3話 鑑定人
の両親は、子どもを産んでは人身売買業者に売って金を稼いでいた。
もその予定だったが、生まれた瞬間、酔っ払った父親に、顔が気に入らないと火を着けられ焼かれた。
母親によりすぐに消されたが、売り物にならないとそこらに捨てられた所をホームレスの女に拾われ、二年前に女が病気で死ぬまで貧しいながらもそれなりに幸せを感じて生きては来なかった。
物心付く頃には爛れた顔の火傷を白い髪で隠し、手足の指や目も口も鼻も癒着していた為満足に食事もできず、息も出来ないため常に息苦しかったが、盗みで何とか生きて来た。
女は自分の世話の為に を拾っただけであり、当然愛など無い。
「どけよ、何突っ立てん・・・」
訓練場から出て来た武道着を着た犬型の獣人が を避けようとして止めた。
「げ!プロランじゃねえか!」
プロランは童話に出てくる爛れた顔のフードを被りランプを持って森を彷徨い、旅人の荷物を奪って行く化け物である。
「うぇ!触っちまった!」
ガッ!!
近くにあった箒の柄で の頭を殴り倒し、ツバを吐き捨て去っていった。
訓練場では、ワタルとユカリが大勢の冒険者に囲まれ照れくさそうにしている。
(俺は化け物で、アイツラは・・・)
「ゔ・・・う・・・」 は火傷のせいで唇が癒着し上手くしゃべれず、視界も狭かった。
自分とワタル達との差に絶望した。
その日の夜、ワタル達は宿を紹介してもらい、一緒になった冒険者に美味しいご飯を奢ってもらい、ちょっと硬いベッドで眠っていた。
深夜も深くなった頃、キィッとドアが開いた。
である。
はそっと中に入ると、音も立てずに中央の丸テーブルに近づくと、ワタルのボディバッグとユカリのリュックを掴んだ。
「誰?」
の手が止まる。
ワタルが布団から顔を出し、 を見ている。
「ヂッ!」
バッグを掴んだ瞬間、静かに雷撃が の体を貫いた。
出窓に座っていた魔術師人形が杖を に向けて振り抜いていた。
は床に倒れ、動かない。
ワタルは「ありがとう」と魔術師人形に礼を言うと少年の元に警戒しながら寄って見た。
少年は声をかけても揺すって見ても反応がない。
まさか死んでしまった?と思い顔に掛かっている髪を払うと、爛れた顔を見て、「大変だ、ケガさせちゃった!」と慌てて聖女人形に向かって
「セイちゃんお願い!あの子を助けて!」と願った。
聖女人形はニコッと笑い、スーッと少年の元に行くと、目を閉じて手を組み、祈り始めた。
少年の体は緑色の光に包まれ、傷が癒されて行く。
バッグからスマホを取り出すと、アプリ"小人の裁縫箱で"新しい服を買い、着替えさせた後にベッドに寝かせてやった。
少年は昼ごろになってやっと目を覚ました。
「わぁッ!」
ユカリが顔を覗き込んでいる事に驚き飛び起きる、
「おにいちゃん。このひとやっとおきたよ!」
ワタルは宿屋の娘に三人分の食事を運んでもらい、テーブルに並べている所だった。
「こんな化け物放っときゃいいのに!」
そう言って娘は乱暴にドアを閉めてさっさと出て行ってしまった。
「俺だって好きでやってる訳じゃねぇよ!」
自分で言って驚いた。
ハッキリとした言葉で叫んだ。
そう言えば、視界もハッキリしている。
顔を触ってみる。火傷の跡も引きつりも無い。目も口も鼻も、手足の指も開いている。
息も苦しく無い。
骨と皮だけだった体に肉が付いている。
服も汚れて穴が空いた麻袋じゃなく新しい。
国の聖女様に治療を頼めば大金が掛かる。
ダンジョン街の教会に行けば、汚物を見る目で「魂が汚れているから罰を受けているんだ」と合わせてすらもらえなかった。
「あんたないてるの?」
ユカリが少年の髪に触ろうとすると、バシン!
「触るな!」とユカリの手を振り払った。
ユカリはムッとして、
「あたしのセイちゃんがあんたおカオのケガをなおしたんだよ!ありがとうっていって」と少年の前に聖女人形を差し出した。
「はあ?!」
「とにかくこっちに来なよ。ご飯が冷めるよ」
ワタルが昼食に誘う。
三人はテーブルについた。ワタルとユカリは「いただきます」と言って食事を始めたが、少年はしばらく手を付けなかった。
「たべないの?」と言うユカリの言葉に、「食べるよ」と返す。
スプーンを手に取り、スープをすくって口に運ぶ。目で見て色を知り、鼻で香りを知り、舌で味を知り、手で形を知る。そんな当たり前の事を初めて体験した少年は止め処無く溢れて来る涙や嗚咽にも気づかず夢中でスープを飲み干した。
そんな少年の姿をワタルは少し悲しそうに、ユカリは懐かしそうに見ていた。
「あたしたちとおなじ!」
「あ"?」
「ごはんおいしいよね」
「あたしとおにいちゃんもね。このせかいきてごはんたべられておいしい!てなってないちゃったもん」
(ご飯がおいしい?歯が折れそうなほど硬いパンに味の無い芋がか?こいつらは恵まれてるんじゃなかったのか?)
「ユカリ、その話はしないって約束したでしょ」
「うそはダメっておにいちゃんいったよ?」
「ついていい嘘と悪い嘘があるんだよ。ユカリ分からないでしょ?約束ね?」
「う〜ん!!」ブスッとした仏頂面で硬いパンに齧りつく。
「キミも、ケガをさせちゃったのはごめん。でもセイちゃんに治してもらったから、許してね。僕達も荷物を盗ろうとした事許してあげるから」
「ご飯食べたら家まで送ってあげる。キミの家どこ?ある?」
「・・・ねぇよ。家なんてねぇよ。行く所もねぇ」
「あたしたちとおなじぢゃん!あたしたちもね、おうちなかったの!じしんでペシャンコになってね」
「ユカリ!ダメだって言ったよ!」
「お前らも俺と同じ、か」
「家が無いのにお前ら今どこに住んでんだ」
「こうやのおうち、めがみさまがおうちくれた」
「は?」
「はぁ~・・・、もういいよ。どうせ信じないだろうし」
諦めた様にウインナーを転がしているワタル。
「あたしたちね、このせかいにてんいしてね。おうちとセイちゃんたちと、けんこうでげんきでつよいからだのゆうしゃになったの!」
「ちょっと何言ってるか分かんねぇな」
本気で分からないといった顔をするが、髪で隠れていて分からない。
「あ〜・・・」
「僕達は異世界人て事。訳あって別の世界からこの世界に転移してきたんだ。その時に女神アローナ様が、ここで言う魔道具と、怪我もしないし病気もしない、どんな攻撃も跳ね返し、どんな状況でも生きて行ける健康で元気で強い体をくれたんだよ」
「チートじゃねぇかよ」
「ありがたいと思う」
「はっ、俺にもそんなチートがありゃ、どこにでも行けんのによ・・・」
パアアアア!!
少年の体が黄色く光りだす。
「ヴァアアア!!チートにしてあげたよ!!頑張って自由に生きてね!!」
泣きながら叫ぶ女の声が部屋中に響いた。
「な、なんだよ今の」
「めがみさまだよ。あんたもバッグつけてるよ」
「あ?!なんだこりゃ!」
「マジックバッグだね。僕の色違い。スマホと何かが入ってると思う。見てみれば?」
食べ終わったワタルが食器を片付けながら言う。
「・・・・」
いつの間にか付けている白いボディバッグの開け方が分からずもたつく少年を見て、ワタルがチャックを開けて見せる。
少年がチャックを開けるとスマホと眼鏡とサイフが入っていた。
ワタルとユカリがスマホと眼鏡、サイフについて説明する。
「別に目なんて悪くねぇしな。眼鏡なんていらねぇんだけど」
そう言いながら眼鏡を掛けて見る。
ワタルの胸の辺り、ユカリの頭上に四角い枠が現れ何か文章が書いてある。
ワタル・アマノ(10)男
ユカリ・アマノの兄
異世界人
魚が苦手
ユカリ・アマノ(5)女
ワタル・アマノの妹
異世界人
肉の脂部分が苦手
木の食器、木のテーブル、木の椅子
「「何で「しって「るんだ」の!?」」
ハモる兄妹。
(他人や物の情報が分かる魔道具って事か?!)
「こりゃ良いもん貰ったぜ」
「あー!なんかわるいことかんがえてるでしょ!おにいちゃんがわるいことにつかっちゃダメっていったよ!」
「使わねぇよ。俺もチートを手に入れたんだ。冒険者でもして生きていくさ」
「キミ、これからどうするんだ?旅にでも出るの?」
「まずは荒野の塔のダンジョン攻略を目指すかな。後の事はそれからだな」
バンを齧りながら明るい声で今後を語る 。
「あたしたちのいえにきてもいいよ」
「でもね、あたしたちのなかまになるのがじょうけんね」
ふん!と鼻を鳴らしながら左手で
髪をかき上げるユカリ。
「いいぜ、ただし俺がリーダーな」
皿を口につけ直にスープを飲みながら答える 。
「あたしがリーダーなの!」
テーブルに手を付き飛び跳ねながら抗議するユカリ。
「とりあえず、しばらくは宿屋生活かな。ダンジョン攻略なんて簡単じゃないだろうし。三人部屋に変えてもらわなきゃ」
「簡単だろ、あのSランク人形があればよ」
「そういえば、あんたおなまえは?」
カップの水を飲みながら横目で聞くユカリ。
「シオン・ジルでいいよ。プロランが人間だった時の名前だ」
こうして三人目、アレスのプロランこと、シオン・ジルが加わった。
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