第二十四話 ぜんざいを作ろう
腹が減った。色々考えることはあるけれど、まずは腹をいっぱいにしないと。
ずっと考え続けていたので、体が糖分を欲している。せっかくなので、エリルに食べさせようとしていた、「ぜんざい」を作ることにした。
バーサーム家から拝借した大鍋に小豆を入れ、水を張る。小さいファイヤーボールを入れるとすぐに沸騰する。しばらくして水を捨て、もう一度水を入れて沸騰させる。とりあえず、渋抜きはこのくらいでいいか。
さて、これからが本番。小豆をじっくりコトコト煮込んでいく。土魔法でかまどを作り、集めた薪に火魔法で火つける。弱火に調整して、じっくりコトコト、じっくりコトコト・・・。
暇だ。猛烈に、暇だ。
暇に任せてステータスチェックをする。気が付いたのだが、俺は「雷魔法」は取得していない。理由は、師匠が教えてくれなかったことと、俺が雷が嫌いだからだ。
とはいえ、せっかく大魔王になったのだ。雷が扱えないのはいかがなものか?「大魔王のクセに雷も扱えないの~?ヤバーい!ウケるぅ」何て言われたら、俺は生きていけない。
せっかくなので、練習してみる。師匠は魔法はイメージが大切だといった。雷をイメージする。ピカっ、ゴロゴロゴロ~。ピカピカッ、バリバリバリ~。
・・・全くできん。何にもでねぇ。空、一点の雲無く晴れ渡っております。地味にヘコむ。
雷ってどうやったら鳴るんだっけ?確か、雷雲が必要なんだよな?
俺はコの字型の結界を張り、空に浮かべる。ちょうどちゃぶ台のような形だ。そこに水魔法と火魔法で水蒸気を発生させる。地面には火を出して温める。そして、結界のふたの部分には氷魔法で温度を下げる。しばらくすると、雲が黒ずんでくる。そしてその数分後、
ピカッ!パリパリ~
小さな雷を発生させることができた。何となく、原理は分かった。ステータスをチェックしてみると、「雷魔法LV3」が付いていた。いきなりLV3ってどうなってんだ?
せっかくなので、雷をブッぱなしてみる。至近距離は怖いので、なるべく遠くに落とすことにする。かなーり遠くの方に・・・落雷っと。
ドッシャーン、バリバリバリバリ~~~~~
まっ、マジで焦った~。一瞬目の前が真っ白になった。至近距離に落ちてんじゃねぇのか??音が半端なかったぞ?
一応俺の体には被害はない。雷の威力を確認したかったけど、鍋の様子を見ないといけない。これでも水が減ってくるので、こまめに水を足さなければならないのだ。
ステータスをチェックしてみる。すると、「雷魔法LV5」が付いていた。
大魔王、半端ねぇな?二回雷起こしたらスキルをカンストしやがった。ああ、だから大魔王って強いのか?
そんなことを考えていると、ついに小豆が柔らかくなってきた。そろそろ鍋から上げるか。
ゆで汁を捨てつつ、小豆を別の鍋に移す。ここで砂糖投入!ばあちゃんが作ってくれたのを思い出しながら、目分量で砂糖をいれていく。そして、塩を一つまみ。
そこに再度水を入れ、沸騰させる。弱火にして約10分、ついにぜんざいが完成した。
・・・甘い。美味い。腹が減っているのもあるけれど、我ながらなかなかの出来栄えだ。美味い美味いと食べていく。食べていく。食べていく。
・・・腹がいっぱいになったな。だいぶ残っちまったな、どうすんだこれ?
調子に乗って鍋いっぱいに作ったので、かなり余ってしまった。しかし、あって困るものではないので、「無限収納」に入れておけばいいだろう。どこかで餅が手に入るかもしれない。その時は、餅入りのぜんざいで楽しめるではないか!
久しぶりの満腹感を楽しみながら、これからのことを考える。ステータスが上がったとはいえ、一匹も魔物が襲ってこないのは、異常だ。今の俺は本当に、全ての生物から忌諱される存在らしい。おそらく、人間もそうなのだろう。だとすれば、俺はどうやって生きていく?今の手持ちの食料がなくなったら?森の植物を食べて生きるということも可能だろうが、どこまで持つのだろう。考えてみるが答えはでない。
考えつかれた。このままでは落ち込んでしまいそうだ。考えを変えなければ。まあ、せっかく大魔王になったのだ。ここはひとつ、アレをやって気分転換といこう。
俺は立ち上がり、ポーズを決め、
「お前も、蝋人形にしてやろうか~!グハハハハハハハー!」
・・・すまん。見逃してくれ。一度やってみたかったのだ。いかん、地味にヘコむじゃねぇかコレ。
ボトッ!
俺の後ろで何やら音がする。振り返ってみてみると、そこには白い子狐がいた。どう?蝋人形に、なる?




