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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第四章 ニザ公国編
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第百一話   飲んで食ってホッと一息

「やっと終わりましたね」


「あとは結果を待つのみだな」



ニザ公国の農耕地に盛り土をすることひと月、ようやくそれが完成した。しかも、山を切り開き、運び出した土を盛り土にしたため、結果的に耕作地が広がったのだ。


当然、使用する水は、新たに掘った湧き水を使用している。森の奥深くに大量の地下水が埋没しているのを発見したため、早速掘り出したのだ。


用水路を整え、畑に水を撒く。念のため、フェアリの毒物を中和する粉とメイが作った薬品を散布する。小さいフェアリードラゴンがパタパタと畑の上を飛び回る姿は、なかなか癒されるものがあった。


「ご主人様、終わりましたー」


「ありがとう。よくやってくれた」


「えへへ」


フェアリは、最初は舌足らずな念話を送って来ていたが、最近はかなりしっかりとした念話を送ってくるようになった。ペーリスやフェリスたちお姉さまから人語も学んでいるようで、もうしばらくすると喋れるようになりそうだ。


俺はフェアリの頭をなでながら、メイの作った肥料が撒かれている光景を見る。瞬く間にそれが終わり、種が撒かれて、とりあえず俺たちの第一目標は完成したのだった。


「よーし、みんな、ご苦労だった!今日は宴会だ!飲んで食うぞ!」


「うおおお!!!」


野郎どもの歓声が上がる。やるべきことはすべてやった。あとの結果は天に任せるほかはない。その夜は帝都からリコたちも呼び、飲めや歌えのドンチャン騒ぎになった。


そんな光景を俺はぼんやりと眺めていた。


「どうしたのです?リノス」


色々な食材を運び、料理してくれたリコが声をかけてくる。


「いや、一つのヤマが越えられたなと思ってね」


「ご苦労様でした」


「このひと月、ご主人とメイ殿はよく働いたでありますからなー」


俺は、歓喜の輪の中にいるメイを見る。ここでも彼女は土や毒の鑑定、果てはドワーフと共に農具を開発するなど、文字通り八面六臂の活躍を見せていた。それだけに現場の人間からの信頼は抜群で、メイの周りには多くの野郎どもが群がっている。


「本当に、メイはよくやってくれた。あとは、コンシディー公女もだな」


コンシディーはメイと同じように野郎どもに囲まれて、楽しそうに酒を飲んでいる。彼女も、現場作業はもちろん、もともとドワーフということもあって鍛冶スキルがあるために、メイとたちまち仲良くなった。今ではメイの片腕のような存在になりつつある。盛り土の作業がこれほど早く終わったのは、彼女無くしてあり得なかったのだ。


「そうでありますなー。コンシディー様は才能豊かな才女でありますなー」


「ああ、俺が王様なら何か、褒美を与えたいくらいだよ」


「でしたらリノス、帝都の屋敷にコンシディー様を招待してはいかがです?」


「そうだな、彼女の返事次第だが、屋敷で皆でうまいものを食うか!」


「「賛成です!!」」


フェリスとルアラが元気に返事をする。


「では、メニューをリコ様と考えますね」


「悪いな、ペーリス。勉強の邪魔にならない程度に頼むよ」


俺の屋敷で慰労会をするという話に、コンシディーは大喜びで賛成し、数日後、転移結界を使って彼女はやってきた。


色々と準備をする中で、俺たちだけでは勿体ないということになり、屋敷の庭を大解放し、我が家の主だった者たちを集めての大慰労会になった。


帝都からは、リコ、ゴン、メイ、ペーリス、フェリス、ルアラ、フェアリ、イリモとジェネハたちハーピー。そしてクルムファルからピウスたちと共に、ゲーキとイトラもやってきた。最近彼女は体が大きくなってきたが、愛らしさは相変わらずだ。その他、カイリークとトホツからカールスとマルセル夫婦とその家族たちも招待した。さすがにゲュリオンの姿を見るのが初めてのドワーフたちは、かなり動揺していたが、リコたちに懐いている姿を見て、徐々に安心していったのだった。



「みんなよく来てくれた!今日はゆっくり飲んで食ってくれ!」



用意された刺身、天ぷら、肉、野菜、グラタン、パスタ、スィーツ・・・などに舌鼓を打ちながら皆と談笑する。その中に見慣れない一人の青年の姿を見つけた。


「バーサーム侯爵様、本日はお招きにあずかり、光栄です!」


なぜか一人だけ正装しているので、メチャメチャ浮いている。


「君は?」


「私、クラリフォン子爵家のクラリフォン・サエリ・チューリーと申します。ペーリスさんとは、大学で同じで・・・ええと・・・」


「クラリフォンさんはとても料理に興味があるので、せっかくですから招待しました。普段着でいいって言ったんですけどね~」


「ああ、ペーリスの友達か。いつもありがとうね」


「とととととんでもない、こちらこそ、ペーリスさんにはお世話になっています!」


ガバッと彼は腰を折ってお辞儀をする。


「クラリフォンさん、リノスさんの料理もあります。ぜひ、参考にしてくださいね」


「ああああありがとうございます!」


顔を真っ赤にして答えている。この青年は、あれだな。早速ペーリスに話を聞く。


「クラリフォンさんはすごく料理に興味がありまして、私のお弁当を参考に、色々と料理を考えているみたいです」


「へぇ~彼も料理をするんだ」


「料理をすることは見たことはありませんが・・・。ただ、夕食の残りものを詰めたものをたまに持って行ってあげています。そうだ!クラリフォンさ~ん」


名前を呼ばれた青年は飛ぶようにペーリスの所にやってきた。


「あちらで料理ができます。まだ食材が余っていますから、よかったら何か作られますか?そういえば私、クラリフォンさんが作った料理を食べたことなかったんですよね~」


「え?料理?僕!?」


青年は固まってしまっている。


俺はリコに目配せをする。


「クラリフォン様、今から私も追加で料理を作りますの。よければご一緒にいかがですか?」


「リ、リコレット様!そ、そんな、恐縮です!」


「まあ、そのように畏まらなくてもよろしいですわ。どうぞこちらにいらしてくださいませ」


「ハ、ハイ・・・」


ドナ○ナのように、青年はリコに連れて行かれてしまった。頑張れ青年、俺は陰から応援するぞ!


しばらくすると、帝都からウィリスたちが転移してきた。ウィリス、シェーラ、ユリエルとソーニヤ親子だ。


「ウィリス!よく来たな!もう店はいいのか?」


「ハイ、本当に大忙しです。秋の収穫をお客様が楽しみにしてます」


「そうか。今日はゆっくり飲んで、食べていってくれ!」


「その前に、ご主人様にお願いがあるんだ」


「何だ?」


ウィリスの後ろから見慣れない猫人族の女性が姿を見せた。なかなか目力があって、しっかりしてそうだ。


「彼女はティーラ。冒険者をしていたんだけど、パーティが解散してしまって・・・今は店を手伝ってくれているんだ」


「ほう、その猫娘がどうした?正式に雇いたいのか?」


「それもあるけれど、できれば・・・彼女と結婚させてほしいんだ」


「結婚?」


「・・・ご主人様、私からもお願いするのじゃ。ティーラはいい人なのじゃ。兄様のお嫁さんにしてあげたいのじゃ」


「ああ、いいよ。全然。おめでとう!」


「ありがとうございます。ご主人様」


「おーい、みんなちょっと聞いてくれ!こいつはウィリス。帝都で店を任せている。コイツがたった今、結婚することになった。お嫁さんはこのティーラだ!皆で祝ってやってくれ!」


「うおおおー!おめでとー!!!」

「なんだ!かわいい嫁さんもらいやがって!」


ウィリスは皆にもみくちゃにされながら祝福されていた。彼は泣いていたが、それがうれしさの涙であったのか、痛みによる涙であったのかは、敢えて追及しなかった。


宴もたけなわになり、皆、それぞれの家に帰っていった。屋敷に残ったのは、俺たちとコンシディー公女だけになった。


「じゃあコンシディー様、ニザまで送りましょう」


「私、夢を見ているんじゃないですよね?」


「どうされました?」


「こちらにお邪魔してからずっと不思議でした。人間、魔物、獣人、海人族、猫族、そしてドワーフ・・・これだけの種族が一堂に会して食事をするなんてこと、今まであったでしょうか?」


「・・・ないと思いますね」


「本来ならば敵同士になっていてもおかしくない種族もいます。その人たちとお酒を飲むなど・・・」


「リノスの所にいれば、そんな種族の問題は全くなくなるのですわ」


「リコレット様・・・」


「それが私の主人、リノスの最大のスキルなのですわ」


「こんな光景が、世界中のあらゆる場所で見られたらいいのに・・・」


「本当に、そうですわね」


「今度は、ポーセハイの奴らも呼んでやりたいな」


「そういえば、侯爵様に預けられたポーセハイは、どうしているのですか?」


「どうも何も、クルムファルで活動していますよ。思った以上に好評で、彼らが世界一になるのも、時間の問題だと思いますよ?」


コンシディーは不思議そうな顔をしながら、メイに伴われてニザへと戻っていった。




「・・・シューセより本部どうぞ」


「本部です、どうぞ」


「C-18地点、人手が足りません。増援願います」


「了解。ニツグ、本部です。どうぞ」


「どうぞ」


「C-18地点への増援をよろしく頼む、どうぞ」


「了解しました」




深夜のクルムファルに、黒い毛皮に覆われた兎人族が突然現れる。彼らは「念話」と「転移」スキルを活用して、医療活動を始めていた。各町と農村に配置されたポーセハイは、瞬く間に医術スキルを開花させ、住人にはなくてはならぬ存在になっていた。それだけでなく、人手が足りない場合は転移によって補い合い、かなり迅速で高度な医療活動が行えるようになっていた。


ミニーツの緊急招集に応じられなかった老人や子供、その母親たちもまとめて転移してきており、それらを合わせるとクルムファルのポーセハイは、100名近くになっていた。


その人々も活用して彼らは、救急活動を行うよう試行錯誤を重ねていた。後にそれは実を結び、多くの住人から感謝されることになる。彼らは名実ともに「世界一の医療集団」となるのだが、それはまた、別のお話。

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