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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第十五章 黒龍編
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第四百七十一話 ハイ、カッキーン

馬を駆る男女が、みるみるうちに近づいて来る。クノゲンやルファナも、ただ、呆然と二人がやって来るのを眺めている。周囲にいる兵士たちも、下知がないためにどうしていいのかがわからず、ただ、戸惑いながら事の成り行きを眺めている状態だった。


だが、俺にはわかる。この二人はタダ者ではないことが。二人を鑑定してみたが、こんな結果が表示されていたのだ。


ヒミツ

HP:ヒミツ

MP:ヒミツ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ

ヒミツ  ナイショ


ヒミツ ヒミツ ヒミツ


ヒミツ:ナイショ ナイショ ナイショ

ヒミツ:ナイショ

ヒミツ:ナイショ ナイショ



これは男の方のスキルだが……何ともイラつかせる表示だ。ただ、持っているスキルが半端ではない。半分以上のスキルLVをカンストしてしまっている。これに対し、女の方のスキルは、こんな感じで表示されている。


(๑´ڤ`๑)テヘ♡

HP:☆5

MP:☆5

頼光   LV?

総司   LV?

紫式部  LV?

天草   LV?

土方   LV?

北斎   LV?

始皇帝  LV?


経済、推嫁


経済:頼光、総司、土方、天草

推嫁:紫式部、始皇帝



数こそ少ないが、持っているスキルの大半はカンストしてしまっている。専門性が高いと言えるかもしれない。ただこのスキル、うむ、まあ、何とも……という感じだ。言いたいことはたくさんあるが、敢えて何も言わないことにする。


そんなことを考えていると、二人は俺たちの近くまで来て、その動きを止めた。


「何者だ」


ルファナが声をかけるが、二人は何も答えない。男の方はニヤニヤと笑みを浮かべながら、ゆっくりと俺たちを見廻している。一方の女性の方は、何とも言えないような表情で男を眺めている。


「バーリアル軍の御方か。まずは、名乗られよ」


ルファナが毅然として話しかけるが、相変わらず男はニヤニヤと笑みを浮かべたままだ。


「お粗末だな」


不意に男が口を開く。笑みを浮かべたままで喋っているので、不気味さが尋常ではない。ヤツはゆっくりと俺に視線を向けた。


「それで姿を隠したつもりか? それにしてはお粗末だな。身に着けている鎧、剣から発せられる気配が、他の者とは段違いだ。……アガルタ王、リノス」


目の前の女性がギョッとした表情を浮かべている。後ろに控えているシーワ以下、ワーロフの連中の気配も変わった。俺は大きなため息をつく。


「一体何を言っているのかわからないな。というよりお前たち、何だそのスキルは?」


俺の声に、二人はキョトンとした表情を浮かべている。


「特にお前! 『ナイショ』『ヒミツ』って何だ? そのまんまじゃないか。もう少し何とかしろよ。センスの欠片も感じさせないな。龍王の方はダサイ上にイタイが付くが、努力の跡は垣間見えるだけまだマシだ。見習わなくてもいいが、その姿勢は学べ」


俺はフンと鼻を鳴らして男を一瞥し、隣の女性に視線を向ける。


「ところで、お前はどれだけ回したんだ」


「……」


「いや、褒めているんだ。いいセンスをしている。大変だっただろ? いや、大変ってこともないか。どれだけタマを溶かそうとも、引ければ、引いた瞬間に、全てが報われるからな。いや、よく頑張った。努力したんだな。別にいいじゃないか。誰に何と言われようとも、テメエの金じゃないか。それに、この『経済』ってスキルがいいな。『経済』って書いてガチャと読ませるんだろ? そうだ、その通りだ。廃課金者と揶揄するヤツもいるだろうが、お前たちはガチャを廻しながら、世界の経済を廻しているのだ。お前たちが世界を支えているのだ。プライドを持つといい」


「……中の兄さま、コイツは何を言っているのだ? 気が狂れているのか?」


「さあな」


「その通り!」


「何?」


「『推し』という字をよく見て見ろ。『人を狂わせる』と書いてあるだろう。いや、皆まで言わなくてもいい。推しを目の前に正気でいるというのは、無礼に値する。わかる。わかるぞ~。人気のないところで、ブツブツと推しの名前を呟きながら、もしくは部屋の中で一人、推しの名前を叫びながらガチャを廻すという、狂気という名の最大の礼を尽くして推しをお迎えしたのだろう? ……尊いだろう? そう、尊いのだ。推しが出た、いや、出てくれたあの瞬間の尊さ。全身から変な液体が噴出するだろう? お前はきっと、そんなエクスタシーを何度も味わってきたな? わかる。わかるぞ、俺には。ちなみに俺の嫁は北斎だ。見た瞬間に思ったね。『お前や』と。北斎こそが至高なんや。異論は認めん、断じて認めんからな! おい、ムスカにゴミのようにと形容されたうちの一人である隣の男にも教えておいてやれ。さっきからポカンとしてるやないかい!」


……あれ? 何だこの空気は? 何、このアウェイ感?


「……オホン。すまない、喋りすぎた。少々疲れているようだ。家に帰ったら、医者に相談しようと思う」


「……中の兄様、この男は本当に、アガルタ王リノスなのか?」


「間違いない」


「さて、私には何のことだか……」


「なぜ、龍王のことを知っている?」


「オフゥ? 龍王殿のことでござるか?」


「龍王の、しかも、ヤツのスキルのことを言っておったな? それを知っているということは、相当のスキルだということだ。それに、身に着けている鎧や剣に対して、表示されているスキルが『結界LV2』だけとは、不自然にも程があるぞ。うまく己の魔力などは隠しおおせているが、肝心の詰めが甘いな。……アガルタ王、リノス!」


「やはりお前ら、ただのネズミじゃないな?」


「誰でもよい」


その瞬間、男の姿が消えた。


ガキーンという音が聞こえた。気が付けば、男の顔が俺の至近距離にまで近づいていた。しかも、宙に浮いている状態だ。そして、相変わらず下卑た笑みを浮かべている。


「俺の攻撃を防ぐとは、やるな? 結構本気でやったのだがな」


そんなことを言いながら、宙に浮いたままゆっくりと元の位置に下がっていく。ヤツは俺を殴ってきた。そう、シンプルに拳で殴ってきたのだ。ただし、その速度があまりにも高速で、とんでもない攻撃力だった。瞬時の動きで、周囲にいた者は見えなかっただろう。俺ですらも、衝撃を受けて初めてわかったのだ。


正直言って予想外の攻撃だった。てっきりヤツは魔法で攻撃して来るものと踏んでいたのだ。その体からは凄まじい魔力を感じるし、背が高く、細い体躯をしていることから、肉弾戦というイメージを持てなかった。むしろ、その隣にいた少女の気配が不気味で、そちらを意識していたこともあるが、まさか目にもとまらぬ速さで移動して殴ってくるという選択肢は、全く考えていなかった。


しかも、ヤツの攻撃は俺の結界を砕いていた。龍王ですら手を焼く硬度を誇る結界を、一撃で粉砕したのだ。だが、瞬間的に結界は張り直されていた。砕けた瞬間に破損部分を修復する効果を付与していてよかった。


密かにホッと胸を撫で下ろす俺を見据えたまま、ヤツは隣に控えている女性に声をかける。


「見たか。とんでもない結界を張る男だ。アガルタ王リノスに間違いない。シャリオ、やるぞ」


女性の気配が変わった。彼女はゆっくりと馬から降り、冷たい表情を俺に向けた。


「お前たち、離れていろ。できるだけ遠くに逃げろ」


俺が言い終わると同時に、周囲が黒い煙に覆われた。クノゲンの「退けぇ!」という声が響いている。同時に、兵士たちが素早く移動する音が聞こえてくる。


「無駄だ!」


「ギャうっ!」


甲高い悲鳴が起きたかと思うと、二人の男女が飛び出してきた。彼らは上空高く舞い上がっていく。


「中の兄さま、違う。女だ!」


シャリオの声で、二人の動きが止まる。ロイスは肩に担いでいる者の顔を覗き込む。そこには、口を大きく開けて気を失っている女性の姿があった。


「何だコイツは! アガルタ王リノスではない」


「中の兄さまぁ!」


シャリオの絶叫にも似た声で我に返ったロイスの目の前には、天馬に跨る男が剣を振り上げていた。ロイスは思わず目を見開いた。

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