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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第三十四章 失敗からの創造編
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第千百二十話 メインティア王がやって来たゾ!

メインティア王は馬車の中でしゃべり続けた。よくしゃべる男だとは思っていたが、それまで誰とも話をしていなかったためか、それを取り戻すかのように、マシンガントークを繰り広げた。


「アガルタへの転移は、シャッフルの森に設置した結界から向かうのだろう? 確かあれは君の執務室近くに転移するのだったね? いや、地下か。地下室に転移するのだったよね。そうだそうだ。結構暗いよねあそこは。あれは敢えてやっているのかな。そうだそうだ、思い出した。その暗い部屋から廊下を抜けて、階段を上がると、広場に出るのだったよね。そこから……迎賓館に向かうのかな? 私の宿所は迎賓館で間違いはないかな。いや、もし、ほかの場所を予定しているのであれば、迎賓館にしてくれたまえ。あそこは、出かけるのに色々と都合がいい。あ、もし部屋が空いていないのであれば言ってくれたまえ。その場合はミラヤに宿をとる。言わば、居続け、というやつになるのかな。部屋があくまでそこで寝泊まりするとしよう。あ、もちろん父上には黙っておいてくれたまえ。まあ、それは言うまでもないことだ。君なら十分にわかっていることだろうから、これは蛇足だねクックック。そうだな、部屋に入ったら風呂に入って髭をそって……ミラヤに行くとしようか。あ、その連絡はお願いできるかな。なるべく早く行こうとするか。あの、館長の……ミンシさんだったかな? あの方はお元気かい? あの方も私は好みだ。このままだとあの方も口説いしてしまう気がするね。だから早めにミラヤに行かないといけない。……まだ着かないのかい? 馬車の速度が遅いんじゃないのかい?」


……まったく意味のない会話だ。俺は車窓に視線を向けて移り行く景色を楽しんでいた。相槌などの類は一切していない。にもかかわらずこのバカ殿は一人でしゃべり続けているのだ。どれだけ煩いことか、その面倒くささが伝わるだろうか。


ややあって馬車は森の中に入り、転移結界のある場所についた。バカ殿はいそいそと結界に乗り、俺たちもそこに乗る。アガルタの都に着くと、メイティア王の足取りは軽く、小走りに迎賓館に走っていった。


「お……お元気そうですね」


「そう簡単に死なないな、あのバカ殿は」


俺とホルムは顔を見合わせながら、そんな会話を交わした。


迎賓館に入った彼は、すぐさま風呂に入り、身支度を整えて早速ミラヤに向かった。どこをどう聞きつけたのかは知らないが、その案内役にはゴンが立ち、なぜかゲンさんの弟子たちも数人、そのお供に加わったそうだが、俺は聞かぬふりをした。


アリスン城の自室に閉じ込められていた間は、水以外ほとんど食事に手を付けていないと聞いていたが、性欲だけは一丁前にあるらしく、彼はミラヤに三日間居続けをした。むろん、そこで供された酒や食事には手を付けたのだが、何より驚くのは、店に到着するなりいきなり三人の遊女を指名してコトに及んだのだそうだ。食事を摂っていないので相当に体力も落ちているだろうに、その性欲の旺盛さは恐るべきものがある。試しにローニに聞いてみたら、医師として、そんなことは到底勧められませんと言い、そんな馬鹿なことを聞かないで下さいと言って怒られてしまった。そのまま遊女の体の上で腹上死でもすりゃいいじゃないかと思ったが、彼は三日間の逗留を経て、完全復活を遂げたのだった。


一方の大上王は、国内で発生しているハウオウロを駆除するべく陣頭指揮を執っているらしい。心配された粛清も行われることなく、宰相のパターソンも大上王の傍にあって、彼の仕事を手伝っているらしい。


メイとシディーが中心となって実験を行っているハウオウロだが、おおむね順調にきているようだ。ただ、特定の物質だけを吸着するというのは出きていないらしい。それはいろいろと試行錯誤を繰り返す中で結論を出していくそうだが、ひと月以内に結論を出すのは難しそうだなと感じる。


メインティア王は、アガルタの都に来てから約一週間で少し顔がふっくらしてきた。それはそうだろう。好きな時間に寝て起きて、好きなものを食べて、気が向けばミラヤに行って女性と戯れる……。まさしく理想的な生活を送っているので、体調が悪くなる要素が一つもない。ノンストレス状態なのだ。太ってくるのも頷ける。


そんな彼が、いきなりメイたちの実験を見たい、などと言い出した。さすがにそれはと言ってやんわりと断ったが、このバカ殿はそれで諦めなかった。何と自らアガルタ大学に赴いて、何のアポもないのに学長室に直行したというのだ。しかもそこにはたまたまメイがいて、彼女に直接交渉をした結果、実験を見学する許可が下りてしまった。屋敷に帰ってきてメイからその話を聞いた俺は仰天してしまったし、シディーもあからさまにイヤそうな表情を浮かべていた。


別に俺が行く必要もないのだが、何だかあのバカ殿を自由にさせるのはイヤな予感がしたので、一緒に見学をすることになった。彼は衣服を整えて現れると、俺と同じ馬車に乗ってアガルタ大学に向かった。フラディメを離れる際はあれだけ喋っていたのだが、このときの彼はいつものように落ち着いていて、必要以外の言葉を交わさなかった。


学長室に通されると、メイと秘書であるセルロイトが出迎えた。彼は二人に向かって、いつも父がお世話になっておりますと挨拶をして、どこで買ったか知らないが、豪華なペンを差し出した。あとで聞いたら、この王が愛用していたペンで、わざわざ自分の執務室から持ち出したものをメイに贈ったのだそうだ。いろいろと消毒などをしないといけないかなと思ったが、メイは一目見てそれを気に入り、早速使ってみますと言って笑顔を見せた。聞けば、フラディメでの最高の腕前を持つ職人が作ったもので、もともとはリボーン大上王の父君が使っていたものらしい。それを大上王が使い、メインティア王に伝わったもので、いわばフラディメの王位を継ぐ者に伝わるアイテムなのだが、それを彼は気前よくメイにあげてしまっていた。あとで聞いたが、このバカ殿の言葉が振るっている。あのペンは本来は知識を紡ぎだすものが使うもので、私のように落書きや絵を描くために使うものではない。まさにメイリアス殿こそがあのペンを持つにふさわしいから贈ったのだと言う。俺は単に父親の使っていたものが疎ましいから、メイに贈ったのではと邪推したが、それは俺の心が汚れているからだろうか。


ちなみにメイは早速それを使ってみたそうで、実に使いやすいペンで、すぐにお気に入りの一品になったのだそうだ。


彼はメイとセルロイトの先導で、実験施設を見学した。もっともらしく、メイの説明にうん、うん、と頷いていたが、きっと言っていることの半分もわかるまい。なぜ、そんなことが言えるのかって? 俺が皆目理解できなかったからだ。この王にそんな専門的な知識があるとは思えないが、ただ、知らないなら知らないで、ちょっと知った感じで上手に返事をしている。俺もこれは見習おうと思う。


最後に通された部屋にシディーがいた。彼女はハウオウロを詰めた筒のようなものを作り、そこに水を通すことで、水を汚している物質を除去する実験をしていると説明した。今は、水を汚染する物質だけを抽出できるよう試行錯誤を繰り返していると説明した。


「あれ? あれは使わないのかな?」


不意にメインティア王が口を開いた。何を言っているのかがわからなかったのか、シディーはキョトンとした表情を浮かべる。


「あれ……って?」


「ほら、オリハルコンを水につけて生み出される、アレさ。せっかく新しい技術を生み出したのだから、それも使ってみればいいのに」


「あー」


シディーは人差し指をあごの下に当てながら、天を仰いだ。

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― 新着の感想 ―
バカ殿って必要なのかな? 仕事しない王とか、友人だとしても世話する必要無いと思うけどなぁ。。
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