表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

君がいない明日

作者: aonigiri
掲載日:2025/12/12

名前の読み方↓

主人公:結衣ゆい

恋人:蒼真そうま

結衣のスマホには、たった一件の未読メッセージが残っている。

送り主は、昨日亡くなったばかりの恋人・蒼真。


“ごめん、今日も行けそうにない。熱が上がってきた。”


いつもと同じ調子。

でも、いつもと違う結末。


蒼真は病院で倒れ、そのまま意識が戻らなかった。

誰も予想していなかった急性の病気だった。


結衣の部屋には、蒼真が置いていったものがいくつかある。

読みかけの漫画、途中まで組んだプラモデル、カップ麺の空き箱。

どれもどうでもいいはずの「普通のもの」なのに、見ているだけで胸が潰れそうになった。


夕方、蒼真の母親から電話がきた。


「今日……荷物、取りに来られる?」


結衣は喉が詰まったまま「はい」と答えた。

本当は行きたくなかった。

現実になるのが怖かった。


彼の部屋に入ると、空気が止まっていた。

昨日まで普通に呼吸していた人の匂いだけが残っている。


机の上には、封筒が置いてあった。

あまりに雑な字で「ゆい」と書かれている。


震える手で開ける。


“ごめん。ほんとは今日、指輪渡すつもりだった。”

“まだ学生だから安物だけど、ちゃんと選んだやつ。”

“病院の検査終わったら会いに行く。だから待ってて。”


最後の一行が揺れていた。


結衣は膝から崩れ落ちた。

指輪は、袋に入ったまま机に置いてあった。

渡されることのないまま。


喉から声は出なかった。

涙だけが勝手にこぼれた。


帰り道、夕焼けがやけに眩しい。

周りは笑い声、走る自転車、犬の散歩。

世界は当たり前みたいに続いていて、ただ自分だけが取り残された。


スマホの画面には、昨日の未読メッセージが光っている。


“ごめん、今日も行けそうにない。”


結衣は返信欄を開いた。

送れないと知っていて、送った。


“わかったよ。ずっと待ってるから。”


送信済みの文字が、ひどく残酷だった。


次の日も、次の次の日も、スマホを開くたび、蒼真のトーク画面が一番上に出てくる。


でも、新しい通知が来ることはもうない。


その沈黙が、何より苦しかった。

一話完結です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ