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37話 要らない記憶

『代価を示せ

 攻略者の記憶 か 魔法人形の消去』


 ドアの向こうの白い空間には、青い宝箱と赤い宝箱がある。


 上空に文字が浮かんでいた。


「なんてかいてある?」


「俺の記憶かその人形達か、どちらかを差し出せと」


「ダメ!マーくん達はユカリのオトモダチだもん。あげないよ!」


「・・・・ああ」


「わたしのきおくあげる!いらないおもいでいっぱいある!だからカギをちょうだい」


「要らない思い出・・・・か」


「そうだ、あの頃の記憶」


「アレは、今の俺には、要らない物だ」


『攻略者の記憶を消去』


 ユカリは聖女人形を抱きしめギュッと目を瞑る。


 少しずつ目が開かれポカンとした表情になり、次第に涙が溜まって行く。


「ママ、パパ、もういない・・・・」


 ユカリは静かに涙を流した。


 ヨルの頬にも涙が一筋。


 何かとても大切な物を失った気がしたが、それが何かは分からなかった。





 瞬きした一瞬に二人の目の前には心配した表情のワタル達がいた。


「おにいちゃん・・・・」


 ユカリはワタルの姿をみつけると人形達を忘れて駆け寄った。


 ワタルの腰に抱きつくとわあわあ泣いた。


 ワタル、シオン、ソーマはユカリを慰めるのに必死だ。


 ヨルは地面に放られた三体の人形達を拾いあげる。


「兄上!」

「ヨル兄さん」


 ソル、ハルが駆け寄り何があったのかを問いただす。


「説明は後だ。今は帰るぞ」


 ヨルはワタルの前に立ち、人形を差し出す。


「あ、ありがとうございます」


「アンタこいつに何かしたのか!」


 シオンがヨルに吠える。


「要らない記憶を捨てただけだ」


「ハル、転移装置を」


 ヨルはハルに命じると、ソルと共に城へと戻った。


「ハル、僕達は家に帰る」


「うん、僕は兄さんに話を聞いてから帰るよ」


 ワタルはハルからドアノブを受け取ると目の前の空間に差し、ドアを開けて帰宅した。 





 その日の夜、ワタル達は城から帰宅したハルからダンジョン内での出来事の話を聞いた。


「当時は分からなかった事が今になって分かるようになったんだね。要らない記憶を消したと同時に現実を思い出して、耐えられなかったんだろうね」


 目を真っ赤に腫らして俯いて椅子に座るユカリにホットミルクを差し出すハル。


「僕達の両親が死んだのはユカリが四歳の時、その、ここで言う馬車に轢かれて死んだんだ」


「それからは叔父さんに引き取られて、そこでも色々あったから今まで忘れられていたんだと思う」


 ワタルは溢れる涙を拭いながら語る。


「それが無くなって、なんかこう。色々な物が溢れ出したんだと思う」


「でも、もう大丈夫。ちゃんと話し合って決着つけたから」


「みんなに心配かけてごめん」


「ごべん"」


 ユカリが小さく呟く。


「湿ってんなぁ!こう言うときは飲んで食って寝るのが一番だぜ!」


「みんなスマホ出せ!好きなもんを好きなだけ買い占めろ!」


 シオンの前に菓子パンやジュースが大量に積まれて行く。


 ユカリがメロンパンに齧りつき、りんごジュースを一気に啜る。


「うまい!」


 と言って他の物にも手を付ける。


「僕もた〜べよ!」


 ハルが塩クロワッサンに齧りつく。


「僕これ好きなんだ〜。コーヒーに合う」


「じゃあ、僕はコレを」


 ソーマはカレーパンを手に取る。


「中の辛い餡が美味しいです」


 そう言って袋をあける。


 その日は遅くまで騒いで楽しんだ。


 残る鍵はあと三つ。




 


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