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オタク、アフィリエイトブログの設計図をつくる。

兄だけはいつもボクの味方でいてくれる。彼にはそんな確信があった。


たとえ全世界が敵になったとしても兄からは離れない。兄はボクのすべて。生命といってもいい。


兄のすべてを手に入れたい。兄の愛を一身に味わいたい。たとえそれが禁じられた関係だとしても。


買ったばかりの新しい下着とパジャマを着る。


いつもなら兄はもう寝ている時間だ。そしてうちのドアには鍵がない。


静かに自分の部屋を出る。そして兄の部屋の前に立つ。


お兄ちゃん・・・。


音を立てないようそっとドアを開け、こよりは兄の部屋に滑り込んだ。


パタン。


こよりの長い夜が始まる。


「兄さん、スゴイよ、兄さん」


う・・・ん。どこかで兄を愛するあまり、兄を痛めつけることが生きがいになってしまった弟のセリフが聞こえた気がした。


ここはボクの部屋だ。朝か・・・。でも本当は彼も操られていたんだっけ。あのアニメは兄弟が殺し合う壮絶な作品だった。


「最高だ。最高だよ、兄さん」


また声がした。気のせいじゃない!?ボクは一気に意識を覚醒させた。体が動かない。金縛りなのか。霊か、霊なのか!?


「みんなハタチになるぅ」


こよりの声がする。あいつ、またボクの布団の中に潜り込んだのか。視線を下に向けるとボクの右半身にこよりが抱きついて眠っていた。


「むにゃ・・ダメだよ兄さん。ボクたち兄弟なのに・・でも兄さんならいいよ・・むにゃ」


こよりは寝ぼけながら顔を近づけてくる。やばい、これはラッキースケベというレベルじゃないぞ。完全に事故だ!!


「こより、起きろ!!」


焦るボク。寝ぼけているとはいえ弟でファーストキスをすませるわけにはいかないッ。


「むにゃ、キミのハジメテをもらうまでボクは腰を振るのをやめない。むにゃ」


そう言いながらこよりはボクのボクよりも凶悪なこよりを太ももにこすりつけてきた。腰をカクカク前後に動かしながら。


「いや、お前、ぜったいに起きてるだろ!」


バン!!そのときドアが勢いよく開いた。


「あんたたち、朝ごはんが冷めちゃうでしょ!早く起きなさい!!」


母さんだ。助かった。弟のこよりの顔がボクの唇まであと五センチのところで止まる。間一髪、セーフ。


「助けて!母さん!!」

「あんた!いくら彼女ができないからって弟に手を出したら家を追い出すからね!」

「ちょっ」


完全にボクが襲ったものと思われてる。こよりは学校でも人気者だ。陰キャなボクとは違う。親もボクよりこよりを愛しているふしがある。


こよりの体から力が抜けた。なんでこいつ華奢な体であんな力を出せるんだろう。


「あともう少しだったのに・・・」


聞こえないフリをしてベッドから飛び起きるボク。後には可愛いピンクのパジャマを着た見た目は完全に美少女な"弟"がいた。


「おはよう兄さん!おめざのチューが欲しいな」


うん、しないよ。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「お疲れ様です」

放課後、副業部のドアを開ける。


「おっつー!!」

「オタクくん、お疲れ様」

「・ ・ ・ ・」


あれ、なんか部長であるパイセンがおとなしいぞ。まあ静かなのはいいことだ。


「さっそくブログの設計図を作るよー!」

「まずブログタイトル案から!」


司会進行はアフィリエイト担当のオナチュー。ホワイトボードにみんなが考えてきたブログタイトルを書いていく。


ボク

『美少女フィギュア情報in秋葉原』


オナチュー

『フィギュオタ』


副部長

『美少女フィギュアを安く買う方法』

『プレミアの美少女フィギュア情報』


おお、みんなしっかりなんのブログか伝わるようにキーワードが入っているぞ。やはり重要なキーワードは美少女フィギュアやフィギュだろう。


副部長にいたっては、属性を安く買いたい派と入手困難なフィギュアを手に入れたい派に分けてタイトルを二つも考えてくれた。ありがたい。


やはり合法ロリは最高だぜ。


さいごは部長のパイセンだ。やけに気合が入っているぞ。秋葉原・・美少女・・オタク・・キーワードを口にしながらホワイトボードに書き込んでいった。


これは凄いブログタイトルができそうだ。期待に胸が膨らむ。


それにしても、やけに長くないか。30文字くらい書いているぞ。


書き終わったパイセンがホワイトボードの前から移動した。


部長

『秋葉原で美少女中学生とイチャラブ恋人繋ぎで歩くオタク野郎のブログ』


(あんたって人はー!!!)

見られた。見ていたのか。どっと汗が出る。


「オタク、これマジ??」

「やるわねぇ、オタクくん」

「しかもラブホ街に姿を消したぞ、こいつら」


好き勝手いわれる。これは早めに誤解を解かないと炎上案件だ。


「あれはおと・・・実の妹です!ボクが家族以外で女の子に優しくされると思いますか!!」


「「「それもそう」」」か、ね、だね!


三美姫(さんびき)の声が重なる。一瞬で鎮火した。


みたかボクの自虐鎮火テクニックを。消防設備士の乙四だって受かってみせる。なぜか目から水分が出ているけれど。


「すまんすまん。秋葉原でキミを見かけてな。あまりに妹さんがメス顔だったから勘違いしてしまった」

(メス顔いうな。こっちは毎日、貞操の危機を感じているのに)


「誤解がとけてなによりです。ブログのタイトルに話を戻しましょうか」

「そうだな、後輩はどれがいい」

「まずは一点集中、一点突破で自分のタイトルでやりたいと思います」

「いいだろう。タイトルは決まった」


あとはブログの説明文を考えよう。ブログタイトルの次に読者へアピールできるのが説明文だ。


『美少女フィギュア情報in秋葉原』

"美少女フィギュアの聖地、秋葉原を巡回して最新情報をお知らせするブログです"


なかなかいいぞ。こんなタイトルと説明文のブログならボクも見たい。


「おー、伝わるね!」

「なかなかいいじゃない。シンプルイズベストで」

「ちゃんと両方に重要キーワードが入っているのもたいしたものだ」


キーンコーンカーンコーン。


もう下校の時間だ。


「本日は解散!明日はヒヨッターの戦略を考えるとしよう」


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


日課の秋葉原オタク・タワー巡回を終えたボク。となりにはなぜか機嫌の良さそうなパイセンがいる。


とぅっとぅっるー。

スキップしそうだぞこのひと。


「いや、本当にすまなかった。お詫びに冷えた瓶コーラでもおごろう」

「気にしないでください。よく誤解されます」

「確かにな。アレは兄を見る目ではなかったぞ」


「お兄ちゃん!!!」


どん!!「おぅふ」


気づくとこよりがボクにタックル、もとい抱きついていた。


「誰、この綺麗なひと。まさか彼女??」

「いや、部活の部長で先輩だよ」

「後輩くんの妹さんか。はじめまして、副業部の部長だ」

「ふーん」

「おい、こより。ちゃんと挨拶しなさい」

「はーい。妹のこよりです。兄がお世話になっています」

「こちらこそ。それにしても本当に可愛いな。後輩、妹さんをお持ち帰りしてもいいか」

「ダメです。危険があぶない」

「なんだって??」


こよりはこう見えて男だ。しかもボクのボクよりも巨大なこよりを装備している。パイセンの貞操がピンチだ。


「こより、お兄ちゃんさえいれば何もいらないよ」

こいつはまた人に誤解されるようなことを言う。


「すいません先輩。今日はここで失礼します」

「ああ、瓶コーラはまた今度な」

「失礼しまーす」


恋人繋ぎでJR秋葉原駅に向かう二人の後ろ姿を見送る先輩。彼女は誰にも聞こえない小さな声でつぶやいた。


いいな。


はい、異世界シニアです。


よく作者が「キャラクターが勝手に動き回る」と言いますよね。それが今回よくわかりました。


そう、こよりです。


お兄ちゃん大好きが天元突破しちゃって、もう爆発寸前。


朝のくだりだけで本編よりも熱がこもる始末でした。


もちろん来年、こよりは都立商業高校に入学してきます。そうなったらオタクくんの高校生活はどうなることやら。


自分の気持ちに気づきはじめたパイセン。

ますますエスカレートするこより。

新たなライバルの出現。


物語は広がります。


次回、オタク、SNSをはじめる。


ボル テッ カー


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