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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
間 話 ペーリスの学生生活
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第八十七話  同級生、クラリフォン・サエリ・チューリー

ちょっと間話です。ペーリスの学園生活について書いてみたくなったので、作ってみました。すぐに完結する予定です。本編とは関連性はありませんので、興味がなければ読み飛ばしてください。

僕は、クラリフォン・サエリ・チューリー。ヒーデータ帝国のクラリフォン子爵家の長男で、この春からヒーデータ帝国大学に入学した16歳だ。


僕には気になる女性がいる。同級生である、ペーリスちゃんだ。


彼女を初めてみたのは、大学の入学試験の時だった。たまたま席が隣同士だったのだが、紫色の髪がとても珍しかったのもあるけれど、あまりの美しさに心が奪われてしまって、筆記試験を上の空で受けてしまった。これではいけないと、何とか気持ちを持ち直して問題にあたったけど、正直自信はなかった。


その後に行われた魔法の実技試験でも、僕は面食らった。まあ、僕だけじゃなく、試験官の先生たちも面食らってたけど。


魔法の実技試験は、自分が得意とする魔法を使用するというものだ。しかし、幼いころから魔法の修行を積んだ者の中には、2つ、場合によっては3つの魔法を使える人もたまにいる。実際僕も、風魔法と水魔法が使える。そこで試験が行われる前に、試験官の先生からこんな呼びかけがあったんだ。


「魔法が一つ使える者は私のところへ、二つ使える場合はサリオ先生のところへ、三つ使える場合はシューセ先生のところへ集まってくれ」


皆がバラバラと動き出す。僕は二つ使えるので、サリオ先生のところなので、そこに行こうとすると、ペーリスちゃんは戸惑った表情を浮かべている。僕は勇気を出して話しかけてみた。


「どっ、どうされたのですか?」


「ええと・・・四つ使える場合はどこに行ったらいいのでしょう?」


「よ、四つ??」


女性の前で大きな声を出してしまった。でも、仕方なかったんだ。本当にびっくりしたんだから。


とりあえず、試験官の一人に彼女が四つの魔法を使えると伝えたら、すっごく怪訝な表情をされた。そして、試験官同士が集まって話をした後、ペーリスちゃんだけが別の場所に連れていかれた。


そして、実技試験が始まった。複数の魔法が使える者はまず、自分の一番得意な魔法を最大出力で飛ばす。大抵そこで魔力が尽きるので、MP回復薬を飲み、しばらくして残りの魔法を出力するという流れで試験が行われる。


僕は得意の水魔法でLV2のウォーターバレットを出した後、MP回復薬を飲み、休憩していた。その時、信じられない光景を目にしたんだ。


ペーリスちゃんのところから、巨大な火柱が上がっていた。あれはLV3の火魔法のバーストのはずだ。まさか16歳でLV3の魔法を操るなんてありえない。思わず僕はMP回復薬を落としそうになった。


試験官の先生たちも固まっている。そんな先生たちの様子も全く気にせずに、ペーリスちゃんは


「ええと・・・他の魔法も撃ってみていいですか?」


「え?回復薬は?」


「大丈夫だと思います」


そう言って次々と魔法を繰り出していく。しかもその全てがLV2以上!水魔法に至っては僕のウォーターバレットよりも、さらに高速で威力の高いものだった。おそらくLV3なのだろう。さすがに試験官も慌てだした。それはそうだろう。16歳でLV3の魔法が使えるのだ。僕も正直、信じられなかったもの。


しばらく試験官の先生たちに囲まれていたペーリスちゃんは、どこかに連れていかれた。きっと僕には及びもつかないスキルをたくさん持っているんだろう。でも僕にも一つだけわかったことがある。彼女は試験に合格している。そのことだけは確実にわかった。


正直、僕が帝国大学に合格しているかどうかは微妙なところだと思っていた。でも、合格しなければ彼女に会う機会はほとんどないと言っていい。不合格なら僕は、クラリフォン領に帰らなければならない。そうなれば帝都に来られるのは、月に一回開かれる社交界の時くらいだ。でも、クラリフォンから帝都は遠いので、二月か三月に一度くらいしか来られないだろう。そうなれば、彼女に会う機会など皆無と言っていいのだ。


僕は初めて自分の意志で教会に行った。これまでは半ば義務として通っていたのだけど、今回だけは教会に行きたいと思ったのだ。そして、主神であるクリミアーナ様に、帝都大学に合格させてほしいと心から祈った。


祈りが通じたのか、僕は合格していた。生まれて初めてうれしくて泣いてしまった。


入学してすぐ、ペーリスちゃんを見つけることが出来た。あの髪の色だ。すぐにわかる。そして、その美しさでも・・・。


彼女は特待生として、僕たち貴族の子弟と同じ教室で学ぶことになった。男子学生は今のところ平静を装っているが、全員がペーリスちゃんを意識しているのはよくわかった。


驚いたことに彼女は、あの新興貴族であるバーサーム侯爵の身内の女性だった。バーサーム家と言えば、帝国と長く敵対関係であったジュカ王国の宰相を務める名家だ。ジュカ王国が大魔王によって滅亡させられた後、帝国に亡命してきた。現在の当主は養子とのことだけれど、陛下の妹君であるリコレット皇女と結婚し、帝国名誉侯爵の位を賜っているが、帝室と深いつながりのある家柄だ。


当然、僕たち貴族の人間たちにとってペーリスちゃんは、よい結婚相手だ。何しろ、バーサーム家とつながることができる。ということは、帝室とつながりができるということなのだ。


でも、ペーリスちゃんはすぐにクラスの中で孤立し始めた。僕たちとは生活様式が全く異なるため、行動パターンが違うのだ。


例えば食事。基本的に僕たちは、大学内のサロンで食事をする。そこは貴族の子弟たちしか利用できない部屋であり、そこでは、自分が家を継いだ時のために、色々なつながりを作る役割も兼ねているのだ。


しかし、ペーリスちゃんはそこで食事をとらない。いつも大学の芝生に座るか、図書館で食事をとっている。何より驚いたのが、その食事をペーリスちゃんが作っていることだ。食事を作るのは、侍女か奴隷のすることで、貴族の者がすることではない。そのことで彼女を嘲る女子学生もいたほどだ。しかし、バーサーム家では女性の誰もが食事を作るのだと言うし、あのリコレット皇女も、皆の食事を作るのだと言う。


僕はますますペーリスちゃんに興味を持った。


ある時、珍しくペーリスちゃんが教室に一人でいた。一心不乱に何かを書き込んでいる。ちょっと悩んだけど僕は、思い切って彼女に話しかけてみることにした。


「あ、あの、帰らないんですか?」


「え?あっ、すみません・・・」


「あ、何か僕、邪魔しちゃったみたいですね」


「あ、いえいえ、ちょっと夕食のメニューを考えていたら遅くなっちゃいました」


「夕食のメニュー・・・どんなものを?」


「グラタンを作ろうと思ってるんですが、ソースの味をもう少し改良できないかなと考えていて・・・」


「ソースの味、ですか?」


「料理っておもしろいですよー。塩一つ加減が違うと、味が全然違いますから」


「すごいですね」


「いえ、そんなことありませんよー。リノスさんが作る料理はもっと美味しいですから」


「え?バーサーム名誉侯爵も食事を作られるのですか?」


「たまにですけどね。でも、すごく美味しいんですよー」


「へぇ・・・。僕も食べてみたいな」


「じゃあ今度、何か持ってきましょうか?」


「ええっ!?いいんですか?」


「別にかまいませんよ?」


「あ、あの、僕、クラリフォン・サエリ・チューリーと申します」


「私は、ペーリスです。確か、魔法の試験の時に案内してくれた方ですよね?」


「覚えていてくれたんですか?」


「もちろんですよー」


こうして、僕とペーリスちゃんは友達(?)になった。しかも僕のために何か作ってくれるという。これはクリミアーナ様のご加護に違いない。今度、帝都の教会に行ってお祈りをせねば。


これからの大学生活が、とても楽しみだ。

ペーリスの視点:お弁当の残りでも持って行ってあげよう♪

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