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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第三十四章 失敗からの創造編
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第千百二十二話 また、エライことになったゾ!

予想した通り、シディーがぶっ飛ばした部屋は、ちょっと、ではなく、言うなれば大惨事になっていた。十畳ほどの部屋だが、それが跡形もなく吹き飛んでいたのだ。ちなみに、新しい研究所は本館は地下に作っているが、今では拡張されて、そこからさらにいくつかの部屋が作られている。この様子だと、爆発の衝撃で結構大きな地震が起こったのではないかと思わせるほどの様子だった。


むろん、その部屋は一旦閉鎖ということになった。ここまでグチャグチャになってしまったので、また別の場所を掘り進めて新しい部屋を作ることを提案したのだが、シディーは壊れた部屋を修復してほしいと言ってきた。俺としては、がれきの撤去の手間が省ける分、新しい部屋を作る方が、負担が少なくて済むのだが、シディーは、そこは頑として譲らず、ちょっとした言い合いになりそうになったが、最後は彼女が泣きながらお願いと言ってきたので、仕方なく受け入れることとなった。女子の涙には……弱いのだ。


だがその、がれきの撤去はなかなか骨が折れる作業だった。


俺は単に錬成して固めた土をもう一度元の状態に還し、そこから再び部屋を作り直そうと考えていたのだが、なぜか一部の土の錬成が解除することができなかった。俺もそれなりに長い期間魔法を使ってきたのだが、こんなことは、俺のキャリア上初めてのことで、大いに戸惑った。


結局がれきの撤去は人海戦術で行う方が効率的と判断した俺は、人の手でそれをやることに決めた。結果的に手伝いに駆り出される羽目になったのは、シディーの工房で働くドワーフたちだった。


これはある意味で正解でもあり、ある意味で不正解でもあった。


なぜ正解かと言えば、ドワーフは力が強い。これは先天的なものもあるが、工房で働く彼らは常に鉄などの鉱物と戦っており、その体は鍛え上げられていた。そのために、がれきの撤去は普通の人間が行うよりもはやい速度で完了させることができたのだった。


そんな彼らをして、なぜ不正解かと言うと、工房の中でも最も口の煩い連中が来たことだ。常に文句を言う、ひたすら文句を言う。よくそれだけ文句が言えるなと思えるほど言い続けていた。さすがにこれでは現場の空気は悪くなる。俺も手を変え品を変え彼らを懐柔しようと試みたが、俺の前ではそれを言わなくなったが、俺のいないところで彼らはそれを言い続けた。


さすがにこれではいかん、と考えた俺は、妻たちに相談した。シディーは顔を真っ赤にしながらスミマセンと謝り、明日にでも現場に行って文句王たるリンショックらを張り倒すと言って息巻いた。ただ、シディーの力も相当に強い。見た目は華奢な中学生に見えるが、持っている戦闘力はそこいらの戦士以上のものがある。この勢いでブッ飛ばされたら、間違いなくジイさんたちは死んでしまうだろう。さすがにそれはいけないなと思っていると、ソレイユが手を挙げて、私が何とかしましょうと言って笑顔を浮かべた。


ああ、その豊満な肉体でジイさんたちを篭絡するのかなと思っていると、彼女は何とイデアとピアの兄弟をお借りしたいと言ってきた。あまりにも予想外な発言だったので、リコとシディーの表情が一瞬で強張ったが、彼女は心配なら一緒についてきてもらっても構いませんと言って胸を張った。


会議の結果、ここはソレイユに任せてみようということになり、早速彼女は翌日、イデアとピアを伴って現場に向かった。


いつものソレイユであれば、体のラインがきれいに浮かび上がるほどのセクシーな衣装を着てくるが、今回は派手さを押さえた、彼女にしては地味な衣装を着ていた。それでも、その色気は周囲を圧倒するほどで、彼女は全く意識をしていないだろうが、チラリと見る流し目が何とも艶めかしく、俺は別の意味で不安を覚えた。


だが、現場に着くと活躍したのは、意外にもイデアとピアだった。二人は渋々とがれきを運び出すドワーフたちの姿を見て喜びの声を上げ、すごい、すごいと言って彼らを大いに褒めた。


いつも文句しか言わないリンショックらは競って、もっと大きな石を持つことができますじゃ、と言って率先して働くようになり、その様子を見た二人はさらに、目を丸くして驚き、喜んでいた。


現場の空気が一変していた。皆がヤル気に満ち溢れていて、率先して動くようになっていた。子供の声援がこれほどの効果があるとは思わず、俺は幼い二人の背中を見ながら、小さくお辞儀をしたのだった。


二人の声援もあり、また、ソレイユもまた折に触れてドワーフたちを褒めたので、作業は予定よりもはるかに早く終わらせることができた。


あとは俺の土魔法で元の状態を作り出せば済むところだが、コトはここで終わらなかった。


俺の魔法を使っても錬成が解けないという石を調べたところ、恐ろしい硬度を持っていることがわかったのだ。つまりは、俺が錬成した土にハウオウロを使い、メイシディンを使って爆発させれば、俺の錬成を超える硬度の物質が作り出せるということだ。どの程度のハウオウロを使い、どの程度の爆発威力があればそれが可能となるのかは実験を繰り返す必要があるが、これはこれで、いわゆる世紀の大発明につながるものとなった。


その物質が自由に作り出すことができれば、城壁などが強化することができる。それで小さな球を作れば、いわゆる弾丸として使用することができる。戦争だけではない、それがどの程度まで耐久力があるのかは調べる必要があるが、高い耐久性があるのであれば、下水管としても活用することができる。そうなれば、この世界のありさまが劇的に変わる可能性だってあるのだ。


メイとシディーは大いに喜び、この物質の研究を続けていこうと誓い合っていた。


その成果は早速、リボーン大上王に報告された。その使者には俺とメイの二人が立った。


俺もメイも正装をして大上王の許を訪れたのだが、俺たちの姿を見るや、彼は顔をこわばらせた。俺とメイ、交互に視線を向けているが、メイを見ている時間が圧倒的に長い。確かに、いつもの白衣姿ではなく、ドレス姿のメイだ。いつもとは違ういで立ちだが、こういった公式の場に出る、いわゆるフォーマルな格好をした彼女の姿は何度も見ているはずだが、それでも、メイに視線を向けてしまうあたり、彼女の美貌がそうさせるのか、はたまた大上王が素直すぎるのか……。まあ、その両方と言ったところだろう。


彼はメイからの報告を、うむ、うむと満足そうに頷きながら聞き、最後にギュっと目を閉じて、素晴らしい、と誰に言うともなく呟いた。そうして彼は、その物質は戦争目的ではなく、平和裏に利用するべきであることを滔々と語り、そのためならば、フラディメ王国は協力を惜しまないと言って涙を浮かべた。


別に泣くことはないんじゃないかとは思ったが、彼は天を仰ぎながら涙を拭っていた。よほど珍しい光景なのか、パターソンら周囲にいた家来たちは目を丸くして驚いていた。


そんな彼にメイは、この研究には、大上王様はもちろん、フラディメの研究者の方がのお力が欠かせませんと言い、それを聞いたジイさんは、イヤ儂などもう耄碌しておりますから、と変な謙遜をし、メイがさらに、そうおっしゃらずに、と宥めるという何とも言えぬやり取りが繰り返された。


ややあって大上王は、アガルタ王殿と言って俺に視線を向けた。


「ところで、その後は、いかがかな」


「うん?」


てっきり礼を言われると思っていた俺は、予想外の質問に狼狽えてしまう。そんな俺に大上王はさらに言葉を続ける。


「ハウオウロの研究である」


「ああ、ただいま進めております」


「確か……鉱物を洗浄した際の汚染物質だけを、ハウオウロで吸着させると言っておいでであったと思うが……」


「その点ですが、オリハルコンを使いまして、実験を進めております」


「オリハルコン? オリハルコンを使っての実験? それは……実に興味深い。そうか、オリハルコンを使われるのか。これはリボーン、予想もしておらなんだ。ぜひ、その実験の内容を承りたい」


……あれ、なんだ? どうしてこうなった?

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