5話 戻らない調査団
冒険者ギルドのギルド長室に、ワタル達三人とギルド長と副ギルド長の五人が向かい合って座っていた。
「お前達、やってくれたな」
世界に唯一のダンジョンであった荒野のダンジョン。
倒しても復活する魔物や宝飾品を狙って冒険者(観光客)が街を訪れ、それを観光ギルド(役所)で受け入れる。塔に登りアイテムを手に入れ冒険者ギルド(アトラクション管理所)に持ち込み換金。商人ギルド(貿易商)が世界に流す。
それが街の唯一の収入源だった。
街の唯一の観光資源を失ったギルド長が腕を組み、元凶であるワタル達を難しい顔をして睨んでいる。
「いいから早く換金してくれよ。ダンジョンで取れた全ての宝だよ。武器に防具、宝石に宝飾品、魔物のドロップアイテム。肉、革、その他色々ある」
「お前達がやった事は!」
「あのアトラクションは攻略までがセットだろうが。冒険者と言う観光客は"攻略"を目指してんだよ。街の都合なんざ関係ねぇ。それにダンジョンが消えたのは俺達の責任じゃねえだろ。まさかアンタらは最初からダンジョンは攻略したら"消えてしまう"事を知っていて攻略されないように制限してたのか?あ?」
「なっ!なんだと!?そんな事してるわけないだろう!」
「なら早く換金してくれよ。俺達は何も悪くねぇんだからさ」
シオンの反論に何も言い返せないギルド長。
「はぁ・・・。いつかはとは思ったが、昨日の今日とはな・・・」
副ギルド長が溜息を漏らす。
「分かった。そうだな。お前達は悪くない。冒険者として全うしただけだ」
「クソッ!これでこの街は終わりだ!」
膝を叩くギルド長。
「まだおわりじゃないってセレナいってたってなんでおしえてあげないの?」
コッソリシオンに耳打ちするユカリ。
「いいんだよ。新しいのが出たらその近くにまた新しい街を作るんだからよ。俺達が気にする事じゃない」
ワタルは何も言わなかった。
「これだけの量だ。換金には一週間ぐらい掛かるぞ」
副ギルド長が答える。
「分かった。一週間後にまた来る」
そう言うとシオンは席を立った。
ワタル達も黙って後に続いた。
それから数日もせず、世界唯一のダンジョン攻略と消失の報は世界中を駆け巡った。
そして第二のダンジョンはどこに現れるのか、そもそも現れるのか、世界中を混乱させた。
荒野のダンジョン攻略から二ヶ月後、観光資源を無くした街からは冒険者はいなくなり、移住者は更に移住先を求めて他国に流出。街は荒れ果て、訪れる者も無く、各ギルドも閉鎖され、移動ができない病人と金の無い貧乏人だけが残っており、国に戻ることも出来ず、戻ったとしても同じ状況であるため、もはやアレス公国は死の島と化していた。
ワタル達は今、西側にある海岸沿いの浜辺に居を移していた。
最近、暑さが頂点に達し、ユカリが海で泳ぎたいと騒いだからだ。
そして数日後、その日は来た。
まだ日が昇らない早朝、ワタル達は突然の縦揺れにベッドから投げ出された。慌てて外に出て海を見てみると、すぐ目の前の海面に新しいダンジョンが姿を現していた。
「面倒臭ぇ事になるぞ」
シオンの言葉通り、公国と街の崩壊を理由に周辺国がそれぞれ所有権を主張し始めた。
公国を抜かした七カ国会議が開かれたが、決着はつかなかった。
会議が開かれていたなんて知らされていなかった公国はこれを拒否。人手が無かったのと国の掃除と称して貧民街の住人と病人達で結成された調査団を海面ダンジョンに派遣した。
しかし、調査団は帰って来なかった。
次は街に残った住人達を派遣したがやはり戻って来なかった。
これ以上の人口流出は国として成り立たなくなるため、公国はダンジョンの所有を断念した。
様子見していた各国も高ランク調査団を結成し、ダンジョンに派遣したが、やはり連絡が途絶えた。
どの国も手が出せずに困っていたころ、ワタル達はやっと落ち着いたとダンジョン攻略の準備を始めた。
「ギャーギャー騒いでいた奴らの動きも落ち着いたし、調査団が帰らないダンジョンのなぞも気になるし、俺達もダンジョンに行って見ようぜ」
シオンは眼鏡を掛けながらワタル達に準備を促す。
ワタルのドールハウスをバッグにしまい、ユカリのリュックから黄色いオープンカーを取り出す。
運転席にワタル、助手席にユカリ、後部座席左にシオン、右に人形達が座っている。
「みんなシートベルト付けたね?」
「つけた!」
「なぁ、これ陸用の馬なし車だろ?どうやって海を渡るんだ?」
ワタルが黄色いボタンを押すと、両サイドから羽根が現れ、下に向いたエンジンから風が吹き出して浮上する。
「な、な、浮いたぞ!これ!」
シオンがドアにしがみついて叫ぶ。
「・・・・」
「ギャッ!」
西へ旋回して真っ直ぐ海上ダンジョンへと物凄いスピードで飛び去っていった。
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