第四話 奴隷市
市はすでに沢山の人で溢れかえっていた。
売買予定の奴隷は、俺を含めて8人。皆、若い。目を引くのは、筋骨隆々の男が二人と、アイドル並みの美貌を備えた美少年。そして猫の獣人もいる。かなりいい体をしているので、この人も戦闘向きなのだろう。子供は俺一人だった。
旦那は、市の関係者と話をしている。どうやら俺の開始値を決めているようだ。
「1000Gから始めてくれ。なければ下げても構わない。服は・・・そのままでいい。とにかく売れればいい。売れなければ・・・処分してくれ」
・・・完全に価値がないんですね、俺。まあ、何もできない子供は普通買わんよね。売れなければ処分って・・・これはいよいよヤバイかもしれない。
いきなり腕を取られた。痛い痛い!ズルズルとひきずられていく。子供なんだからもっと優しく扱えよ!
気づいたら、舞台の上に引っ張り出されていた。
「まずは1番、男!6歳!1000Gから始めます!」
あれだけ騒がしかった客席が静寂に包まれる。誰も俺を買おうとはしない。
舞台の上から客席がよく見える。誰も俺と目が合わない。そりゃそうだ。俺を見ていないのだから。大半の客は、俺が出てきた入り口を見ている。興味はすでに俺の後に出てくる奴隷に移っているのだ。その他は、手元のメモを見ているか、隣の客と話をしているかのどちらかだ。全く俺に興味を持っていないのだ。
「では、900Gでは?・・・800G!・・・700G!」
カウントダウンが始まる。きっと、この値段がゼロになった時、俺の命は終わるのだろう。訳のわからんうちに転生して、いきなり奴隷落ち。最後に見る景色が奴隷市とは・・・。
ぼんやりと客席を見ながらそんなことを考える。その時、一人の老女と目が合った。小柄だが、強い意志を感じさせる目。しかし、彼女は俺から目を離し、隣の、髭を蓄えた白髪の男性と話を始める。
「では、500G!これが最低価格になります!・・・どなたもおいででありませんか??」
完全に、詰んだ。
「よろしいですか?では、1番終了!」
腕を取られて、舞台から降ろされる。相変わらず乱暴だ。振りほどいて逃げたいが、とてつもない握力で俺の腕を取っている。最早、逃げることもできないようだ。
乱暴に部屋の中に連れ込まれる。俺、ここで死ぬんだな・・・。
「こちらがお求めの商品になります。バーサーム夫人」
客席の老女がそこにいた。