2話 強いのは人形か、人形遣いの方か?
小さな黄色いオープンカーが砂ぼこりを立てて荒野を走っている。
運転席にはワタル、助手席に座るユカリがサングラスを掛けて歌っていた。
南に一時間ほど進むと、石壁で作られた門が見えてきた。
門には鎧を身に着けていたり、親子連れだったり人間の様な動物だったり色々な人が並んでいた。
ワタルはクルマを最後尾に付けた。
人数が多すぎて、順番が来た時には夕方になっていた。
門から正面に小さく斜めに傾いた塔が見える。
ワタルは運転席を降り、兵士に告げる。
「あの、僕達は身分証を持っていませんが街に入りたいです」
二人いる兵士の内、左側の坊主頭の男が答えた。
「入国料は一人銀貨一枚、身分証が無いなら街のギルドで作るんだな。冒険者は冒険者ギルド、左上の区画。商人は商人ギルド、右上の区画。旅行者は観光ギルド、右下の区画。移住者は左下の登録所に行きな」
そう言って街の地図が書かれた紙を差し出した。
(冒険者ギルドは塔の近く、左上の区画か)
「ありがとございます」
ワタルは銀貨を二枚渡し、そう言って運転席へと戻り発進させた。
道行く人は見たことのない乗り物に乗っている兄妹を不思議そうに眺めている。
区画の中心に目的のギルドはあった。
ユカリを起こし、車をボディバッグにしまってからドアを開けると、大きな広間に魔法使いや剣士といった冒険者達で賑わっていた。
受け付けに行くと紫の帽子と制服を着たウサギのお姉さんが対応してくれた。
「冒険者登録にお越しくださりありがとうございます」
「まず冒険者についてご説明しますね」
「冒険者にはF〜Sのランクが存在し、受けられる依頼の内容はランクによって変わってきます。しかしダンジョン攻略など、個人的な冒険に関してはランクは関係ありません。ご自由にどうぞ♪」
「初めはFランクから始まりますが、飛び級試験を受けて試験官に認められれば腕に見合ったランクに登録できます」
「Fランクはまず薬草集めから、そして登録料は石硬貨五枚。更新は一カ月に一度です。飛び級試験を受けられますか?」
「受けます!」
右手を大きく上げ鼻を鳴らすユカリ。
「・・・」
一瞬静寂する室内。
静かな失笑と微笑ましげな目が突き刺さる。
ワタルは恥ずかしくなり下に俯き、「いいです・・・」と呟いた。
しかしユカリは「やる!試験受ける!」と言って聞かなかった。
お姉さんは眉を下げ、困ったように笑う。
「う〜ん。試験は難しいですよ。薬草摘みからコツコツ積み重ねた方が良いと思いますが・・・」
「やる!ゆかりまけない!」
ふん!と鼻を鳴らすユカリ。
お姉さんは右手を頬に当てしばらく考えると、仕方ないと言った感じで答えた。
「・・・わかりました。ではご案内しますのでこちらへどうぞ」
三人は裏の訓練場へと向かった。
お姉さんが試験官を呼びに行き、兄妹二人だけとなった。
しばらく待つとお姉さんが男を連れて来た。
ヤル気のない、肩まで伸びた赤髪の青年が何も持たず、黒いタンクトップとジーンズ、裸足と言った格好で、あくびをしながら現れた。
「じゃあ、はい。来て」
言うが早いか否か、男は青い星となっていた。
ユカリの足元の剣士人形が、剣を振り下ろした格好で立っていた。
「・・・」
「少々お待ちくださいね♪」
笑顔でそう言うとお姉さんは脱兎の如く戻って行った。
そして二人の試験官を連れて来た。
後ろには野次馬たちが付いてくる。
一人は魔法使いの猫型獣人、一人はテイマー(魔物使い)の妖精だった。
「拘束魔法!サハナタ・・・!」
魔法使いが呪文を言い終える前に頭上に青く薄い円が広がり、一気に下に下がったと思ったら、姿が消えていた。
足元にいる剣士人形の左隣に魔術師人形が杖を掲げて立っていた。
「いらっしゃい!私の魔物達!アンちゃん!ブドちゃん!」
妖精が左手を上げ名前を呼ぶと、戦士の格好をした骸骨と黒い瘴気を纏っているブラックドラゴンが現れた。
「ちょっと脅かしてあげなさい!」
二匹の頭上に緑色の光がスポットライトの様に当たり、骸骨戦士は天使に魂を連れて行かれ成仏し、瘴気を吸い取られたブラックドラゴンはタダの心優しいドラゴンへと変わった。
「アンちゃアアアん!!」
妖精の嘆きが訓練場に響く中、ユカリの足元では剣士人形と魔術師人形に挟まれた真ん中で、聖女人形が祈りを捧げていた。
「かったよ!おねぇさん!」
ユカリの言葉にハッと我に返ったウサギのお姉さんは、後ろで勝負を見ていたギルド長に「どうしますか?」と伺いをたてた。
荒野のダンジョンの冒険者ギルド長ハワード・ボマーは、
「見事!」と一言のべ、拍手を送った。
「Sランクだ!2人ともおめでとう!」
「マジかよ・・・。Sランクのニアさんとハミ姉さんが負けるなんて!」
「あれはあのガキが強ぇんじゃなくて人形がチートなだけだろ?Sランクは人形のほうじゃねぇのか!」
史上初の五歳のSランク冒険者の誕生にざわつく観客達。
三体の人形と共に賛否を浴びながら、ユカリは腰に手を当て、ふん!と鼻を鳴らした。
その後ろでワタルは、少し引いた顔で(これなら魔王だって倒せるかもしれない・・・)と思った。
「チッ・・・」
訓練場入り口の隅でワタルとユカリを睨む少年がいた。
皆さんこんにちは、ボアです。
少しでも「面白い!」と思って頂けたら
感想など貰えると今後の活動の参考になります。
よろしくお願いします。




