なろうラジオ大賞2 • 3 • 4 • 5 • 6•7参加作品
死にたくない一心で自転車のペダルを踏む
趣味で行っているヒルクライムの練習をしようと、山の裾野にある駐車場に車を停める。
自転車に跨り『さて行くか』と思った時、突然私の身体を凄まじい揺れが襲う。
え? 地震か? と周りを見渡していた私の目が、海がある東の方角に連なっている山地の山々を超えて大量の水が流れ落ちて来るのを捉える。
巨大な津波が発生し、標高が最低の場所でも2〜300メートルある山地の山々を超えて押し寄せて来たのだ。
『ヤバい』と感じた私は自転車のペダルを踏み山道を駆け上がる。
地球温暖化の影響で海面が上昇し元々海沿いにあった市町村は海の底になったけど、山地の内側に住んでいる私を含む住民たちは、標高が最低でも2〜300メートル中にはそれ以上ある山もあるから、海面上昇の影響は及ばないだろうと思ってた。
それなのに、その頼みの綱の山々を軽々と超えて来る程の津波が発生するなんて、全く考えてもいなかった。
山道を駆け上がりながら山の下方に目を向ける。
山々を超えて押し寄せて来た水が、津波から逃げるよう促すサイレンが鳴り響く山地の内側の市町村に住み暮らす人たちだけで無く、ビルや家などの建造物をも次々とのみ込んで行く。
今駆け上がっている山の標高は2000メートル以上ある、その頂上に展望が良い公園があり山道はその公園まで繋がっている。
だけど……山地の山々を軽々と超えて押し寄せ、山々の内側にあった市町村を次々とのみ込んで行く水の量は凄まじく多い。
もしかしたら2000メートル以上ある山の頂上ものみ込まれるかも知れない。
それでも私は死にたくない一心で自転車のペダルを踏む。
必死にペダルを踏み山道を駆け上がる私の背後には、私をのみ込もうと大量の水がゴウゴウと音を立てて追い迫っていた。




