8話 魔道具ストーカー
「改めまして。僕はハル・ドーン。魔術大国バロックからこのダンジョンに調査員として派遣されたバロック魔術学園の魔道具科の教師です」
テーブルに着くと男はハル・ドーンと名乗った。
白髪短髪、白いローブ、白いブーツ。
白枠の片眼鏡。右手の指輪まで全てが白かった。
(目がチカチカする)とワタルは思った。
シオンはやってらんねぇ!と先に寝てしまった。
ワタルはユカリを寝かしつけた後、ハルに紅茶を出して自分も席に着いた。
「学校の先生が何を聞きたいんですか?」
「この魔道具の事です!」
ハルは両手を広げて天井を仰いだ。
「貴方達の活躍、見させて頂きました!人形達の魔法の威力はSランクを超えています。あの空飛ぶ馬なし馬車に、シオンさんのメガネと、あの黒い小さな板は何ですか?地図を見ていた様ですが。そしてこの家も魔道具ですよね。魔物対策にバリア、耐熱魔法、耐久魔法、劣化魔法、それに・・・」
男は一人で喋り続けている。
「僕に魔道具を見せてくれませんか?!」
机に両手を付き迫るハル。
「もう寝ます。あなたのお部屋は2階です」
「待って少しだけ!」
ワタルは客室を指差し、自分の部屋に入ってしまう。
朝になり、朝食を終え、出発の準備をする。
ワタルとシオンとユカリの三人は、付いて行くと聞かないハルをオープンカーで振り切り、階層ボス討伐の前に人喰い箱を漁り回っていた。
「オラァァ!」
シオンは人喰い箱の死角に潜り込み、剣を大きく振りかぶって垂直に降ろした。
バオオン!!
人喰い箱は泡となって消え、魔力強化の小瓶が残された。
アプリで買ったミスリル剣の切れ味は良かった。
シオンは剣士人形に稽古を付けてもらい、Cランクの魔物なら自分で倒せる様になっていた。
今度、昇級試験を受けて合格すれば、晴れてCランク冒険者になれる。
「ところでよぉ・・・」
「なんでアンタがそこにいんだあ?!」
ワタルとユカリの後ろで拍手をしているハルに剣を向けるシオン。
「まさかあの黒い小さな板に何をしたのか分かりませんが、空中から突然飲食物などか現れたのには驚きました」
そう言ってワタルにしつこく頼んで買って貰ったレモンティーを口にする。
「ふはあ、さあこれで人喰い箱の掃討は終わりましたね。階層ボスを倒しに行きましょう!」
おー!と右腕を上げるハル。
「「はあ〜・・・」」
「だから言っただろーが!面倒くせぇから関わるなってよ!!」
地団駄を踏むシオン。
「困っている人を放っとく訳にいかないし・・・」
「どこが困ってんだよコイツの!!どうすんだよ、付いてくんぞコイツ!」
「いいよもう。いっしょにいってたたかってもらおうよこのおじさん」
「僕は戦わないよ?魔道具人形の活躍を見せて貰いたいからね!」
そう言ってハルは懐からペンとノートを取り出した。
三人は溜息を付きオープンカーに乗り込む。
「待ってくださいよ〜!」
「アンタが乗り込む隙間はねぇんだよ!」
シオンはそう言って一緒に乗り込もうとするハルを振り切る様にアクセルを踏み込む。
階層ボスであるミスリルゴーレムをアッサリ倒して先に進む。
昼食を忘れて夢中で階層を進み、ハルに「頑張り過ぎです」と止められた頃には99階層。ラスボス前の部屋まで来ていた。
「確かに、ちょっと、頑張り過ぎたかもな」
地面に座り込むシオン。
「おにいちゃん、おなかすいた」
「うん。今日はこれで終わりにしようか」
最下層への転送装置の間に、ドールハウスをたてるワタル。
「ご飯作るから二人とも先にお風呂入ってきなよ」
「うす」
「は〜い」
疲れた体にハルのテンションはウザかった。
冷蔵庫を見ては氷魔法が、レンジを見れば熱魔法が、コンロを見れば火魔法、水道のレバーを上げれば水魔法が、と朝と同じ様に叫び、触りまくり、ワタルに構造を聞きまくった。
「これらの魔道具はどういう構造で作られているのでしょう?どこで手に入れたんですか?作者は?いくらくらいしました?」
「拾ったので分かりません。家に最初から付いてました。どこで拾ったかは覚えてません」
ワタルはハルを家に入れたのは失敗だったと思った。
ワタルはオムライス、シオンはカレー、ユカリはタラコパスタを食べた後、余程疲れたのか八時には寝てしまった。
寝静まったリビングで、ハルは昼間に書き留めたノートを広げて読み返していた。
(彼らの持つ魔道具は、バロックの技術を持ってしても製作は不可能だ。似たような物なら作れるかもだけど)
(拾ったなんて嘘だろうし、どこで、どうやって手に入れたんだ?)
(知りたい・・・)
「と言う訳で、僕も今日からこの家に住む事にしました!」
「・・・・・」
「パチパチ〜!パチパチ〜!」
突然の宣言に唖然とする三人をよそに自分で自分に拍手するハル。
「冗談じゃねぇ!勝手に決めんな!」
「あの、最初に朝になったら出て行ってくださいとお願いしましたよね?」
「なんでそうなるんですか?」
フォークからウインナーが落ちた事にも気づかず呆れながら聞くワタル。
ユカリは白目を向いて寝ている。
「まあ、なんと言われようと、あなた達がどこへ行こうとぼくはどこでも勝手に付いて行きますよ!」
ハルは目玉焼きが乗った食パンを頬張りながら宣言した。
「今すぐ出てけよ。アンタは必要ない!」
「嫌で〜す」
「ふん!」
ユカリは自分の力で大きなドラゴンを倒し、剣を掲げる夢を見ていた。
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