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12話 愚か者達の贖罪の旅

「クソッ!クソッ!僕を誰だと思ってるんだ!僕はアレス公国の王子だぞ!」


 ハルに追い出されたアレス一家は、元荒野ダンジョンギルド街を訪れた。


 しかし、反省した様子の国王夫妻はともかく、クセが抜けないカミーユは王子風を吹かせ、他国の調査団員達に自分はアレス公国の王子だから敬うようにと叫んだ。


「私はロゾリア帝国の第二王女のアンリ・サバンだ。敬え」

「私はエリンピット王国第三王子、ヒース・グリスだ。敬え」

「俺はグリンバル獣王国第五王子のトーマ・グリンバルだ!喜べ!」

「あのバカ王子はどこへ行ったのか」

「私は」

「皆さん、息子が無礼を働き失礼しました。よく言って聞かせます。申し訳ない」

「皆さん申し訳ございませんでした」

「近い内、正式に国家消滅を宣言するつもりです。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします」


 両親が頭を下げる姿に絶望の顔を見せるカミーユ。

 

 顔を真っ赤にしてアンリ達を睨み「クソッ!」と悪態をついて去っていく。


「はぁ・・・。お二人は心底反省された様ですが、息子さんは自分が国民に対し何をしてきたか、分かってないようですね」

 

 「アンリ・サバン王女、言葉もございません」





 アンリの計らいで何とかロゾリア領の宿に泊まれはしたが、

国王夫妻は心底疲れていた。


何が悪かったのか、どうすれば良かったのか、何度説明しても理解できないカミーユに対しての絶望と人生を台無しにしてしまった事に申し訳なさを感じていた。


「ごめんなさい。カミーユ。母が悪かったのです。母があなたに物の善悪を教えなかったからこのように反省できない大人に育ってしまったのです!」

「父も悪かった。元は誰もが幸せでいられる良い国にするつもりだったのに、権力に目が眩んでしまった。三人で一からやり直そう」


 泣き伏せる妻の肩を抱き、息子を説得する元国王。

 しかし、それを裏切る叫びが室内に響く。


「嫌です!僕はアレス公国王子としての誇りを失いたくありません!」


 そう言うとカミーユは宿を飛び出し、街を飛び出し、公国跡地に戻ろうとした。


 そして再びあの集落が目に留まる。


 手前の家では両親と息子の三人家族が温かい食事と会話を楽しんでいる。


 その隣の家も家族で幸せそうに過ごしている。


 その光景が自分の惨めさを増幅させているようで、怒りが頂点に達した。


 ガシャアアア!!


 一軒の家のドアを蹴破ると、テーブルを思いきり蹴り倒した。



「うアアアアア!」


 突然の事に驚いた子どもが泣きだすと、「うるさい!」と拳で頬を殴り倒し、何度も足蹴にする。


「やめろ!」


 父親が王子を止めようと飛びかかると、王子は剣を抜き、父親を斬り伏せてしまった。


「ジョセフ!!」

「お父さん!」


 母親は息子を抱きながら夫を斬ったカミーユを震えて睨んでいる。


 カミーユは剣を振り被ると二人の首を目掛けて振り下ろした。


「ザマを見ろ!僕を侮辱する奴はこうなるんだよ!」

「ははっ!はははははっ!」


 ふっ、と気づくと家も家族も消えていた。


「お前は要らない」

「!!」


 男の声に振り向くとそこは、





「彼も大人です。一人で生きて行けます。冒険者となり旅だったのだと諦めた方が良いと思いますよ。」

「そうですか。昨夜はご迷惑お掛けしました」


 朝方、ワタル達の家に国王夫妻が訪ねて来た。


 元王子のカミーユが昨夜、宿を出てから戻らず、元公国跡地にも行ってみたがどこにも姿が見えなかったので、こちらに来ていないかを尋ねたかったそうだ。


 ワタル達は素直に知らないと答えた。

 

 元王妃は骨が浮き出た両手で顔を覆い泣き出した。


 暴君時代を知らないワタルは、その姿を哀れに思い俯いた。


「余計なこと言うなよ」


 シオンはワタルに釘を刺す。


 ハルのようにまた住人が増えたらたまったもんじゃない。


「分かってるよ」


 ワタルは深呼吸をしてから思い切って切り出した。


「王様達も王子を追いかけてみたらどうでしょう?冒険者になって、世界を回って、いつか会えるかもしれません」


「私達が冒険者、ですか」

「それは良いですね。お二人で世界へ贖罪の旅に出て、今までの悪事以上の善行を積むのです。その頃には王子も反省している事でしょう!」


 ハルが両手をパンッと叩いて二人に世界旅行を勧める。


 顔を見合わせる夫妻。


「そうですね。こんな私達でも、今からでも間に合うでしょうか。イヤそうじゃない。旅に出て罪を償います。私達の失敗を語ります。二度と私達の様な愚かな者が出ないように」


 元国王はワタル達の目を見て宣言した。


 国王夫妻はアレス公国の破綻宣言した後、調査団野営地に暫く世話になり、調査団の力を借りながら少しづつ、国に残して来た亡骸を弔った。


 そして十分な体力を付けてから、贖罪の旅に出た。


 また暫くして七カ国会議が開かれ、アレス公国領は中立地帯とし、各国は関与しない事で決まった。  


 ハルは朝刊新聞を畳んでテーブルに置き、コーヒーを飲んだ。


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