16話 8人の勇者と魔王イグニス
二百年前。
魔王は世界を手に入れようと瘴気を撒き散らし、魔物をけしかけ侵攻を開始。大量虐殺を行いました。
それを哀れんだ女神アローナは、各国の王に勇者の力を与え、彼等に魔王討伐を命じたのです。
それが、剣士ガンツ・ロゾリア、拳闘士アイーシャ・グリンバル、弓術士ハンス・エリンピット、魔術師カロン・バロック、竜騎士マーカス・エンバード、戦士シドー・ロックフェル、魔物使いマリア・マリーベル、そして今は無きカイン聖王国の聖女シルク・カインの八人でした。
八人は魔王を追い詰めはしたものの、倒すまでには至らず、見かねた女神アローナは八つの鍵を勇者達に与え、玉座の間ごと魔王を封印させる事に成功しました。
そして、魔王の妻、ゼシカから腹の子を奪い、封印。魔王に対して子どもを盾に二百年の反省を命じました。
八つの鍵はそれぞれの王が国へと持ち帰り、ある場所に保管。それを女神アローナがダンジョンとして二百年後に出現するまで隠していたのです。
女神は母に告げました。
二百年が経ち、貴方達が許されていたのなら封印は解けましょう。しかし、許されていなかったのなら、魔王は倒され、子どもは永遠に封印されたままでしょう。と。
「母はショックで倒れ、二百年経った今も床に臥せっています。待ちに待った二百年が経ち、最初のダンジョンが現れ、父母の為、まだ見ぬ弟の為、隠れてダンジョンに挑みましたがいざ魔物を前にすると力が抜け、倒す事が出来ないのです。外の魔物は簡単に倒せるのに」
「父がやった事は許されない事であることはわかっています。しかし、せめて弟だけは助けたい!父は倒されても仕方ないと思います。母も、父を止めなかった母も同じだと思います。でも弟だけは!」
知れずに涙が溢れるソーマとエミリア。
「弟だけは・・・。もし、封印を解く鍵をお持ちなら、譲って頂けないでしょうか?」
「俺達が聞いてる伝説とほぼ同じだな」
角砂糖を転がしながら呟くシオン。
「親父と弟を助けたとして、復讐されないとも限らないしな。鍵なんて持ってねぇよ」
「持ってるけどシオンの言う事ももっともだね。はいどうぞと簡単にあげる訳にはいかないよ」
「・・・・はい」
「お兄様・・・」
「だから、お父さんとお母さんに合わせて。一度話をして、それから決めたい」
決意した顔で告げるワタル。
「な、なにいってるか分かってんのか?!魔王城に乗り込もうってんだぞ!!」
スプーンをテーブルにガンガン叩きつけながら叫ぶシオン。
「この二百年で魔王が本当に反省しているなら、罪を償うためのチャンスをあげたい。アレスの王様達みたいに皆に優しい良い魔王になるかもしれない」
期待を込めた目で語るワタル。
「アレは奇跡みたいなものだろ?!悪の象徴みてぇな魔王が良い人になんてなる訳ないだろ!!」
「だから話がしたいんだよ!ユカリの人形達もいるし、危なくはないと思う。シオンの鑑定で嘘をついてるかもわかるでしょ?」
「そりゃあ、わかるけど」
「頼むよ。本当にダメなのか、この目で見てから決めたいよ」
二人のやり取りを見ていたハルが口を出す。
「そうだね。何も見ず、何も聞かず、思い込みだけで決めつけちゃダメだよね〜。もしかしたら二度目の奇跡が起きるかもしれないしね」
「奇跡なんざ何度も起きねぇよ!!」
「シオンうるさい。イヤならシオンこなくていいよ。ユカリたちでいくから」
シオンの怒声に目を覚ましたユカリが、ふぁ〜あ。と欠伸しながら答える。
「チッ!ソーマっつったか、俺達に変な事したら容赦なく潰すし鍵もやらねぇからな!」
パアアアアッ!と表情が明るくなるソーマとエミリア。
「あ、ありがとうございます!安全は保証させて頂きます!」
「ぜひ、父と母にお会い下さい!」
この兄妹を見ていると自分達と重なり、胸の奥がモヤつくワタルだった。
「そういえば、ハルはさっき何しに行ってたの?」
「え?国籍を変えに行ってたんだよ〜」
コーヒーを飲みながら言い放つハル。
「・・・・は?」
「こうなると思ってたんだよね〜。ワタルくん、絶対この兄妹に肩入れするって。でも僕は君たちと違ってバロックの人間だから、関与できない決まりなんだよね。だから中立のアレス島に観光ではなく移住して国籍も変える事にした」
「国籍変えるって、お前、バロックの王子様がそんな簡単でいいのかよ!」
「王子と言っても四番目だから大丈夫だよ」
こうして四人は魔大国の魔王に会いに行く事になった。




