第一話 プロローグ
*初めてお読みになる方へ
こちらのWEB版はあくまで「下書き」です。辻褄の合わない場面、誤字、脱字等は、書籍版で補完しております。是非こちらをお読み下さい!
助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ―。
俺は久保たもつ。34歳。ここはトイレの個室。今の俺はヤバイ状況にある。マジでヤバイ。
俺はプログラマーをやっている。いわゆるIT戦士というやつだ。この仕事、ラクじゃない。
ある程度仕事ができるようになると、いくつものプロジェクトを掛け持ちさせられ、納期に追われる毎日。余裕のあるスケジュールが引かれる(もっとも、余裕のあるように見せているのだが)ことはなく、ひたすら残業と徹夜を繰り返して作業に没頭する。そんな業界だ。
今日も俺は火だるまになったプロジェクトに苦しめられている。そして、デスクの電話が鳴る。
「久保さん、僕は限界です。辞めさせてください」
退職を電話一本で済まそうとする行為はどうよ?と思われるが、意外とそんなヤツは多い。しかし今はマズい。抱えているプロジェクトの納期が明日なのだ。電話の彼はメインプログラマー。彼なくしては最早、明日の納期は完全に間に合わない。
有効な打開策はない。ここは一旦、心を落ち着けなければならない。俺はフラフラとトイレの個室に入り、大きなため息をつく。
一体なんでこんなことになるんだ?どうすんだよ?あー休みてぇ。ゆっくり休んだのはいつ以来だ?定時に帰宅したのはいつだ?休みたい、とにかく休みたい。女子とデートしてぇ。IT業界は女にモテるんじゃなかったのか?全く寄り付かん。社内の女どもはみんな死んだような眼をしてるじゃねぇか。一体何なんだ?本当にもう誰か、助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ―。
ゆっくりと、俺の意識が遠くなっていく。