19話 将来の夢
「元は私達魔族は、他の種族達の様に、世界中に暮らしていました。
そこへどこからか人間族、エルフ族、ドワーフ族、精霊族が現れ、我が物顔で暮らし始めたのです。
始め、イグニス様は彼等と親交を持ち、友好的に接する様に命じました。
しかし彼等は私達の容姿が醜い、怖いと蔑み、低級モンスター達がドロップ品を落とすと分かれば狩りと称し、近くに集落があると分かれば危険だからと殺して回ったのです。
イグニス様は激怒しました。
親切心を踏みにじり、我々魔族を悪とした奴らから元の平和を取り戻す為に戦う事を決意されたのです」
「それが二百年前の、あの勇者達との戦いなのです」
静寂が空気を重くする。
「それは、人間が悪いと思う。でも自分がやられて嫌だった事を誰かにやるのもダメだと思う」
「やってやり返されてまたやって、またやり返されて、いつまでも終わらないよ」
ワタルが真っ直ぐに言う。
「じゃあ、どうすりゃ良かったんだ。ただやられてりゃよかったのかよ」
言葉に怒りを滲ませるシオン。
「気の合わねぇ奴らが共に生きてるんだ。ぶつかるのはしょうがねぇ。だけど生き残るには相手よりも強い力を見せつけるしかねぇんだよ」
「問題は、勝敗が着いた後にどうするかじゃねぇのか」
「今生きてる世界で過去を見て生きるのか、未来を見て生きるのか」
「ワタルは未来を見て生きてる。俺は、過去を見て生きてる」
「ワタルお前、魔王が反省していたら鍵を渡すって言ったよな」
「お前の言う反省てなんだ。ごめんなさいって謝ればいいのか?よく分かんねぇよ」
「・・・僕は」
「・・・僕も分からない」
「なんだよ、そりゃ」
へへっ、と苦笑いするシオン。
「でも魔王様には・・・、復讐や過去を悲しむより、これからどんな未来があるのかを考えていて欲しい、と思う」
「シオンにも・・・」
「どんな未来が、ね」
「ユカリはね、おにいちゃんとシオンとハルとずっといっしょにダンジョンぼうけんする!」
ふん!と鼻を鳴らしおもちゃの剣を掲げるユカリ。
「ずっとはムリだが努力するよ」
ふふっと笑いあうシオンとワタル。
「エミリアはどうしたい?」
「えっ!私は、お父様とお母様と、お兄様と弟と・・・。世界を見てみたいな」
突然振られて動揺はしたが、恥ずかしいながらも笑顔で夢を語るエミリア。
「ソーマとエミリアのおかあさんは?」
「え!ぼ、僕も家族みんなで旅行に行きたい!ロザリオ帝国の剣術大会での活躍をお父様に見てほしい!」
「私は、あなた達が将来どんな大人になるのかを見たいわ」
ゼシカは二人を抱きしめる。
「エミリア!おとうさんにもしょうらいのユメをききにいこ!」
「え?!」
エミリアの手を取り走り出すユカリ。
片方だけに肩入れしない様にしていたつもりが、人間側の考え方をしていた事に気づいたワタルだった。
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