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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第一章 ジュカ王国編
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第九話  まあ、合格らしい

「エクストラファイヤー!」


「うりぁうぁぁぁぁぁぁっ!!」


周辺一帯を焼き尽くす巨大な火の玉が俺に向かって放たれる。しかも、鉄をも溶かす超高温が凄まじいスピードで向かってくる。その後を、これもとんでもない速度で剣を構えた女が突っ込んでくる。


「全結界」


俺は右手に剣を持ちながら左手を掲げ、素早く結界を張る。俺の周りを完全に覆いつくす球体の結界。透明なボールの中に俺がいる状態だ。


結界を張ってすぐ火の玉が着弾する。凄まじい轟音と灼熱。周囲の草木が燃えるどころか蒸発してしまっている。全身に衝撃波が走る。体が飛びそうになるが、何とか耐えきった。そう思った直後、煙の中から凄まじい速度で剣が突き出される。エリルだ。


ガキィィィィィン!!!


数百枚のガラスが一気に割れるような音がする。突き出された剣は結界で受け止めたが、すぐにそこからヒビが入り、崩壊する。それを予想していたかのように、エリルの目にもとまらぬ斬撃が俺の脳天に向かって振り下ろされる。


その直後、俺の右手の剣がエリルに向かって振り下ろされる。狙うは腕。腕ごと剣を叩き落す。しかし、エリルはなんと剣を手放して両手を広げ俺の斬撃を躱す。一瞬、俺の体勢が崩れる。それを見逃すエリルではない。素早く空中の剣を掴み、そのまま必殺の斬撃を俺に打ち込む。


バシィ!!


エリルの剣は、俺の目の前で止まっていた。エリルが剣を止めたのではない。体勢を崩した直後、俺が薄い、しかも丈夫な結界を張り直したのだ。


「ちょっとファルコ!どうして魔法で攻撃しないのよ!」


「無理ですよ、お嬢様。一度結界を張っちまったら、もう崩すのは難しいですから」


「チッ!」


忌々しそうに俺を睨み、渋々剣を収める。


「まあ、いいんじゃないの?」


「ああ、儂もそう思います。まあ、合格ということだリノス」


「あっ、ありがとうございます。エリルお嬢様、ファルコ師匠」


膝をつき、頭を下げる。いつもより丁寧にお礼を言う。


「うりゃあ!!」


いきなりエリルが斬りかかってくる。全く反応できなかったが、彼女の剣は再び俺の目の前で止まる。俺は結界を解除していないのだ。


「全く、油断も隙もないわね。可愛げってものがないのよ、あなたは」


「可愛らしさを出してしまいますと、私の命がいくつあっても足りません。エルザ様のお許しなく、この命を他の方に差し上げる訳にはまいりません」


「最近、本当に大人のような口をきくようになったわね。忌々しいわ」


「まあまあお嬢様。儂でさえ破れぬリノスの結界をお嬢様は破ったのです。誇っていいですぞ」


「これだから男は嫌いなのよ。何もわかってないのね」


すたすたとエリルは自分の部屋に帰って行った。


「あーでも、この模擬戦はもうできないな。この屋敷が砂漠になってしまうからな」


屋敷からかなり離れているとはいえ、周囲は砂と岩とクレーターだらけだ。もともとはだだっ広い野原だったのだが。


エリルが俺の修行に加わるようになってから、過酷さが増した。師匠の魔法、しかも、LV4の全力の火魔法が降り注ぐのと同時に、エリルの斬撃にひたすらさらされるようになったのだ。


しかもこの二人の息がピッタリなのだ。確実に俺の結界の弱点を突いてくる。エリルも最初こそ木剣を使っていたものの、「調子が狂う」との理由で、早々と真剣を使ってくるようになった。お蔭で何度結界を割られ、切り刻まれたかわからない。何度か致命傷を食らい、あと一歩遅れたら完全にあの世行き、という場面もあったのだ。


しかも、師匠からは常に結界を張っておくように命じられ、寝ている時も結界を張り続ける毎日を過ごすことになったのだ。当然、結界を張るとMPを消費するのだが、熟睡すると回復力は落ちるものの、確実にMPは回復するということがわかったのだ。とはいえ、完全に意識を失えば結界は消える。それを見張るために深夜、抜き打ちでエリルが俺に斬撃を打ち込む、というトチ狂ったとしか思えない修行も行われていたのだ。救いといえば、この時だけは手加減をして、木剣を使ってくれたことである。当然俺に打ち込まれる力は、全力であるのだが。お蔭で何度顔面を割られたことか。


こちらとしても必死である。安眠が妨害されるのだ。しかも大怪我付きで。死に物狂いで取り組んだ結果、熟睡しながら結界を張り続けるコツを掴むことが出来た。副産物として何故か、気配探知と魔力探知の能力を得ることが出来た。今ではエリルだけでなく、師匠も襲撃してくるようになったが、気配探知か魔力探知に掛かった瞬間に、無意識に結界を張ることが出来るようになっているので、二人の襲撃の被害は実質ゼロである。


こんなことをしていたので、三人で修業を始めた当初は、すぐに俺のMPがカラになってしまうことがよくあった。そこで師匠は俺に、ほぼ無理やりに、自分のMPを吸い取るスキルを習得させた。そのやり方は師匠らしく、とても効率的なものだった。何と、腕に炎をまとい、そのまま俺の胸ぐらを掴んだのだ。


「熱いか?この炎も魔力でできているのだ。熱けりゃ儂からMPを吸い取るのだ!そうすりゃ炎は消えるぞ?ハッハハハ!!」


・・・すぐにスキルはゲットできた。それだけでなく、回復魔法のスキルも上がったのだった。


エリルもエリルで、俺に真剣を与えたかと思うと、それで模擬戦を行うようになった。二人の攻撃を躱し、フルボッコにされた後に、である。当然最初はエリルの斬撃をいやというほど浴びせられたし、激しい筋肉痛にも苛まれた。俺としても痛いのはイヤなので、必死で剣を躱すことを覚えた。


あれから1年、10歳になった俺は、かなり二人の攻撃を躱せるようになり、死を覚悟するような傷を負うことはなくなりつつあった。


ちなみに、今の俺のステータスは、こんな感じだ。


リノス(奴隷結界師・10歳)

HP:77

MP:213

結界魔法 LV4(師匠の火魔法(LV4)は効かなくなった!自分の思い通りの結界が張れる!)

火魔法  LV2(大きな火の玉を発射できるようになった!)

水魔法  LV2(大きな水球を発射できるようになった!)

土魔法  LV1(簡単な穴を掘ったり埋めたりすることができるようになった!)

回復魔法 LV3(重度の火傷や傷を完全に治癒できる。ついでに病気も治癒できる!)

生活魔法 LV1

詠唱   LV3

鑑定魔法 LV3

剣術   LV2

MP回復  LV2

気配探知 LV2

魔力探知 LV2

魔力吸収 LV1

肉体強化 LV1

回避   LV2

行儀作法 LV1

教養   LV3


10歳にして、王宮の結界師と同レベルである。良い師、効果的な修行のお蔭で奇跡のような成長を遂げたが、良い子はゼッタイにマネしない方がいい。


「まあ、儂が教えることもほぼなくなってきた。従って、お前には儂の修業からの卒業実習をやってもらおうと思う」


「卒業実習ですか??」


「そうだ。お前、三日後にルノアの森に行って魔物を狩ってこい」


マジかよ。魔物の巣窟じゃねぇか。俺、本当に死ぬかもしれない。

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