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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第一章 ジュカ王国編
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第十五話  大人になったらいろいろあるのよ

12歳になった。俺もいよいよ成人である。


こちらの世界では、12歳の誕生日は盛大にお祝いをするらしい。しかし、俺は奴隷である。そんな祝い事とは無縁である。


とはいえ、メイドのお姉さまたちからはお祝いの言葉を贈られ、腕によりをかけたご馳走を、わざわざ俺のために作ってくれたのだ。これはさすがの俺も感動した。彼女たちに泣きながらお礼を言った後、完全にツボにはまってしまって泣き止めず、なかなか料理に手を付けない俺に業を煮やしたお姉さまたちから怒りの鉄拳も振る舞われたことは、ここだけの話である。


ある夜、エルザ様の食事が終わった頃を見計らって、王太子殿下が突然お見えになった。この殿下の登場はいつも出し抜けだ。多忙で王宮をなかなか抜けられないためか、暇ができると思い立ったかのようにバーサーム家を訪れる。もっとも、エルザ様が不在の時はお見えにならないため、一応、エルザ様の在宅は確認しているようだが。


摂政就任以来、この殿下のお渡りはかなり少なくなった。余程政務が忙しいのだろう。そういえば、ここ最近、バーサーム侯爵の姿も見かけない。


殿下の就任式は盛大だった。王都は着飾った王国軍10万が厳重な警備を敷いていたので、些か緊張感の半端ない物々しい雰囲気でもあったのだが。


「いや、久しぶりだね。君が成人を迎えたと聞いて、祝いの言葉を贈りに来たよ」


「もったいのうございます、殿下。この奴隷にそのようなお言葉をいただくなど」


「いや、私にとって君は恩人だからね。このくらいのことは当然だよ」


摂政就任の晩餐会では、生きた状態の30羽の黄金鳥を見せたのだ。幻の鳥が生き生きと鳴き、飛び交う様子は、参加した人々のド肝を抜いた。当然それは、俺が巨大な結界を張り、その中を黄金鳥が気に入る雰囲気に作り替えていたためにできたことであるのだが。


「リノス、私からも祝いを贈ります」


エルザ様から一枚のカードが渡される。


「西門へ通じる関所への通行手形です。これからは自由に街に出入りすることを許可します」


王都は約100万人の人口を抱える巨大都市である。西門を中心とする西地域は庶民が居住する区画であり、商業地域と住宅地域が存在する。俺が最初王都に連れてこられたのも西門であり、俺を仕入れた奴隷商も西区域だ。東側地域は貴族の屋敷が並ぶ区域であり、北門と南門付近には王国軍関係者の屋敷が並ぶ地域だ。


貴族屋敷に通じる北門と南門には関所が設けられ、東地域へは許可書がないと通行できない。当然王都の東門は、最も堅牢な作りになっており、余程の慶事がない限り基本的に開かれることはない。最近では、殿下の摂政就任式が行われた時に開かれた。これでも約20年ぶりだったという。


「リノス!今度儂が街へ連れて行ってやろう!」


ご機嫌の師匠である。師匠が遊びに行くというと・・・アレか。もう、12歳で大人の階段を登っちゃいますか??


「ただし、門限を設けます。日暮れまでには必ず屋敷に帰ること。それ以降の外出は、必ず私に許可を取るようにして頂戴。ファルコもエリルも、わかったわね」


二人は何とも言えない顔をしている。まだまだ俺はお子ちゃまでいたいのだ。


「私は王宮の大手門から外に出たことがない。この屋敷とて、門の外には出してくれそうにないだろうから、自由に動けるリノスは、うらやましいな」


確かに、殿下は基本的には外出できない。湖を渡ってバーサーム家の屋敷に来ることも、かなりきわどいのだ。もっとも王宮は10万の兵士が余裕で収容できるくらいに広いので、本来は、わざわざ王宮の外に出ることもないのだそうだ。


「そしてリノスには、もう一つ仕事を任せたいと思います。当家の宝物庫の管理です」


歴史あるバーサーム家には数多くのお宝がある。特に初代バーサーム公が着用していた武器・防具は国宝級であり、凄まじい力を秘めていると言われる。


「宝物庫の開錠方法は、あとで伝えます。かなり複雑だけれど、貴方なら大丈夫よ」


「バーサーム家の宝物庫の管理者か。彼ならば、まず盗まれることはないだろうね。適任だ。しかしそれでは私の祝いが無駄になりそうだ」


「そんなことありませんわ。殿下のご慈悲が無駄になるなどあるはずがございません」


「うん、先生にそう言ってもらえると安心するね。いや、祝いというより、バーサーム家に対してのお願い、かな?」


また無理難題を仰せになるのだろうか。どうせ拒否権はないだろうし、結局やることになるのだろうが。いや、バーサーム家と言ったよね?俺は関係ないってことかな?


「当家に対してお願いなどと・・・。遠慮なくお命じ下さいませ」


「リノスの奴隷身分を解放して欲しい。」


おおっ!俺の身分を解放してくれるとは!!殿下、アンタはエライ!


「そしてリノスをバーサーム家の養子に迎え、その後に宮廷結界師として私の下に寄越してほしい」


・・・は?バーサーム家の養子?宮廷結界師?一体何がどうなっているんだ?


「リノスの結界師としての実力は超一流だ。魔力量も人並み外れている。リノスにはこの国の『大いなる盾』になってもらおうと思っているのだよ」


「ありがたいお話でございます殿下。しかしそれは、私の一存では決めかねます。一度、主人と相談の上、お返事をしたく存じます」


「まあ、急がないので、返事はゆっくりでいい。いきなりリノスを王宮内に迎えるわけにもいかないからね。早くても2年は先になるね。その間、侯爵と先生でよく話をしてみてほしい」


「畏まりました」


「新しい宮廷魔術師の名前はもう、決めてあるんだ。「バーサーム・ダーケ・リノス」どうだい、いい名前だろう?」


ご満悦の王太子摂政殿下。この話、俺の意志が全く反映されていないのですが、大丈夫でしょうか。平穏に暮らせる人生がいいんだけどなぁ・・・。


リノス(奴隷結界師・12歳)

HP:168

MP:859

結界魔法 LV4(自分の思い通りの結界が張れる!他人にも結界付与が可能)

火魔法  LV3(炎の大きさや発射スピードが操作できるようになった!)

水魔法  LV2

土魔法  LV2(穴を掘ったり埋めたりすることがかなり早くできるようになった!)

回復魔法 LV4(欠損部分も治癒できる!)

生活魔法 LV1

詠唱   LV3

鑑定魔法 LV3

剣術   LV2

MP回復 LV3(3時間程度の休憩でMPが全回復する)

気配探知 LV3

魔力探知 LV3

魔力吸収 LV3

肉体強化 LV2

回避   LV3(結界がなくてもエリルの攻撃は躱せます!)

行儀作法 LV2(洗練された動きができるようになりました。マドモワゼール?)

教養   LV3

麻痺耐性 LV2

毒耐性  LV2

精神耐性 LV3

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