38話 ドワーフの街 レヴァンギル
「おにいちゃんスゴイ!へこんだユカリのカブトいっしゅんでなおった!」
「ふふ、よかったね」
「うん!ピカピカ!」
「修理ありがとうございました」
「おう!大事にしろよ!」
ドワーフの修理人は手を振って見送ってくれた。
ワタル達は今、ドワーフの街に来ている。
「信じられないよね。この街や住人までダンジョンが生み出した幻なんてさ」
ワタルはユカリのピカピカになった兜を眺めて感動したように目を輝かせて言った。
「外に出たら元通り凹んでたりしてな。その兜」
シオンがニヤッと口角上げて皮肉った。
「ハルが言ってたじゃん。この街はダンジョンが作り出した幻だけど、実在している物だって。だから触れるし熱も感じるし、味もあるって」
「確かに幻にしちゃ腹は膨れたな」
ドワーフの国からはダンジョン出現の情報は流れて来なかった。
たまたまマップアプリで地図を見ていた時に、ドワーフ国の前の盆地にダンジョンの文字があったから来てみたら、そこはダンジョンではなく大きな街だったのだ。
ワタル達はダンジョンのクリア条件を探すために街を歩いて回る事にした。
最初の内はあーだこーだと考えていたが、街並みに圧倒され
て気づいたら各々が観光を楽しんでいた。
「だから!ここはレヴァンギル、ドワーフ国の街だって言ってるだろ!」
「だぁからぁ!レヴァンギルなんて街はねぇんだって言ってるだろ!誰の許しで勝手に街なんて作りやがったんだ!」
「なぁにぃ?!千年の歴史ある街だぞ!ふざけた事言ってっとぶん殴るぞ!」
ふと前に視線をやると、職人のドワーフと数人のドワーフ兵が言い争っていた。
「まぁ、ある日突然国の目の前に街が出来てたらどうなってんだってなるよな」
「まさかそれがダンジョンだなんて思わないよね」
ワタル達が彼等の横を過ぎようとした時、一人の兵士が空を指さし叫んだ。
「隊長!魔物です!魔物が襲撃してきました!」
「何!?」
隊長が顔を向けると、そこには武器を手に持ち武装した大勢の魔物達がこちらに向かって歩いて来る。
「お前達構えろ!」
隊長の指示に従い、兵士達は各々武器を構える。
「何する気だアンタ!?」
「市民は下がってろ!」
肩を掴む職人の手を乱暴に振り払う。
「行けぇー!!魔物を街に入れるな!」
「おおおお!!」
兵士達は一斉に魔物達に襲いかかる。
「やめろぉ!!」
職人の叫びは届かず、兵士達は魔物に斬りかった。
「ギャッ!」
「な、なんだよ。なんだよ!」
「やめてくれ!俺達は何も!」
隊長がポケットから小瓶を取り出し、中の液体を一飲みすると、呪文を唱えた。
「轟炎!」
魔物達の足元が一瞬光ったと思うと激しい炎が魔物達を包みこんだ。
「ギャッアアア!」
「あつ、イイイ!!」
魔物達は恐ろしい断末魔を上げ、跡形も無く消え去った。
「やりましたね隊長!魔物共を一掃なんてさすがです!」
「ふん!それほどでもな」
ドガアアア!バキッバキギッ
骨を砕く鈍い音が響いた。
先程の職人が大金槌を手に、憤怒の形相で震えて立っていた。
吹き飛ばされた隊長は口から血を吐き白目を向いて倒れている。
「な、何をするんだお前!」
兵士が職人を取り囲む。
「奴らはただの客だ!魔物でもただの客だったんだ!」
「何を言う!魔物は我等の生活を脅かす敵だ!討伐は当然の事だ!」
ある兵士がそう叫びながら職人に飛びかかる。
「ふん!」
職人が大金槌を横一文に振り回し、兵士は剣を取り落とす。
ハッときづくと、大勢の職人達が怒りの表情で金槌を持ち、兵士達を取り囲んでいた。
一人が叫ぶ。
「アイツラは確かに魔物だ!だが今まで一度だってこの街を襲った事なんてねぇ!!」
別の職人も叫ぶ。
「今この街を脅かしてるのはお前ら兵士じゃねえか!お前らの理屈なら、客や友人を殺された俺達はお前らを討伐しても許されるよな!」
「な、何を言ってるんだ!私達はこの街を守る為に・・・・」
「守ったのはテメぇの身だろうが!」
隊長の行動を止めようとした職人が大金槌を振り上げる。
グァシャァ!
「ギアアアア!」
兵士の左肩を大金槌が砕く。
その光景を呆然と見ていたワタルはハッとして言った。
「た、助けなきゃ!」
「何で俺達が助けなきゃなんねぇんだよ。自業自得じゃねぇか」
「何でってそれは!」
「・・・・」
理由が思いつかないワタルは困った顔で兵士達の末路を見た。
「気にすんな。行こうぜ」
「ハルもソーマも電話出ねぇし、どっかで夢中になってんだろ。俺達も他の店回ろうぜ」
「・・・・うん」
(このダンジョンのクリア条件て何なんだろう・・・・)
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