20話 家族
「この部屋です。お父様が、封印、されているのは」
黒地に壮厳な装飾が施されている大きな扉には、青白い巨大な魔法陣が描かれ、扉全体に八つの錠が張り付いている。
「この二百年。何の音沙汰も無く、お父様がどのような状態にあるのかも分かりません」
ユカリに強引に案内させられたエミリアは、悲しい表情で説明する。
「窓から様子を見て見たこともありました。でも魔法陣の影響か、モヤが掛かって見えない上に声も届きません」
ソーマが陣を見つめながら呟く。
「おとうさんとおはなしできないの?」
ユカリがワタルに不思議そうに聞く。
「え、う、う〜ん。そうだな・・・」
ワタルは頭を掻きながらスマホを操作する。
「あ、コレなら使えるかも」
「どこにでも書ける立体クレヨン」
ポンッ!とクレヨンセットが現れる。
蓋を空け、黒のクレヨンを取り出すと王妃の横に立つアランに手渡した。
「これで壁にドアを描いて欲しいんです。立体クレヨンで描いたものは本物になります」
「もしかしたら中に入れるかも」
「そ、そんな事が可能なんですか?!」
アランが持つ黒のクレヨンをのカレンが奪い、叫ぶ。
「早くドアの絵を描きましょう!」
「カレン落ちつきなさい」
そう言いながらクレヨンに手が伸びる王妃ゼシカ。
「お父様に会える・・・」
アランがカレンからクレヨンを取り上げてから早足で扉に近づき、魔法陣の真上から豪快に大きなドアの絵を描いた。
一瞬、白く光ったと思ったら、片開きのドアが現れた。
アランは振り返り、王妃に目で合図をする。
ゼシカはカレンとソーマに支えられながらヨロヨロとドアに近づき、震える手でそっとノブを握る。
痩せたゼシカには重いのか、ドアは開かない。
ソーマとエミリアが手を添え、三人で手前に開く。
黒を基調とした室内は荒れていた。
玉座も調度品も粉々に爆ぜ、中央に男がうつ伏せに倒れている。
「イグニス!」
「お父様!」
ゼシカが転びそうになりながら男に駆け寄る。
燃えるような赤い髪が男の表情を隠していて、生死は分からない。
「イグニス!目を覚まして、私よ、ゼシカよ!しっかりして」
男を膝に抱き、涙を流すゼシカ。
「お父様起きて!私とお兄様もいるのよ!」
「お父様・・・」
ゼシカの涙が男の頬につたう。
「ん・・・」
「誰だ、お前を泣かせた奴は」
男は目を覚まし、ゼシカの頬を撫でた。
「お父様!」
「お前達は・・・。ソーマ、エミリア?」
グッと床に手をつき、上体を起こす魔王イグニス。
「なぜ、お前達がここにいる?これは幻か」
「幻なんかじゃないわ!」
ゼシカはイグニスに力強く抱きついて泣いた。
「良かった。お父様に会えた!」
ソーマはエミリアの肩を抱き寄せた。
「魔王様、王妃様!」
その光景を見ていたアランとカレンも口に手を当て涙を流す。
「上手く中に入れたみたいで良かった」
「そう簡単に上手くいくとは思えないけどな」
「おとうさんげんきかな?」
ワタルとシオンを見上げるユカリ。
「お父様、お友達を紹介します。外へ出ましょう!」
「外?友達?」
「何を言っている。私は」
エミリアが言い淀むイグニスの腕を引っ張り、ドアの外に出ようとした瞬間。
バチイイッ!!
「グアッ!!」
電流が走り、イグニスは空に弾かれた。
「イグニス!」
ゼシカがイグニスを支える。
「やはり、私の封印は未だに解けていないようだな」
「しかし、こんな事があるのか!どんな魔法を使ったのか知らないがまた、また」
電流で意識がはっきりして実感が湧いて来たのか、イグニスの声が震える。
「ゼシカ。どうしたんだ、そんなに痩せてしまって。ソーマ、エミリア、大きくなったなぁ」
イグニスは涙をボロボロ流し、三人を抱き寄せた。
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