22話 え?ハルって
ワタルはボディバッグから三つの鍵を取り出した。
鍵は中に浮かび上がり、三つの錠を開けたあと錠ごと泡と消えた。
すぐさま玉座は王の私室として整えられ、王妃とソーマ、エミリアは歓声を上げ続ける国民達に魔王の無事と世界の現状、ワタル達の事、これからの魔王国の事を伝えた。
国民達は変わり果てた王妃を心配し、大きく育った王子と王女に安堵した。
そして、ワタル達人間が瘴気を祓い、魔王を救ったと言う事実に半信半疑で不安を口にしたが、ワタル達が姿を現すと静寂に包まれた。
「僕達は何の力もないただの一般の人間で、人間側と魔族側では互いに関わらないと言う約束があるそうですが、僕達はソーマ、エミリアと友達になりました。だから、あの、これから、僕は、家族で世界を旅行したい、と言うエミリアの夢。魔族と人間がともに手を取り、歩める世界にしたいと言うソーマの夢を、叶える手伝いをしたいと思います。それには、皆さんの協力も必要になると思います。そのときは、ソーマ達に力を貸してあげて下さい。よろしくお願いします!」
静寂からポツポツと拍手が上がり、最後には大歓声へと変わった。
その日の夜は魔王の私室で夕食をとり、ユカリはエミリアと一緒に寝る事になり、エミリアの寝室へ。
ワタルとシオンはソーマの部屋で話をしていた。
「僕もダンジョン攻略に協力させて下さい!」
「いらねぇよ別に。正直ユカリの人形が強すぎてやる事ねぇし」
シオンがソファーに寝そべりながら答える。
「それでも構いません。魔族の王子である僕が表に出れば、裏で動かざるを得なかった者達も動きやすくなると思うのです。見つかったら強制送還されるのがほとんどですが、中にはその場で殺される者達もいますから」
「僕と関わる事で人間達の意識を変える事ができるかもしれません」
ソーマは向いのソファーに浅く腰掛け、カップの紅茶を一気に飲み干して言った。
「僕は構わないけど本当にやる事ないし、わかってると思うけど人間と関わるのは辛い事が多いと思う。鍵集めは僕達に任せて貰ってもいいよ?」
「いいえ、これは僕の問題です。本当なら僕がやらなきゃいけない事なんです。我儘を言ってすみません」
「分かった。一緒に鍵を集めよう」
「はぁ〜。ハルだけでも面倒臭ぇのに、また増えんのかよ」
だるそうに起き上がり、一気に紅茶を飲み干すシオン。
「ありがとうございます!お役に立てる様に頑張ります!」
立ち上がって頭を下げるソーマ。
「エミリアまたねー。おでんわしようねぇ!」
「はい!ユカリさんもまた遊びにいらして下さい!」
「お兄様、お電話けださいね!」
翌日の昼過ぎ、ワタル達はソーマと共に魔大国を出発。
エミリア達にさよ〜なら〜と別れを告げ、ワタル達は家までの道を歩く。
「電話と言う魔道具の凄さは分かりますが、使い方がどうも分かりません」
「慣れると手放せなくなるぜ。元はワタル達専用道具だから、俺達が自分で魔道具を買おうと思ったら金は掛かるけどな」
不満そうに呟くシオン。
「ダンジョン攻略の時、ソーマにはマップを見て道案内と、何か危ないのがあったりいたりしたら教えて欲しいなぁ。ダンジョンて結構入り組んでいて迷う時があるからいつもこんがらがるんだよね」
「おなじところグルグルするのもワナもつかれるし、めんどくさい」
ふぁ〜あと欠伸をするユカリ。
「俺は情報、ワタルはサポート、ユカリは特攻、ハルは魔道具管理が仕事だからな」
自分に責任は無いと早足になるシオン。
「分かりました。索敵担当ですね。頑張ります!」
「クレヨンもユカリ達がイタズラしない様にハルに預かってもらわないとな」
「達って誰の事だよ!」
シオンが不機嫌になりながらドアを開ける。
「お帰り〜!そして助けて〜!」
ドワアアアッと雪崩れる五人。
「ハルおもーい!どいて!」
「そんな事言わないでよ〜。僕おにいちゃん達にイジメられてるんだよ〜」
「ヴァッ!!」
後ろからフードを掴まれ首が締まるハル。
「誰がイジメてるっての!」
「海のダンジョンの調査に行っといてそのまま住み着きますってどう言う事って聞いてるだけでしょ!」
「国籍まで変えようなんて何考えてんだ!」
「おにいちゃん?」
ワタルぐらいの大きさの子どもが二人でハルを怒鳴りつけている。
「バロック王の第二王妃はドワーフだそうです。おそらく彼等はバロック第二王子のソル様と王女のルナ様です」
ソーマがワタルにコッソリ耳打ちする。
兄ソルは茶色の髪に短髪。茶色のローブに黒いパンツスタイル。
姉のルナは茶色の髪を左横に束ね、水色のドレスに裾には白のフリルが施された服を着ている。
「え?ハルって王子様だったの?」
「え?」
「そう、僕王子様だったの」
「でも、三番目の末っ子だよ?やる事無くない!?どうせいずれ国を出るかどこかに婿入りするかなんだから別にさ」
バチイイン!!
「だからって無断でやる事じゃないだろ!」
兄ソルに張り倒されるハル。
「痛いよ〜。兄さんは力強いんだから抑えてよ〜!」
頬を押さえて床に突伏して泣くハル。
「あの、一体何があってこうなってるんでしょうか?」
恐る恐るワタルが切り出す。
「ん?」
「ああ、お前達がハルを唆した奴らと」
「チッ!魔族か」
(ここで逃げてはいけない!)
ソーマは一瞬、目を反らしそうになるが、しっかり前を見据え立っている。
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