21話 未来への
「このドアはなんだ?アローナがやったのか」
「女神じゃないわ。でも、彼女の導きでもあるのだわ」
ドアの向こうに立つワタル達を見つめる。
「ワタルさんの魔道具のおかげです!」
「このクレヨンでドアの絵をかいたら実際にドアが現れて、お父様に会えました!」
アランからクレヨンを受け取り、父にみせるソーマ。
「そうか、だが、やはり私はこの部屋から出られないらしい」
「イグニス。こうして顔を見て会話が出来ただけでも奇跡に近いのよ。彼等に感謝しましょう」
「そうだな。素直に感謝しよう。だが、彼等は」
「人間よ」
「彼等はダンジョンを攻略し、鍵を持っているわ」
視線を伏せるゼシカ。
「鍵を!?」
バッ!とワタル達に顔をむけるイグニス。
「もし、封印が解けたとしたら、あなたはどうするのかを知りたいそうよ」
エミリアがギュッとソーマの手を握る。
暫くの沈黙の後、イグニスが口を開く。
「人間どもに復讐するつもりだった」
空気が緊張する。
「だが、突然だ。突然。心の闇が晴れた様に清々しい」
「勇者や女神アローナに対する憎悪が消えた」
「今は、ゼシカや子ども達、そして国民の幸せの為に尽くしたいと思う」
「そうだ、世界は今どうなっているんだ!我が国民達は?!」
「落ち着いてイグニス。現状はまだ良くはないけれど、希望はあるわ」
イグニスの手をとり落ち着かせるゼシカ。
「ワタルさん。父には復讐の意志はありません。もちろん、父が下した決断は正しいとは言えないかもしれませんが、間違っていたとも言えないと思うのです」
「都合の良い話だと言うのはわかっています。ですが、父を、僕達を信じていただけないでしょうか!父を、弟を助けて下さい!」
「ソーマ」
ワタルはシオンと見合わせる。
「世界じゃ未だに魔族は悪の化身として邪険に扱われているし、魔物も危険視されて狩られている。それでも人間に恨みはない、何があっても平和的に解決できるって言うのか?」
「魔王に世界を滅ぼして欲しいと願う奴だっているかもしれないぜ」
「・・・・」
「未だに、か」
「二百年経っても変わらないのか」
落胆した表情で視線を伏せるイグニス。
「これから変わります!」
決意に秘めた顔をして父を見るソーマ。
「僕が変えて見せます!人間と魔族が共に手を取り合い、歩める世界に!」
「ソーマ・・・」
「ふん!できるといいな」
フッと漏らすシオン。
「まずは僕たちからですね。シオンさん」
「そんな日は永遠に来ねぇよ」
顔を横に向けながらも右手を差し出すシオン。
ソーマは驚きつつ、両手でシオンの手を握った。
「シオンはね、ソーマがスキだけどスキじゃないってするからね。でもユカリはすなおだからエミリアにスキって言えるよ!」
「わ、私もユカリさんが好きです!」
「シオンもユカリも友達出来て羨ましいなぁ〜」
「ワタルさんも、僕と友達になってくれますか?」
「もちろん!よろしくね!」
イグニスはワイワイ楽しそうに笑う子ども達を見て、心に温かい物を感じた。
「ゼシカ、目の前に俺が夢見た光景があるぞ」
「はい。」
「この子達なら本当に実現するかもしるない。俺達が出来なかった事を」
「はい。」
ゼシカの目に涙が溜まり、頬に流れた。
こんにちは、ボアと申します。
もし「面白い!」と思われたら
感想などいただけると参考になりますので
嬉しいです。
よろしくお願いします。




