15話 カギ
「お母様、気をしっかり持って下さい。僕がいます。僕が、います・・・」
「ごめんなさい。僕がもっと早く、アイツラよりもっと早くダンジョンを攻略出来ていれば」
「・・・・・」
痩せこけた体に虚ろな表情で横たわる女は、何かを呟きながら外を眺めている。
少年の声は届いていない。
「お兄様・・・」
「エミリア・・・」
兄妹は自分達を見向きもしない母親の傍らで、抱き合って泣いた。
「シオンしーきゅーごーかくよかったね!」
「Bランクだよ。飛び級したからね。雪のダンジョンで鍛「」えられたんだね」
「ユカリの方が凄いし」
ふん!と鼻を鳴らし、どうだと言わんばかりにSクラスカードを差し出すユカリ。
「シオンが出るよ〜」
バッ!と闘技場に顔を向ける二人。
ワタル達は今、王都の剣術大会を見に来ている。
シオンはギルドで剣術大会の情報を聞いたらしく、褒美目当てに出場を決め、結果から言うと初戦で敗退した。
「相手が悪いね〜。あの子・・・」
十代の半ばぐらいに見える少年は燃えるような赤い髪を後ろに束ね、黒地に金の模様が入った大剣を背負っている。
少年は大剣を抜き、シオンを見据えている。
「チッ、これ見よがしに大剣見せびらかしやがって」
「初め!!」
審判が左手を振り下げる。
同時に少年は大剣を振りかぶり、シオンに真っ直ぐ飛びかかる。
ギリイイ!!
シオンは相手の力を利用して右に受け流す。
少年は右に振り向きざまに上空へと振りかぶり、弧を描いて振り下ろす。
間一髪避けたシオンだが、ミスリル剣は折れてしまった。
「そこまで!」
少年の大剣がシオンの首筋に迫った所で審判の制止が掛かった。
「勝者、魔大国のソーマ!」
「ふざけんな魔物野郎!消えろ!」
「なんで魔物が大会に出てんのよ!」
「静かに!静粛に!当大会は全ての者にチャンスを!」
魔族は悪・厄災の象徴として忌み嫌われている。
「魔族なんざ滅びちまえ!!」
「アンタだいじょうぶ?」
「えっ?」
ユカリはフードの下で目をつぶり、体を強張らせて震えている隣の同じ年くらいの女の子が気になって聞いて見た。
「ぐあいわるい?いむしついく?」
「えっ?あっ、だ、いじょ、ぶ・・・」
そう言って少女はフードを掴み顔を隠してしまう。
「ならいいけど、なんかあったらいって!セイちゃんがなおしてくれるから!」
「人形・・・?」
「に、人形が病気を治してくれるの?」
「えーとね・・・」
「さあ。試合も終わったし、帰ろうか〜」
「そうだね。ユカリさようならして。シオンの所に行こう」
「うん。じゃあまたね」
女の子に手を振り別れを告げるユカリ。
「あ・・・」
少女の手は空を切る。
「ユカリたまにはお泊りしてみたい!」
と言う一言で風呂付きの高級宿屋に泊まることになった。
宿屋は貴族街の高台にあり、ベランダからは全貌が見渡せて、星空の様に小さな丸い光が散らばっている。
「シオンの昇級とダンジョン攻略祝いだよ〜」
「す、凄いこのベッド。僕とユカリとシオンの三人が寝られるくらい大きいよ!」
「はずむ!はずむ!」
ユカリはベッドの上で飛び跳ねている。
「あまりはしゃぐなよ。ビンボークセえ」
そう言いながらもソワソワとするシオン。
「さあ、お風呂も入ってご飯も食べて、子どもはもう寝る時間だよ〜」
パンパンと手を叩き、就寝を促すハル。
コンコンコン
訪問者か、誰かがドアを叩く音がする。
「はーい。どちらさまですか?」
ワタルが声を張り上げる。
「・・・夜分に申し訳ありません。私は、ソーマ・グランチェストと申します。今日はその、お願いがあり参りました」
顔を見合わせる三人。
ワタルがドアに近づき、ノブをひねる。
「あ!ソーマ!」
「となりのこ!」
ユカリとシオンが二人を指さす。
突然ソーマがバッ!と頭を下げる。
「突然申し訳ありません!あなた達は黒の人形使いの方達とお見受けします」
「失礼を承知でお聞きします!ダンジョンのどこかに鍵、はありませんでしたか?」
「え?鍵なら」
「ごめんね〜。詳しいことは話せないんだ」
ハルが遮りドアを閉めようとする。
「待って!閉めないで!お願いだから、話を聞いて!」
後ろに隠れていた少女がドアに足を挟んですがる。
「ハル、話を聞いてあげよ」
「俺は止めた方がいいと思うぜ」
「シオン」
「別に試合の恨みで言ってんじゃねぇよ。ソイツ魔族じゃねえか。魔族は二百年前に人間を滅ぼそうとした上に、世界各地に魔物をばら撒いた種族だぜ。いただろ?ダンジョン行くまでの道にもよ。そんな奴らの相手なんかできるか!」
シオンの言葉に悲しい表情をする少女。
「そ、その事については、申し訳なく思っている。でも、二百年前、勇者によって・・・封印されて以来、魔王は」
「そんなの関係ねぇよ。初めに戦争仕掛けたのはそっちで戦意のない人間達を皆殺しにして回ったのは事実だろ。どれだけ謝罪されてもその事実が無くなる事はねぇのさ」
「・・・・」
「本当にごめん。僕たちは君たちと関わる訳には行かないんだ。協定で決まっている事は君たちも分かってるよね」
「あのおにいちゃん、たいかいにでてたのはいいの?」
「ロゾリアの剣術大会は"全ての者にチャンスを"を掲げてるからな。特別だ」
「・・・・はい」
「待って」
「いいよ。中に入って」
「ワタルくん。ダメだよ。帰って貰って」
「その協定って、アレス島も入るの?」
「最近できたアレス島にそんな協定に入ってるなんて知らないよ」
「それは、確かにアレスにはそんな協定ないけど」
腕を組んで悩むハル。
「二百年前にあったことはなくならないけど、この人達がやったわけじゃないんでしょ?シオンがやられた訳でもないし、今は平和なんだよね?」
「そりゃぁ、そうだけど!」
ベッドの縁にあぐらをかいて不貞腐れるシオン。
「関われないなら二人とも待ってて、外で話してくるから」
う〜ん、う〜んと唸り、黙ってしまったハル。
「分かった!ちょっとだけ待ってて。すぐ戻るから!」
そう叫ぶとハルは部屋を出て行った。
呆気に取られるワタルとソーマ兄妹。
飽きたのか、ユカリは白目になりながら大の字になって寝ていた。
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