18話 何で?
「大変です!王妃さま!」
魔大国グランデスバルの王妃ゼシカは、いつもとは違う騒がしさに目を覚ました。
「瘴気が晴れたんです!」
そう言うと、王妃付きメイドのサキュバス、カレンはカーテンを思いきり開けた。
「うっ、ま、眩しいわカレン。閉めて頂戴」
自分の言葉に違和感を持つ。
(眩しい?瘴気で満ちたこの国に太陽など・・・)
飛び起きて目眩で倒れる王妃を支えるカレン。
カレンに支えられながら、ゼシカは窓へと歩み寄る。
「・・・眩しい。空が、青い」
窓が温かい。
「イグニス」
ゼシカは床に伏せ大声で泣いた。
「ソーマ!エミリア!」
ハッと思い出したように子ども達の名前を呼び、取り乱すように辺りを探すが、痩せた体では思うように動けない。
「大丈夫です。王妃様!王子様達はお客様を迎えに行かれたのです。すぐに戻ります!」
バンッ!
「お母様!」
ソーマとエミリアが部屋に駆け込み、母親に駆け寄る。
「お母様、外を見て下さい。聞いて下さい。空の青さを喜ぶ民の声がここまで聞こえてきます!」
ソーマは母親の肩を抱き、静聴を促す。
「イグニス王万歳!」
「ゼシカさまー!お顔を見せてください!!」
「グランデスバルの復活だー!!」
「お母様。お兄様と私の事わかる?」
「もちろんですソーマ、エミリア。今までごめんなさい。寂しい思いをさせてしまいましたね」
三人は抱き合って再会を喜び、カレンはその姿に大粒の涙を流した。
「お母様。エミリア、お友達が出来たの。ユカリって言うの。ユカリの魔道具がこの国の瘴気を祓ってくれたのよ」
「お母様。覚えてないかもしれませんが、この前お話したワタルさん、シオンさんユカリさんです」
ドアの前に立つ四人を紹介するソーマ。
目の前の人間の子どもの姿に思わず顔をそらすゼシカ。
「お母様、お父様の封印を解けるかもしれません」
嬉々として報告するソーマ。
「どう言う事です!?」
「あの戦いから二百年が経ち、ダンジョンが出現しました。ワタルさん達はダンジョンを攻略し、現在三本の鍵をお持ちです。それを頂ければお父様の封印解除に近づきます!」
「!?」
口を押さえるゼシカ。
「お願いです!鍵をください!あの人を助けて下さい!」
顔の前で手を組み、ワタル達に懇願するゼシカ。
「何で、世界を手に入れようなんてしたんですか」
「え」
「何で、人の不幸の隣で幸せを語れるんですか」
「何で泣くの、女神アローナは、あなた達と同じ事をしただけなのに」
「おにいちゃん」
声が震える。
「親を奪って、子どもを奪って、結婚の相手を奪って、永遠に封印して、二度と会えなくしたくせに。同じ事をやり返されて何で自分は悪くないみたいに泣くの」
「僕は、二百年前の人間じゃないから、あなた達を攻められる立場じゃないけど」
「始めに出た言葉が、助けてって。都合良すぎない?」
涙を流し、震える唇で苦笑いを浮かべるワタル。
「・・・・」
「お父さんに会いたい。お母さんに会いたい。お姉ちゃんに会いたい・・・」
拳を握り、静かに肩を震わせるワタル。
下から覗き込むユカリの頬に、ワタルの涙がつたう。
ゼシカは静かに立ち上がり、ゆっくりワタルに近づく。
そして、そっとワタルとユカリの二人を抱き寄せ
「ごめんなさい」と言った。
ユカリは母親を思い出したのか、ゼシカに抱きつき
「おかああさああ!」と泣いた。
エミリアがユカリに抱きつき、共に泣く。
ソーマはワタルの肩に手を置いた。
その光景をシオンは複雑な表情で見ている。
「俺は魔王に文句言いたかったぜ。今はそうは思はねぇけどな」
「シオン」
ワタルは涙を拭い、シオンの言葉を待つ。
「俺はプロランだ。熱湯で全身火傷を負い、肌が引きつって化け物になってた」
「魔族は帰れと蔑まれたり、冒険者に殺されかけたり、この世なんて地獄でしかなかった」
「二百年前のあの戦いで、勇者なんかに負けないで世界を滅ぼしてくれりゃ良かったのにってよ」
ふっ、と漏らすシオン。
「それが理由です」
アランが苦々しい顔で説明する。
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