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波乱の始まり

 乙葉姫花、19歳。自他ともに認める可愛らしい容姿と強い魔力の持ち主。そのせいで、同性からは、妬まれ、一部の異性からは、敵視されている。本人は、あまり気にしていないが。そんな彼女が勤める魔法省では、昇格試験の合格発表で大盛り上がりだった。


「姫花!!!大変よ!!!」

叫びながら走ってくる、ショートヘアの同年代の女子をちらっと見て姫花はため息をついた。

「なによ、梨乃。受かったの?」

「相変らず冷たいわね!あぁ、うん受かったわ。じゃなくって!!大変なの!!」

慌ただしく話す梨乃をよそに姫花は、紅茶を飲み始めた。

「ちょっと!紅茶なんて飲んでる場合じゃないのよ」

「だから、なに?」

「いいから来て!!あんたに関することよっ!」

梨乃は姫花を無理やり立たせ、引きずりながら歩き出した。


 しばらく歩くと人だかりができているホールにたどり着いた。

「私、昇格試験受けてないんですけど。なにが関係あるのよ」

無理やり連れられてきたことにいらいらしながら尋ねた。それと同時に一斉に人だかりが姫花に注目し騒ぎ始めた。

「・・・」

姫花は、無言で貼り出された昇格試験の合格者の名前をみると、顔をしかめた。

「ね!大変でしょ!姫花ったら昇格試験免除でJになれたのよ!!」

無言でうつむいてる姫花の隣ではしゃぐ梨乃。

「・・・・」

無言をつらぬきながらしかめっ面を崩さない姫花。そんな彼女に対して梨乃はさらに力説した。

「ちょっと!なによ、その顔!Jっつたら、本庁舎にも入れるし何より給料も待遇も格段と上がっちゃうのよ!!」

梨乃の力説が終わった瞬間、姫花は舌打ちして、ありえないとつぶやいて去って行った。そんな後姿を梨乃は目をぱちくりさせながら見つめた。そして、慌てて姫花を追った。


「どこいくの!?」

無言に痺れを切らして梨乃が尋ねると、姫花は「人事部」と一言だけ話した。


人事部にたどり着くと同時に姫花は、受付の女性に話し始めた。

「№199xxx、乙葉姫花です。今回の人事、納得できません。私は、昇格試験を受けてないのですが」

「申し訳ありません。その人事につきましては異議は認められません」

姫花がイラつきながら訴えると受付の女性は笑みを絶やさずズバリと答えた。

「・・・。」

姫花は、一睨みして、笑顔を崩さない受付嬢にため息をつきあっさりとあきらめて人事部をあとにした。


「つ、次は、どこに行くの?」

梨乃が聞くと「部長のとこ」と嫌そうに答えた。


部長、つまり姫花と梨乃の現上司・睦月正二に会うとさっそく姫花は、交渉を始めた。

「睦月さん、なんですかあの昇格。出世したくなきゃ僕の部下としておいてやるって言ってたじゃないですか!」

常に穏やかな表情をしている睦月は苦笑いをしながら答えた。

「言ったけど、僕より偉い人の命令だからね。僕も残念だよ」

「なにが、僕も残念だよですか。ほんとにそう思うなら何とかしてくださいよ」

「ハハハ。できないよ」

適当な返答に再び怒りをこめて姫花が話そうとしたとき、睦月は、目で黙るように命令し話を続けた。

「大丈夫。君は、ちょっと人から僻まれたり、敵視されたりして、人に対して淡泊になっちゃって冷たい印象を与えているけど、本当は人に優しくて、負けず嫌いで子供っぽい可愛い子だってちゃんと僕は、わかってるよ。それに案外上のほうが君を受け入れてくれる人が多い気がするんだ」

最後に優しい笑顔を姫花にむけた。

姫花はしゅんとして黙って仕事場にもどって言った。


「睦月さん、姫花は、教えてくれないの。なんで出世したくないのか」

残された梨乃は、睦月にぽつりと言った。

睦月は、梨乃に微笑みながら言った。

「教えないっていうか、教えられないんじゃないかな。なんでか自分でも分からなくて」



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