23話 ルールはただ一つ
「私は、」
「お前の話は聞いていない」
魔術大国バロックの第二王子、ソルはソーマを一瞥する事なく切り捨てる。
「挨拶もロクにできねぇのかアンタは。どう言う教育受けて来たんだ」
フッと漏らしながらシオンが言い返す。
「なに?一般市民が僕に説教か。随分偉いんだなお前は」
ソルは見下すようにシオンを見上げる。
「アンタはアレか?アレスの王子の生まれ変わりか?」
「てめぇがこの世で一番偉いんだから、てめぇに気に入られる様に他の国の王子や民はてめぇにひれ伏せってか。あ?」
目だけを下に向け堂々と立つ姿は勇ましく、どちらが王子か分からない。
「いいんだシオン。この程度の扱いは慣れている」
右腕を上げて制止するソーマ。
「ふんっ!」
ソルは腕を組み、他所を向いて喋らなくなった。
ルナはテーブルに戻り、紅茶を飲み、無視を決め込んでいる。
「はぁ〜・・・。兄が失礼しました。甘やかされて育った為に世間を知らないのです」
ハルは膝をはたいて埃を払いながら立ち上がる。
「何だと!?悪魔と仲良くなんかできるか!」
「うっ?!」
ソルは背中越しにハルに睨み付けられ一歩下がる。
「改めて、私は魔術大国バロックの第三王子。ハル・ドーンと申します。お話はワタルくんから聞いています。これからよろしくお願いしますね」
ハルは微笑みながらソーマに右手を差し出す。
「わ、私は魔大国グランデスバル第一王子、ソーマ・グランチェストと申します。皆様のお役に立てる様に頑張りますのでよろしくお願いします!」
そう挨拶をして握手をかわすハルとソーマ。
「と、言うわけで、僕はバロックには帰らないよ。ヨル兄さん」
パン!と手を叩き、テーブルの男に向き直って宣言するハル。
「僕は魔王の復活に協力しますよ」
「本気で言っているのハル!?」
身を乗り出してハルを問いただすルナ。
「僕はねぇ。未来を見て生きて生きたい派なんだよ、ルナ姉さん」
「二百年前の事実は消えないけど、これから先の事はいくらでも修正できるんだよ」
「人間側にも魔大国側にも反省すべき点はある。そろそろ共に和解の道を探すべきだと思うけどね」
「僕はねぇ姉さん、兄さん。世界は平和な方がいいなぁ」
「そんな事言って、魔王が復讐と称して再び戦争を仕掛けないとは言えないだろ!」
ソルが叫ぶ。
「それは無いよ。魔王様には夢があるんだ。」
「世界中の誰もが、家族と一緒に世界旅行を楽しめる世界にしたい。そんな夢があるんです。また戦争を仕掛けるなんてあり得ません」
ワタルがユカリの手をギュッと握り、宣言する。
「お前の意見など!」
ドン!と机を叩き吠えるソル。
「ここは僕の家です!僕の島です!僕の国です!」
「僕はあなた達を招いた覚えはありません!」
「従えないのなら、どうぞご自分の国にお帰り下さい!」
「ちょっとあなた。私達を誰だと」
カチャリとカップを置き、ワタルを嫌悪の目で見るルナ。
「あなたが誰であろうと、招いてもいない客をもてなさなきゃいけない決まりなんてこの家にはありません。」
「ルールはただ一つ、この島では身分関係無く誰もが平等である事。これだけです!」
「僕達はあなた達の家来でも奴隷でもありません。これに従えないならどうぞご自分の国に帰って存分に王子様、王女様をやってください。以上です」
「「な、な、な」」
顔を赤くし、ワナワナと震えるソルとルナ。
突然のワタルの覚醒に目を見開くシオンとソーマ。
ソーマは、この優しい友人の為にも、生涯を掛けて夢を叶えようと誓った。
「確かに無礼であった。謝罪しよう」
今まで沈黙を貫いていた男が口を開く。
「ヨル兄様!私達は」
「恥を重ねるな」
「!!」
「はい・・・」
ルナは黙って席につく。
「私は魔術大国バロック第一王子、ヨル・ドーンと申します。以後お見知りおきを」
「コレは妹のルナ、その隣は弟のソル。ハルは知っていますね」
「私達は末弟のハルが無断でバロックの籍を抜け、アレスの住人となったと聞き、あわてて連れ戻しに来たのです。お騒がせして申し訳ございませんでした」
黒髪長身の男が低い声で説明をする。
「さっきは失礼な事を言ってすみませんでした。僕はワタル・アマノです。こちらは妹のユカリ。左にいるのがシオン・ジル、右がソーマ・グランチェストです。よろしくお願いします」
ワタルが頭を下げた後、三人も頭を下げる。
「ハル、今回は帰る。これ以上は迷惑だろうからな」
「はい、ですが何度来られとも僕の意見は変わりませんよ。僕は魔王解放に賛成です」
「・・・・」
男は何も言わずにハルの横を通り過ぎて行った。
「ハル、僕達は魔王解放には反対だ。何を考えているのか分かったもんじゃない!」
「それは向こうにとっても同じですよ」
ギッとソーマを睨み、バタバタとヨルの後を追いかけるソルとルナ。
ワタルは深く溜息をついた。
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