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再会

乙葉姫花おとはひめか…19歳。魔法省戦闘部一般隊第1部隊所属。今年のJ昇格者(昇格試験免除)現階級10。


小川梨乃おがわりの…19歳。姫花の同僚。現階級8。


睦月正二むつきしょうじ…28歳。姫花と梨乃の現上司。戦闘部・第一部長。現階級K。


宇佐美裕輔うさみゆうすけ…23歳。魔法省情報部。「Utopia」でバーテンダーをやって情報収集をしている。現階級J。


西園寺レン(さいおんじれん)…19歳。J昇格者の一人。魔法省戦闘部一般隊第7部隊。現階級10。


戸羽修とばおさむ…28歳。魔法省戦闘部特別攻防隊所属。現階級K。


桜庭レイカ(さくらばれいか)…26歳。魔法省戦闘部特別攻防隊所属。現階級Q。


東雲ソラ(しののめそら)…16歳。仮J。姫花とはただならぬ関係?



 テレポート魔法で寮の自室から本庁舎の前まで移動した姫花は後ろから怒鳴られた。

「乙葉!?あなた、何やっているの!?」

怒鳴ったのは、新上司、鉄の女・Qの桜庭レイカだった。姫花はビクッと驚き後ろを恐る恐る見た。冷たい目をしているレイカがいた。


「通勤時にテレポート魔法を使うのは、禁止のはずよ。理由は分からないわけないわよね?」

「・・はい。重々承知しております。申し訳ありません」

 テレポート魔法は、文字通り瞬間移動の魔法で、大量の魔力を消費するため緊急時以外は使用禁止だった。しかし、規格外の魔力の持ち主である姫花は一度のテレポート魔法で、ばてるほど弱くはなく一般隊では注意する者もいなかったので毎回この魔法を使用して通勤していた。今日もばれなければ良いかというノリで使ったのだが非常に良いタイミングでレイカに見つかってしまった。そして約20分新しい職場でレイカに説教をされた。

「おーい、朝礼始めるぞー」

長い説教の途中で戸羽が5つの机が並ばれてある戸羽班専用の部屋に入って説教をしているレイカ、されている姫花、それを横目に朝ごはんのパンを食べているレンに声をかけた。

「もうやらないこと」とレイカは念を押して席に着いた。姫花も「はい」と返事をしてレンの隣に着席した。


「朝礼は、普段は一日の予定の確認なんだが、今日はとりあえず自己紹介と今後の方針について話すな。」

戸羽は三人に淡々と話し始めた。

「俺は、戸羽 修。一応、この班のリーダーだ。別にこの班の責任者がいるが、今日は来れないらしいからまた今度紹介する。よろしくな。はい、次、レイカ」

話を振られたレイカは、一言だけ言った。

「桜庭レイカです。よろしくね」

レンは、「じゃあ先に」と姫花に言って自己紹介を始めた。

「西園寺レンです。今日から直属の部下としてよろしくお願いします」

レンが言い終わると姫花は、軽く会釈をしてから自己紹介をした。

「乙葉 姫花です。呼び方は、姫花でいいです。よろしくです」

姫花が言い終わると戸羽は「うん」と頷き2枚の紙を出した。

「これは、情報部からもらったお前らの調査書だ。レンは問題ないな。品行方正、魔力も攻撃魔法、防御魔法バランスが取れてる。・・・。それに比べて姫花、なんだこれは!マジックバイクを暴走させて、乗車禁止になって、仕事では無駄に破壊する!しかも規格外の魔力を持って、攻撃魔法が測定不可能なくらい強力なのに、なんで防御魔法はJの基準ぎりぎりなんだよ!」

戸羽は、レンには冷静に姫花にはキレ気味で言った。

姫花の調査書を見て唖然としているレンとレイカをよそに姫花は、動じずに言い返した。

「戸羽さん、私、攻撃は最大の防御だと思います」

まっすぐ戸羽を見据えて言う姫花の頭をパンと軽くファイルで叩き、戸羽は言った。

「屁理屈いうな!」

「はい」

姫花は、しゅんとなった。

 ゴホンとわざとらしく咳を立て戸羽は話を変えた。

「特別攻防部隊は、一般隊部隊が手におえないレベルの魔物や魔法を使った事件を退治、解決する。仕事の担当は、全6班に順番に振り分けられる。だから、そういう仕事がないときは始末書の整理、訓練、一般隊の訓練の指導を主に行う。なんにもねぇー時は埋もれた事件掘り起こせ」

戸羽が説明し終えとレンが言った。

「あんまりやることは、一般隊と変わらないんですね」

「えぇ。でも仕事の量、レベルは桁違いよ。気を引き締めてね」

戸羽の代わりにレイカが答えた。

「で、今日は、なにやるんですか?」

姫花は聞くと戸羽は、意地悪く笑った。

「残念ながら、今日は事件もレベルC以上の魔物出没もない。さらに一般隊の訓練指導も担当じゃない。俺は、事件を掘りおこすために情報を集める。レイカとレンは訓練を。あぁ、万が一に備えて全体力は使い果たさないようにな」

「レンとレイカさんだけですか?私は?」

姫花が不思議そうに聞くと戸羽はさらに悪魔の微笑みをうかべた。

「姫花は、一般隊でためた始末書と今日の通勤についての始末書を書きなさい」

姫花は、げぇっと言って嫌そうな顔をした。

「じゃぁ、」と戸羽が言いかけると姫花は挙手をした。

「なんだ?ちなみに締め切りは今日中だぞ」

「う・・・。いや、図書室で書いてもいいですか?」

戸羽は一瞬疑うような顔したが、許可を出して改めて言った。

「じゃぁ、各自、訓練と始末書に励んでくれ。なんかあったらすぐ呼べ」

戸羽が言い終え、「はい」と返事をするとレンとレイカはトレーニングルームへ、姫花は図書室へと向かった。

 


 姫花は、始末書を3枚書いたところで席を立ちある本を探した。“魔法省創設とその歴史”という本を見つけると手に取りその場で立って読み始めた。さらに目次から“サタン”をみつけるとそのページを開いた。本には、こう書かれていた。

―サタン、国を滅ぼす悪魔。容姿は人型。サタンは、主にレッドヴァンパイアを従わせていたことから、レッドヴァンパイアの一種だと推測される。人を殺めることを目的とした呪われた魔法を誕生させ、それを駆使し、魔界を破滅へと追いやろうと試みた。サタンを倒すために魔法省は創設された。魔法省の特別攻防部隊・責任者、乙葉光哉によって封印された。

(レッドヴァンパイア・・・。気のせいかな。)

 姫花は、一般隊にいた時からレッドヴァンパイアの襲撃が多くなったと感じていた。さらに昇格式のこともあり、もしかしたらサタンと関係あるのかもしれないと考え、図書室に来て調べようと思ったがサタンについてはどれも同じようなことしか書かれていなかったため、姫花はため息をついて、始末書を書くことを決意した。


 レンとレイカはトレーニングルームで30分1セットの対戦式の訓練をしていた。レイカの得意な魔法は攻撃魔法でレンはどちらもバランスが取れているが防御魔法の方が得意なため、守りに徹底してしまっていた。3セット目で休憩をとるとレイカがレンにアドバイスをした。

「腕を上げたわね、レン。でも守りに入りすぎよ。もうちょっと攻撃できるように隙を突いたりしなきゃ。」

「ですよね。もっとスピードつけて防御魔法を使わなくてもよけられるようにします」

レンは、レイカの助言を真摯に受けとめて、トイレに行った。レイカはスポーツドリンクを飲み休憩していると、ガラス張りのトレーニングルームに長身だがまだ幼さの残った顔の少年がいた。移民が多く、茶髪や金髪、茶色の瞳、青の瞳が多い、ミューア王国では珍しい黒い瞳、黒い髪が印象的だった。レイカが少年に気が付いて近づくと、少年はお辞儀をした。

「なにかしら?」

レイカが用件を聞くと少年は話し始めた。

「初めまして、プラン部の東雲ソラです。訓練中にすいません、乙葉姫花はいますか?」

「姫花?ここには、いないわ。プラン部の人が何か用?」

プラン部は、今年度からできた部署で、戦闘部の任務を企画し、任務遂行のためアウトラインを作成し、任務に同行して監視するのが主な仕事である。もともとは、いくつかの部署がこれらの仕事を分担していたが、作業の連携が複雑なため、一つにまとめることになった。

 レイカの問いにソラは、困ったような顔をして答えた。

「いやぁ、仕事の話ではなくて・・・」

「そうなの・・って、あなた!なんで本庁にいるの」

レイカはソラの襟元の赤いバッチを見て驚きながら聞いた。

「あぁ、ちょっと待ってください・・・」

赤い紋章のバッチは、5~10の位の者を示すもののため、J以上しか入れない本庁にいることにレイカは驚いたのだ。しかし、ソラは、冷静に、思い出したようにIDを取り出してレイカに提示した。そこには“J(仮)”と書かれていた。提示しながらソラは説明した。

「ご存じないですか?実は、僕、片平氏の代わりにJに昇格したんですが・・年齢がまだ18で・・。ただでさえ、レン先輩と姫ちゃんが19歳で最年少だったため騒がれたのにこれ以上若くして騒がせるのはどうかとなったので、とりあえずJとしての待遇は受けられるのですが、仮ということで来年度から正式に昇格することになったんです」

 レイカは、「気分はよくないでしょうけど、一応確認していいかしら?」と聞くと、ソラは「構いません」と言ったのでレイカは戸羽にテレパシーで連絡を取った。戸羽は、事実だといったのでレイカは、申し訳なさそうにソラに謝った。

「ごめんなさい。疑っちゃって・・・」

「いいえ。大丈夫です。ところで・・・」

ソラが姫花の居場所を聞こうとすると懐かしい大きな声で名前を呼ばれた。

「あ!お前!ソラ!」

「レン先輩!!お久しぶりです。」

「あら、知り合い?」

レイカがレンとソラを見比べながら尋ねるとレンが説明した。

「そうなんですよ、アメリア国に留学していた時の後輩で、いつ帰国したのかは知らなかったけど。」

「実は、先週なんです。帰国したの」

「え?それで仮にJ?」

あまりに早すぎる出世にレイカがさらに驚く。

「いや、アメリアの魔法省支局にいて・・・」

 


 しばらく三人で話すと、レイカが姫花のところに昼食の誘いついでによろうと提案した。 

 レンとレイカが道中、姫花への用について尋ねると、「挨拶です。」と当たり前のように答えたので、二人は関係が気になった。そしてレンが恐る恐る尋ねた。

「なぁ、お前らの関係って?」

「え?義・・・あ!!姫ちゃん!!!」

ソラは言いかけて、前方からくる姫花に気づき駆け出した。

「ソラくん・・!」

姫花もソラの存在に驚きながらも嬉しそうに駆け寄った。そして二人は抱き合った。まさに恋人のように。レンとレイカは呆然とした。

(あの姫花の彼氏!?ありえねー)

レンとレイカは同時に頭にこのセリフが浮かんだ。

呆然としている二人に、思い出したようにソラは、抱き合うのをやめ、振り向いて言った。

「義理姉弟なんです。僕たち。」

笑顔であっさりと発せられた事実にレンとレイカは大声で叫んだ。

「「え~~~~~~~~!!」」

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