恋の訪れ
春。
やっぱり…失敗だったか…?
俺、春田樹はこの春からピカピカ高校一年生だ。
高校生にもなれば当然、髪を染める奴もいるだろうと思ったんだが…
思いっきり出鼻をくじかれた気分だ。
なにせ、新しいクラスに入って髪を染めていたのは俺一人だけだったからだ…!!
何故だ……!!
心なしかみんな俺を避けてる気が……!!!
でも!!別に今日の為に染めた訳じゃないし!?また染め直せばいいし!!
そう思い、勢い良く席を立ち上がると…
「ひぃっ!!」
ん?ひぃっ??
キョロキョロと周りに目をやると、明らかに俺を見て怯えている女子一人。
えっ…!?
これ俺見てヒビってる感じ?
さらに周りを見ると俺を見ながらヒソヒソと何か聞こえてくる…
あーこれ俺が不良とか思われてるパターンか……
俺は立った席を座り直した。
…高校入ったら沢山友達出来て、恋人も出来てバラ色の青春時代を送るはずが…!!
まさかの三年間ぼっち…だと…!?
そう思うとサッと血の気が引いてきた…!
嫌だ…!!!
ぼっちの青春時代なんて笑い話にならねぇ!!
こんな事ならいっそ死んだ方がマシ…!!
そんなことを考えながら一人廊下を歩いていると
何かにぶつかった。
「いって…」
すぐさまぶつかったと思われるものを見ると
「あ!ごめんね!!赤の上靴…もしかして
一年生?」
「そうだけど…」
「あっ!!」
その女の子が、突然大きな声を発した。
「な、何…」
「髪!!すごいね!!うちの学校じゃ珍しいんだよ!!かっこいいなー!」
ニコッとその子は笑って見せた。
その瞬間、俺の胸には何かが射抜かれた感じがした。
「あーっと…友達が呼んでるや…またね
!」
その子は走って友達のところに行ってしまった。
でも……
「初めてだな」
俺はしばらく彼女が走って行った方向を見つめていた…。