞く機会は無くなってしまったけれど、こうして帰り道に、見知らぬ住宅の家の中から子どもに優しく叱るママの声が今日もどこかで聞こえてくる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 見知らぬ住宅から聞こえる子供の声、という聴覚から思い起こされる記憶を綴った素敵なエッセイのような文章ですね(^.^)! どこかの雑誌に掲載されていそうな、優しい雰囲気を感じました。
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