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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第五章 新・ジュカ王国編
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第百二十五話 戦いの後の面倒な仕事

ブリアンの侵攻を鎮圧したその次の日から、俺は大忙しになった。というのも、ジュカ王国内を治めていた領主たちがこぞって王都にやってきたからだ。ある者は見え透いたおべんちゃらで俺に取り入ろうとし、ある者は高圧的に自分の意見を通そうとした。


集まった領主は30人程度であった。ジュカ王国は確か、100名を超える貴族家があったと記憶しているが、内乱を経て1/3程度にまで淘汰されたことになる。俺は集まった領主に、取りあえず現状での国境線を保持したまま兵を引くことを命じ、沙汰は追ってすると申し渡した。


彼らから聞き取った要望をまとめ、それが本当かどうかを確認していく。基本的に俺の「鑑定」スキルで大抵の噓やごまかしは判るのだが、物的証拠が必要になる。そのため、フェアリードラゴンたちを使って、それぞれの領主の言い分を確認してきてもらった。


調べてみると、嘘をついている家と、そうでない家の差がはっきり出た。


新たな領地を寄こせだの、あそこは自分の領地だっただの、法外な食糧支援を要求してくる領主の大半は、元貴族の連中であった。俺が奴隷の身分であったのをいいことに、完全に俺をナメていたのだ。一方で、心から国の安定と領民たちの安全を願う領主もいた。こういう奴らは、逃げ出した貴族のケツを拭いてきた、元平民などの連中が大半だった。


彼らの要求をどこまで受け入れるのかは、ちょっと頭を悩ませた。さすがに、一日目に8人もの元貴族たちと謁見した時は、さすがの俺も萎えてしまい、夜はリコに慰めてもらった。それだけでなく、貴族は力技の恫喝に弱いとリコは息も絶え絶えになりながら教えてくれたのだ。相変わらず、すばらしい妻である。


そして、領主たちを引見すること3日。集まった領主たちにそれぞれの処遇を言い渡す準備が整った。


リコのアドバイス通り、王都にやってきた領主たちには毎日、ラファイエンスたちの模擬戦や騎馬戦などをこれでもかと見せつけて、俺たちの力を誇示した。そして、最後にカースシャロレーの群れを、領主たちの目の前で討伐させてみせた。彼らは選び抜かれた超一流の軍人たちである。30頭にも及ぶ巨大牛の突撃を易々と止め、あっさり討伐してみせた。それを夕食に供したところ、貴族連中の食欲はかなり少ないものになっていた。


そしていよいよ当日、用意された会場には、クノゲン以下300名の兵士がラマロンから奪った鎧に身を包み、着飾ったラファイエンス以下、10名の親衛隊が並んだ。そしてその中心には全力で美しく着飾ったリコと、彼女の腕によりをかけてオシャレを施された俺の姿があった。


リコは目が覚める程に美しかった。俺の邪魔はしないように派手さを抑えた衣装だったが、そのあふれ出る気品と知性は周囲の空気を研ぎ澄ませ、ヒーデータ帝国の威光を存分に示していた。


「皆様におかれては初めて御意を得ます。ヒーデータ・シュア・リコレットでございます。この度は我が夫、バーサーム・ダーケ・リノスの下に集っていただけたこと、私よりも御礼申し上げますわ。このジュカは愛する我が夫が生を受け、物心つくまで育てていただいた地。それが大魔王に蹂躙されたと聞き、私も心を痛めておりました。この度、夫が故国に赴き、その立て直しを皆様と共にお手伝いする。これ以上の喜びがありましょうか。私とても協力は惜しみませぬ故、皆さま存分にお力を振るってくださいませ」


へり下っているようで、言葉の端々に「アタシらに逆らったら容赦しねぇぞ、コラ?」という雰囲気を満々に滲ませている。そんなリコが最後に恭しく俺に頭を下げ、


「どうぞ、ご存分に采配を振るわれませ。このリコレット、身命を賭してあなた様の命に従います」


その言葉の直後、居並んでいた兵たちが俺に最敬礼をする。これで大半の貴族連中が沈黙した。


さらに俺はその場に、ラマロンの捕虜であるレイリックとブリアンを同席させた。二人ともフルチンにされたうえ縛られて身動きのできない姿にされている。さすがにブリアンのこの姿はジュカの人間にはショックだったようで、これで完全に領主たちの心が折れた。


その後は実にスムーズだった。俺の鑑定とフェアリードラゴンの証拠でシロと判断された者には食料を与えた。そしてクロと判断された者は、傭兵の2/3を王都警護部隊に差し出すことを申し渡した。その上、あまりにも素行不良な2名領主については、その身柄を王都で拘束し、領地を没収の上、統治能力に優れたシロの領主たちにその管理を任せることにした。


「やれやれ、疲れたな」


既に日が傾きつつある時間だが、俺はリコ、ラファイエンスとクノゲンたちと共に王国軍本部の休憩室で、甘い紅茶を飲んでいた。


「ヤツらのことは任せてください」


クノゲンが胸を張る。


「すまないな。お前には負担をかけるな」


「クノゲンならば、これしきではまだまだ仕事のうちには入らないな?」


ラファイエンスがニヤリと笑う。クノゲンも苦笑いしている。


「さて、リノス殿」


老将軍が真面目な顔になる。


「そろそろ、国境に兵を進めなければならんな」


「どういうことでしょう?」


「南の領地はラマロンに蹂躙されたままだ。そこにも、リノス殿が行って食料などを支援した方がよい。民衆は自分たちを食わせてくれる者を領主と認めるものだ。我々も手伝おう」


「しかし、将軍があまりここに長居をしても、北方軍の士気に影響が出るのでは?」


「なぁに、夕方からは自分の屋敷に帰って休んでいるのだ。問題などあるまい」


事も無げに老将軍は言ってのける。取りあえず、明日から俺はラファイエンスと共に南方の領地を巡検することになった。


老将軍は先に転移結界を使って帝国に帰り、俺とリコはフェリスたちを伴って帰ろうとした。するとそこに、マトカルと共に捕虜になっている魔術師の女が俺にこっそりと近づいてきた。


「あの・・・恐れ入ります。その・・・マトカル様のが・・・そろそろ始まりそうです」


一瞬何のことかわからなかったが、リコは瞬時に意味を理解し、何やらコソコソと話をし始めた。そして女を部屋に返すと、


「リノス、今からマトカルが参ります。彼女も連れて戻ります」


「うん?何でだ?」


「ええ、ちょっと試したいことがありまして」


クスリと笑うリコは、衣装の美しさも手伝って、いつもより何倍も美しく見えた。


「キレイだ、リコ」


リコは顔を真っ赤にしながら、俺の腕に手を伸ばしてくる。頬を赤く染めたリコは、いつも以上にかわいらしく見えた。


「う・・・オホン」


その声で我に返る。見ると、マトカルが来ていた。


「じ、じゃあ、行こうか・・・」


俺たちはフェリスたちと合流し、屋敷に転移した。


帰った早々、リコはフェリスとマトカルを伴って部屋に行ってしまった。ダイニングにはペーリスが作った美味そうな料理が並べられつつあった。既にみんな戻ってきており、席についていた。俺たちも椅子に座り、自然と今日の報告が始まる。メイの方は順調そのものでノームともうまくいっているという。それに、森の精霊たちの働きで、フェアリードラゴンたちが暮らせる場所を作ってくれたのだという。サイリュースの集落の近くらしいが、美しい水ときれいな花が咲き乱れる場所なのだそうだ。その件についてはメイに任せることにした。


さらに、黄金鳥の飼育もできそうだという。これからあのジューシーでコクのある肉がいつも食べられると思うと、テンションが上がる。


そんなことを話していると、リコがダイニングに下りてきた。その後ろから、フェリスに背中を押されるようにしてマトカルが入ってくる。


何とマトカルは、リコの衣装を着、化粧を施されて、美しく着飾っていた。


妾腹とはいえ、皇帝の娘である。着飾ると気品があり、大国の姫と言って十分通用する美しさだ。何より、ちょっと吊り上がった目じりに愛嬌があり、これは男性に人気が出そうな雰囲気である。


「もう少し、髪が伸びればもっと美しいのでしょうけど、まあ、こんな感じですと70点くらいですわね」


リコが事も無げに言う。俺的には100点満点なのだが。


「やはり女性は美しく着飾るべきだと思いますの。なにより、美しいのですから、その美しさは磨いた方が、マトカルは幸せになると思ったので、一度試してみたのですわ」


「さすがはリコ姉さまです。ちょっと姉さまの服を選んで、ささっと化粧をしただけでこれだけ美しくなるのですから・・・私もびっくりです」


「マトカルには後で私から、必要な物を差し上げますから、それをもってお帰りなさいな。まあ、せっかくですから、夕食を一緒に食べてお帰りなさいな」


「今・・・この格好でか?」


マトカルは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにモジモジしている。


「あ・・・足が寒い。女たちはその・・・こんな寒いのと恥ずかしいのを、いつも我慢しているのか?」


リコは不思議そうに首をかしげてマトカルを見ていたが、やがて思い出したように声を上げる。


「まあ、私としたことが。とんだことを忘れていましたわ!」


「どうした、リコ?」


「マトカルに、下着を履かせるのを、忘れていましたわ」

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