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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第六章 アガルタ国編
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第百五十一話 冬のはじまり

奇跡の宴会から一ヶ月。アガルタ国に木枯らしが吹き始めていた。


俺は今、迎賓館の執務室で昼食を食べている。昼食といっても、前世のようなコンビニで買ったおにぎりなどではない。フルコースを食べている。いや、国王だからというわけではない。試食である。迎賓館で出す食事のメニューを決めているのだ。


迎賓館は、表向きは国王とその家族の住居ではあるが、その他にも、来賓が宿泊できるスペースもある。年が明けると、アガルタ国の領主達が新年のあいさつに訪れる。その時に、ヒーデータとニザからは年賀の使者が来ることになっている。特に、ヒーデータとニザの使者は、迎賓館に宿泊させる必要があるのだ。


それだけでなく、アガルタの復興が伝わったためか、ジュカ滅亡後に交易が途絶えていた国々から、今後も交易をしたいという申し入れが、次々と寄せられているのだ。


そのため今は、迎賓館の宿泊部門の準備を急ピッチで進めている。


そのスタッフについては、フルチン野郎が攫ってきた女たちをまとめて雇用した。その上で、俺に従う領主たちの娘を数名受け入れた。そして、追加で都に住む娘を雇ったため、かなりの大所帯になっている。


その中で適性を見極めて、来客対応係、清掃・準備係、料理番など、それぞれに役割を割り振った。コック長はペーリスをとも考えたが、帝国の帝都ホテルの料理人をスカウトして料理長に据えた。都にはいろいろな人々が集まっており、雇用した人の中にも珍しい料理を知っている人が多くいた。現在はそうした人々の意見も取り入れながら、オリジナルの料理を開発しているところだ。



そして、新しく妻に迎えたコンシディー、ソレイユ、マトカルだが、今のところは問題なく日々を送っている。


あの宴会の後、しばらくして俺は三人と晴れて夫婦になった。


さすがに帝都の屋敷でというのは何となく憚られたので、しばらくは迎賓館の彼女らの部屋に通うことにした。


リコやメイの時にも思ったが、こういうことは三者三様で、意外な発見も多かった。


まずコンシディーだが、彼女は意外なほどに恥ずかしがり屋で、泣き虫だった。ニザで見せていた、お転婆でわがままな顔はどこへやら。自分の体を見られて恥ずかしいと言って泣き、朝起きても恥ずかしいと言って涙を見せた。まあ、慣れればまた変わるのだろうが、今はイメージとのギャップが楽しく、愛おしい。


次にソレイユだが、彼女は全身にあふれんばかりの喜びをあらわして、俺を受け入れた。


「最も愛おしい方にこの身を委ねることができるのです。こんな幸せがありましょうか」


そう言って彼女は俺に抱き着いた。男としてここまで言われては、正直嬉しい。その上、見事な巨乳である。メイといい勝負だが、エロさで言えば、ソレイユに軍配が上がるだろう。背中に羽が生えているが、寝る時には驚くほどに小さく畳むことができる。彼女を抱きしめると、背中の羽が気持ちいい。メイとはまた違った良さを持っている。


そして、マトカルである。彼女は三人の中で一番毅然として俺を受け入れた。そして何より驚いたのが、彼女は・・・目を閉じないのだ。


今もそうだが、リコを筆頭に他の女たちは、必ず目を閉じて俺を受け入れる。確かに薄目を開けている時はあるが、最初から最後まできちんと目を開けているのは、マトカルだけだ。


逆にマトカル自身も、俺の振る舞い方には驚いたらしい。彼女が知っているのは、フルチン野郎たちのやり方だけだ。これは俺も鑑定スキルで見たが、とてもとても口に出せるような代物ではなく、前世の頃に俺が見たどんなエロビデオよりもゲスい内容だった。


マトカルもそんな場面は見たくなかったらしいのだが、やはりどうしても目に入ってしまうらしい。というより、フルチン野郎が敢えて見せていた節もある。どうやらそれでマトカルの興奮を煽って、あわよくばと考えていたようだ。今さらながらに、アホな奴である。


ということでマトカルは、男と女は複数プレイという変な固定観念が出来上がっていた。女は複数の男を相手にし、力ずくで、乱暴に扱われるものだというイメージを持っていたようだ。しかし、俺はその正反対の態度で、彼女自身も驚き、戸惑ったらしい。


まあ、かくいう俺も、リコとメイと三人で寝ることはよくある。ちらっとそのことを言ってみたが、マトカルはリコとメイと一緒でも構わないと言う。なかなか男前な話ではあるが、真顔で、俺の目をじっと見据えて言ってくるため、エロさは全くない。何だか俺が他の女に取っている態度を冷静に観察されそうで、逆に俺からは、しばらく今のままで様子を見ようと言ってしまったくらいだ。


そのリコはといえば、お腹はかなり膨らんできた。大きなボールをお腹に付けているかのような姿になっている。今ではお腹の赤ん坊がよく動いており、少々寝不足気味だ。そろそろリコは仕事を休み、出産準備に入らなければならない。リコには、男か女かは何となくわかるようだが、俺には教えてくれない。ただ、主治医のローニ曰く、男の子の可能性が高いと言う。お腹の出方が男と女で違うのだそうだ。どうやらお腹を見た限りでは、男の子の可能性が高いとのことだ。


夜など、お腹を蹴られてなかなかリコが寝付けない時などは、俺がお腹を撫でてやる。すると、嘘のように赤ん坊が大人しくなる。ということで、俺が一緒にいる時は、いつもリコのお腹に手を当てて寝ることにしている。


メイのお腹も大きくなってきた。彼女の予定日は三月とのことで、メイもリコに合わせて早めに出産準備に入るようだ。幸いにしてメイにはつわりなどの症状が全くない。まだお腹が小さいので何とも言えないが、かなり大人しい子なのかもしれない。


12月に入る少し前、三人の新しい妻は本格的に帝都の屋敷で暮らし始めた。ニザのお城で蝶よ花よと育ててられてきたコンシディーは嫌がるかと思ったが、意外に彼女が一番屋敷での暮らしを楽しんでいる。どうやら、城から付いて来たミンシは行儀作法にうるさく、息が詰まるのだという。ここではそんなことに気を使わなくていいと喜んでいる。


しかし、彼女は知らない。我が家のテーブルマナーが、みんなリコの作法を見習っているので、とても洗練されていることを。


お陰で食卓はいつにも増してにぎやかになっている。彼女たちも料理を覚えるのだと言っているので、どんな料理を作るのかが楽しみだ。


ちなみに、彼女らもきちんと仕事に就いている。コンシディーは、メイの代わりに農作物の管理と、ドワーフの管理を任せている。彼女の輿入れに合わせてドワーフたちも都にやってきて、工房などを開いているのだ。


ソレイユは、迎賓館の宿泊エリアの管理である。彼女は行儀作法に優れているため、アステスと共に、スタッフの教育係になっている。きっと優雅で洗練されたサービスが今後、確立されていくのだろう。


そしてマトカルは、相変わらずラファイエンスの下で、兵士たちを訓練している。ちなみに、彼女と共に捕虜になった女たちも、アガルタ軍で働いている。結界師と回復魔法が使える魔術師のため、危険な訓練やけがをした兵士の治療など、非常に役に立っているのだという。



なお、俺の妻になると、スキルが少しだけ上がるという特典が付く。先日、鑑定スキルを使って彼女たちのスキルを見てみたら、こんな感じになっていた。



コンシディー(ドワーフ族の公女・32歳)LV41   

HP:159 

MP:174  

結界魔法 LV3 

火魔法   LV2 

水魔法   LV2

剣術    LV2

錬金術   LV4(UP)

鍛冶師   LV4(UP)

肉体強化 LV1

回避    LV1

行儀作法 LV2 

教養    LV3(UP)

毒耐性   LV5 

麻痺耐性 LV5


鉄壁


鉄壁:毒耐性LV5、麻痺耐性LV5




ソレイユ(サイリュース・57歳)LV55   

HP: 89  

MP:774  

精霊術   LV5(UP)

回復魔法 LV2

詠唱    LV1

MP回復  LV2

魔力探知 LV3

行儀作法 LV3 

教養    LV3


神召喚


神召喚:精霊術LV5



マトカル(剣士・23歳)LV23   

HP:400

MP: 24  


剣術    LV4

肉体回復 LV5(UP)

肉体強化 LV5(UP)

回避    LV1

精神耐性 LV3

教養    LV2


無病息災


無病息災:肉体回復LV5、肉体強化LV5




全員、スキルが上がって、称号が付いてしまった。コンシディーは鹿神の加護を受けているために、称号については、俺の妻になる前から称号が付いていたようだ。彼女は加護のためか、三つのスキルがアップしている。


特にソレイユの「神召喚」という称号も気になる。額面通り受け取れば神様を召喚できる能力ということだが、どんな能力であるのか、ちょっと楽しみだ。三人の能力については今後、ゆっくりと見ていきたいと思う。




一方で、ラマロン皇国のダイダス村では、村長のジンビが鋭い目つきで空を見上げていた。


ダイダス村は、バンザビ山の山頂近くにある150人ほどの小さな集落である。山頂を越えればイルベジ川を眼下に望むことができ、川を越えればアガルタ国とヒーデータ帝国に向かうことができる位置にある。


ジンビはゆっくりと息を吐きだす。その息は白く、風に乗って流されていった。そして彼の顔にはゆっくりと雪が降りてきていた。


「冬・・・か」


誰に言うともなく彼は呟く。そして再び目を閉じ、じっと何かを考える。しばらくして彼はまた、ゆっくりと息を吐きつつ目を開けた。


「アガルタに、行こう」


何かを決意したかのように彼は踵を返し、家に入っていく。


雪が少しずつ地面を覆い始めていた。

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